第8話 佐久間
「佐久間さんってどんな人だったんです?」Yが聞いた。
「どんな人って・・・」曖昧な聞き方だ。何が聞きたいんだ。
「いや、ブスだったとか、美人だったとか。おっぱいが大きかったとか、背が高かったとか。いろいろあるじゃないですか。」
「最近、顔がうまく思い出せなくなってきているんだ。あの家に取り込まれた人間に対する興味がだんだん薄れてくる現象なのかもしれない。」でも、
「ちょっと猫背の後ろ姿だけは、鮮明に思い出せる。」
「後ろ姿ですか。猫背だったんですか?どんなシーンだったんです。」どんなシーン?
「うーん。そうだね、あの家に行く前だったのか、いった後だったのか。僕を置いてあの家の物語に沈み込んだ時だったか。」ちょっと思い出せない。
「思い出せないな。」でも、
「でも、ひどく疲れていて、僕がここにいるのがわからない感じだった。」そう、それにちょっと前まで、家で飼う猫の話をしていた。
「そのちょっと前まで、猫の話をしていたのに。」
「猫ですか?」
「そう猫。家で猫を飼おうって話をしていた。」
「家って、二人で住む?」二人?
「ああ、彼女と暮らす家でね。まあ、最初はアパートかなって、ならペット可でないとダメだねって。」そう、黒い子猫を。
「どんな猫です。ペットショップとかで買う感じですか。」
「いや、彼女が実家で飼ってた黒い子猫だ。」確か、名前は。
「ミケいや、クロだな。」
「それは、楽しそうですね。」
「うん。」楽しい話だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます