第3話 ぶっちゃけマイクロシフト 26ってどうなの?

 それじゃ、今回『最悪の世代』と呼ぶことになってしまった最大の原因。マイクロシフト社の『26』という変速ギアはどうだったのかって話をしよう。

 まず、名前が酷い。何だよ『26』って商品名。

 これで26段変速なのかと誤解する人もいるかもしれないが、3×8で24段変速だ。マジで意味わからん。

 まあ、shimano社にも『105イチマルゴ』っていう商品があるため、あまり一方的に非難できるわけではないのだが……あ、ちなみに105は元々、商品名ではなく品番だったらしいぜ。ただ正式な商品名が決まらなかったため、品番がそのまま商品名になったらしい。

 他のshimano社商品は『ソラ』とか『アルタス』とか『アセラ』とか、カッコイイ名前が多いよな。まあ、クロスバイクに使われるのはその辺だ。


 さて、このマイクロシフト26(以下、MS26と呼称)の性能について、僕の感じた印象だけで語ると……ぶっちゃけ、思ったよりも悪くない。

 同価格帯のshimanoアルタスや、SRAM X3などと比べても、そんなに大きな変化はない印象だ。少なくとも普通に使う分には不満がない。

 あえて言えば、たまにどう調整してもチェーンが落ちることがある。あ、念のため『チェーンが落ちる』って現象についても説明するか。


 変速ギアってのは、チェーンをわざと外して、それを隣の歯車に引っかけ直すことで変速するシステムなんだけどさ。たまに「そこに歯車はねーよ」ってところまでチェーンをもっていくことがあるんだ。

 これを『チェーンが落ちる』という。

 要するに、2段目から1段目に変速するとき、1段目を越えて何もないところまでチェーンを運んでしまう現象だ。これをやられると、急にペダルが空回りして、転倒などの事故を引き起こす可能性がある。

 ちなみに修正方法は簡単で、変速ギアを2速目に入れながらペダルを回すと、チェーンが元の位置に戻ってくる。手を汚すこともないし、難しい工具が無いと直らないわけでもない。ただ、また落ちる可能性はあるけどな。


 で、普通だったらチェーンが落ちるってことは、調整不足ってことなんだが……

 MS26に至っては、どんな調整をしても落ちる時は落ちる。もうそういうもんだと思って諦めてほしい。

 チェーンが落ちても転ばないようにするコツは、変速ギアを常に『少し軽いかな』ってくらいにしておくことだ。ペダルに体重をかけて強く踏み込むから、チェーンが落ちた時に自分も転ぶ。そうならないように、軽い力で踏めるギアを使えばいい。

 上り坂に入ってから軽くするのではなく、坂に入る前に軽くするイメージと言えば分かりやすいかな?


 あ、そうそう。

 そもそも変速ギアを切り替える時は、「軽い力でペダルを回す」のが原則だ。まったくペダルを回さない状態だと切り替えが出来ないが、かといって強い力で踏み込みながらの変速も出来ないと思っておいてくれ。

 もちろん、値段が高い車体になると話は違うんだがな。数十万円する自転車についているギアと、7万円のエスケープのギアを比べても仕方ない。

 ぶっちゃけ、ペダルを強く踏み込んでいる時に変速できないっていうのは、shimanoでもSRAMでも確認される現象だ。MS26だけに限った話じゃないさ。




 ちなみに、shimanoアルタスよりSM26の方が優れている点を、ひとつだけ発見してしまった。

 shimano社のトリガーシフター(つまり、指で操作するところ)は、変速ギアを人差し指と親指で操作する。

 例えば右手は、ギアを上げたいなら人差し指のレバーを引き、ギアを下げたいなら親指のレバーを押す構造になっている。

 これ、寒い時期なんかは操作が難しくなるんだよ。

 よほど高性能な防寒(というか防風)グローブでもつけていれば話は違うんだが、かじかんだ指でレバーを引くのは結構大変だったりする。特に人差し指な。親指はまだマシ。

 で、MS26の場合、親指だけで両方のレバーを押す構造になっている。ギアを上げたいなら奥のレバーを親指で押し、ギアを下げたいなら手前のレバーを親指で押す構造だな。

 これなら手がかじかんでいても、何とか操作できる。寒い日でも走らなきゃいけない通勤通学などに使うなら抜群の性能だ。

 その辺の操作は、やっぱアメリカのSRAMに似てるんだよなぁ。マイクロシフトが『廉価版SRAM』と呼ばれる理由はこれだ。

 まあ、操作性や感触に至っては、好みの問題も多いかもしれない。僕はSRAMに慣れてるし寒いところ走るから、これが好きなんだが……すでにshimanoに慣れ切っている人なんかは、この操作性が嫌いかもな。


 MS26が、SRAMやshimanoより明らかに悪い点もあってな。

 例えば変速ギアが一番下まで下がっている場合、そこからさらに下げようとしても、レバーが動くんよ。

 意味が分からない人のために、ちゃんと解説する。

 SRAMやshimanoだったら、変速ギアが一番下がった時、レバーがロックされる。なので、押しても動かなくなるんだ。

「今、何段目だっけ?」

 って、走ってる最中に忘れてしまっても、レバーの感触が

「これ以上は下げられませんよ」

 と教えてくれる。だからいちいちギアを覚えている必要もないし、暗い夜でも混乱しない。

 ただ、MS26の場合はレバーが空振りする。つまり、レバーが動いてしまう。

 なので、何かのトラブルでギアが動かなくなったのか、それとも単に一番目まで下がったからこれ以上下がらないだけなのか、感触で判断しにくいんだ。

 昼ならレバーに表示されている目盛で確認できるんだが、夜になると暗い中で確認はできない。

 ……ただでさえトラブルで変速しないことが多いんだから、余計な心配をかけないでほしい。


 あとMS26が他社より悪い点は、シフター側のケーブルが真横に飛び出している事かな。おかげでハンドル回りのオプションが搭載しにくい。

 ちなみに他社はケーブルを斜め前に出しているので、ハンドルとケーブルの間に距離があって、いろいろつけた時に干渉しないようになっているよ。

 クロスバイクっていうと、ライトとかサイコン(スピードメーターみたいなやつ)とか、いろいろハンドル回りにつけたくなるよね。それなのに、ただでさえデカいシフターが、邪魔なケーブルを伸ばしているとイライラする。

 改造する楽しみが半減だね。




 おっと、変速ギアだけでもずいぶん語ってしまった。僕としてはまだ語り足りないんだが、このくらいで切り上げるか。

 総評としては……


 そんなに特別悪いとは思えない変速ギア。好みの問題こそあれど、性能そのものがダメなわけじゃない。値段相応だ。

 ただ、デカいから邪魔。

 そんなところかな。

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