初恋はNTR。僕が友達のお姉ちゃんの不倫相手になった話。
🎈パンサー葉月🎈
第1話
僕は、友達のお姉さんと不倫をしている。
「もう帰らなくちゃ」
「送ってくよ」
「ううん、大丈夫。じゃあ、またね」
「あ……うん」
夕方になると、彼女はこのボロアパートを去ってしまう。
旦那さんが帰宅する前に夕飯の支度をするため、早々に帰るのだ。
本当はもっと一緒に過ごしたいし、夜通し彼女の傍にいたい願望があるけれど、我慢せざるを得ない。
それは、彼女が既婚者であるためだ。
「はぁ……」
独りぼっちになった部屋で、僕はゴミ箱を抱きかかえた。部屋中に散らばったティッシュを一つずつゴミ箱に入れていく作業は、一番惨めな瞬間で、自己嫌悪に襲われる。
「こんなこと、いつまでも続けていてはいけないんだろうな」
相手は既婚者。
いつまでもこのような関係を続けていてはいけないことは、愚かな僕にもわかっている。
しかし、相手は初恋の恭子さんだ。簡単には別れることができない。
「どうすりゃいいんだよ」
僕が
その日は蒸し暑く、異常気象がもたらしたゲリラ豪雨で、僕と友人の
「最悪だな」
「いきなりの大雨だったもんね」
友人と一緒に、うんざりするように愚痴りながら、雨が止むまでタバコ屋の前で雨宿りをした。とはいえ、すでに二人ともずぶ濡れだった。僕の家はここから電車で二駅ほど離れていたため、一之瀬の提案で彼の家に行くことになった。
「本当にいいのか? 突然お邪魔して家の人に迷惑じゃないか?」
「別に構わねぇよ。どうせ母ちゃんも親父も夜にならねぇと帰ってこないしな」
一之瀬の親父さんは保険会社に勤めるサラリーマンで、おばさんは近所のスーパーでレジ打ちの仕事をしているらしい。二人とも帰宅するのは19時以降だという。
「じゃあ、家には誰もいないのか」
「ああ、2年前に姉ちゃんが結婚して出ていってからは、基本的に家には誰もいねぇな」
「一之瀬ってお姉さんいたんだ。なんか意外だな」
「そうか? よく末っ子っぽいって言われんだけどな」
そう言われれば、確かに小生意気で人懐っこい性格なんかは、末っ子気質なのかもしれない。
「一之瀬の家はここから近いの?」
「ああ、すぐそこのマンションだ。似たようなのがずらっと並んでるの、見えるだろう? あれだよ」
それは典型的なファミリー向けのマンションだった。僕の家は一軒家なので、オートロックシステムのあるマンションが羨ましかったりすることもある。
「なんか芸能人の住まいみたいだね」
「いやいや、今時のマンションならほとんどオートロックがついてるだろ」
「そうなの?」
「まあ、俺も不動産に詳しいわけじゃないけど、TikTokの物件紹介動画とか見たことあるか? そういうのでよく紹介されてるんだよな」
「でも、あれって東京とかの話でしょ?」
「ああ、確かにそうだな。じゃあ、やっぱり田舎では珍しいのか?」
「かもしれないね」
当時、高校生だった僕たちは知らなかった。後で分かったことだけど、田舎のマンションでも最近はオートロックのついたものが増えているらしい。まあ、3年後に大学2年生の僕が住むアパートには、オートロックなんて洒落た仕組みは付いていなかったけど。
「ウチは角部屋だから」
一之瀬の案内でエレベーターに乗り、その後、彼の家の門扉をくぐり抜けた。
「あれ……開いてる」
鍵を差し込んだところで、一之瀬が首をかしげた。
「ひょっとして、おばさんかおじさんが帰って来てるんじゃ?」
「あー、まあ、別に問題ないだろ。涼太も気にしないだろ?」
「一之瀬がいいなら、僕は気にしないけど」
「なら問題ねぇな」
ちなみに涼太とは僕の名前だ。
フルネームは
「遠慮せずに入れよ」
「お邪魔しまっ――――ッ!?」
玄関に足を踏み入れた瞬間、僕の全身に電撃のような衝撃が走った。
その理由は……。
「姉ちゃん!? 何やってんだよ!」
「何って、シャワー浴びてたのよ。突然降ってきたでしょ? お姉ちゃんもずぶ濡れになっちゃって……ん? 真司、友達?」
素肌にバスタオル一枚だけを身にまとった彼女が、女神のような微笑みを僕に浮かべていた。その瞬間、僕の心のガスコンロがカチッと点火した。あっという間に胸の中心が熱くなった。
何だ、この芸能人みたいに美しい人は……。
それが篠原恭子をはじめて見た時、僕の彼女に対する第一印象だった。
この瞬間、僕は友達の姉ちゃんに恋をした。いわゆる一目惚れというやつだ。
―――――――――――――――――――
あとがき
本日は夕方18:30頃に、第二話も更新いたします。宜しければご覧ください。m(_ _)m
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