第2話

「まさか一回戦で当たるとはね。」


「そうだね。まあ、大会運営側も気を使ったのかもしれない、この僕に。」


「そうなの?」


「ああ。僕が一回戦敗退じゃ格好がつかないから。」


「そうなんだ。」


「それでは、両者、位置について。」


審判の合図のもとにエドとリュイはそれぞれ、円形の闘技場で、それぞれの剣を構える。


「それでは、勝敗の説明を。ここ無制限の部では特に規則といった規則はございません。相手が降参するか、死ぬかどちらかで勝敗が決まります。ただ、、、」


審判はエドの方を見る。


「あくまでコロッセオ内での規則ですので。」


「分かりました。」


(あれだろ、リュイは貴族の子何だろ。殺しはダメってことね。)


「それでは、初め!!!」


審判の合図とともに試合が始まり、会場は熱狂に包まれた。


「ごめんね。どうやら君が不利みたいだ。」


「別にいいよ。慣れっこだ。」


「それじゃあ。」


リュイは金髪の髪に碧眼。使う剣は髪と同じ金色を帯びている。その剣を横なぎに振ってきた。

その剣を俺は俺の瞳と髪の色と同じ黒い剣で防ぐ。


ガキッ!!


「すごいね。僕の一撃を受けるとは。かなり本気だったんだけど。」


「そうか。じゃあ、次は本気で来た方がいい。リュイの実力は大体わかった。」


「わかった?今の一撃で?ハッタリにも程があるよそれは。それとも余程、自分の剣の性能に自信があるのかな?」


「分析は俺の数少ない取り柄の一つだからな。リュイがどう思うと構わないよ。どっちみち次で終わるしな。」


「面白いね、エドは。いいよ。本気を出すよ。死なないでね。」


リュイ・グリフィン 世界最大の国、リンド帝国のグリフィン公爵の3男。

『黄金世代』序列一位、二つ名は『万能』

文句のつけようがなく同世代最強の男。


リュイは自らの黄金の剣、体に自信最高の魔力を注ぎ込む。


「それじゃあ、いくよ。」


「ああ。」


生まれ持った、膨大な魔力とその万能の性質を持って、エドに理不尽な暴力として降りかかる。

観客の誰もが、エドの敗北を予感し、リュイの勝利を確信した。

それほどまでの圧倒的才能、魔力の奔流。


カン


先ほどよりも乾いた音がした。それもかなり小さい。

気づけばリュイの剣は地面に転がっており、エドの剣の先をリュイの首に突き立てられていた。


「えっ?」


リュイは現状を把握できていない。観客もだ。


「リュイ、降参してくれ。どうやら俺がお前を殺してはいけないらしいから。」


「えっ?今、何がどうなったんだい?」


「剣を弾いただけさ。それよりも降参をしてくれ。さっきのメイドさんがすごい形相で睨んでいるんだ。」


リュイはエドの言葉を聞き、事前に聞いていた観客席の方を見る。


「本当だ。よく気づいたね。」


「これも俺の数少ない取り柄の一つだから。それより降参を。」


「ああ。降参する。完敗だよ。」


「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


会場が今日一番の熱狂に包まれる。コロッセオでは選手同士の勝敗に賭け事が行われており、エドの勝利に賭けた奴らがお穴が当たったと騒ぎ、逆にリュイの勝利に全財産かけた奴らは泣き崩れる。


「それじゃあ、リュイ。」


エドは剣をしまい、その場を後にしようとした。


「ちょっ、ちょっと待ってくれ!」


「えっ、何?」


「この後、何あ用事はあるかな?」


「観光したい所だけど、今は所持金ゼロだから、とりあえず冒険者ギルドかな。」


「そうなんだ。ていうことは、宿は決まってないんだね。良ければうちに泊まっていくかい?」


「うち?ここら辺に住んでるのか?」


「いや、別荘を持ってるんだ。」


「別荘!リュイは金持ちなんだ!!」


「そんなに驚くことではないけど。広さは十分だと思うよ。」


「行く!別荘に行く!!」


「すごいテンションの上がり方だね。」


「ここ1月は野宿だったんだ。だから、屋根付き布団付きが恋しくてね。」


「そ、そっかぁ。」


俺はリュイの別荘に案内してもらった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る