第84話 3×3 その1③
——— 翔馬君と廉斗君が我が真壁家に泊まりに来ていた。目的は明朝の3×3だ。
親は布団持参で桜木家で宴会だ。
翠と藍ちゃんも真壁家に泊まる。
藍ちゃんは奈々菜の部屋に頻繁に泊まっている。
藍ちゃん専用の布団が奈々菜の部屋に置いてあるくらいだ。逆も然りだ。
因みに翠は真壁家に泊まるのは初めてだ。
翠も藍ちゃんも布団持参で来ている。
そして桜木家に置いてある奈々菜の布団もこっちに持ってきている。
「この布団、奈々菜の匂いがするんだけど……」
「へへへ……それ、私が藍の部屋に泊まる時に使ってるお布団」
「こっちが私が奈々菜の部屋で使ってる布団ね。そしてこの毛布は私が普段から使ってる奴ね」
藍は家から持って来た毛布を廉斗君に渡した。
「あー! その手があった♪ 翔馬、私の毛布使って♡ いや、一緒に寝よ?」
「はいぃ? お兄さんの前で一緒に寝るのは流石に……いや、お兄さんの前じゃ無くても……毛布で勘弁して下さい。でも俺、奈々菜の匂い……寝れない気がする……」
翔馬君は奈々菜の布団を借りて寝たが、実際、五分と掛からず寝息を立てた。
「翠は俺と一緒に寝るか?」
「バカ!」
と、言い放つ翠が着ているロンTは俺のだったりする。
※ ※ ※
——— そして迎えた朝。
起床時間には少し早いが、私は静かに宗介の部屋に忍び込んだ。
やっぱ、『彼氏を優しく起こすイベント』、一回はやってみたいものだ。
床には藍と奈々菜ちゃんの彼氏達が寝息を立てて寝ている。
——— しかし皆、寝顔が可愛い……って、これ、私見たら藍達に怒られるよね?
そう思いながら私は翔馬君と廉斗君を踏まないように宗介のベッドに近付き、宗介の顔に自分の顔を近付ける。
——— 綺麗な寝顔だな……
私は宗介の鼻を『チョンチョン』っと人差し指で触る。
「ん……」
——— ふふ
私は小さく呟く。
そして宗介の唇をじっと見る……見る……見る……見る ——— ちゅっ♡
私は静かに顔を近付け、軽く触れるキスを宗介の唇にする。因みにホワイトデーのキス以来、一度もキスをしていない。これが二度目のキスになる。
「んん……」
宗介は寝返りを打ち横になる。
なんだか宗介が可愛く思えて私はほっぺにキスをした。
※ ※ ※
——— 俺は部屋に誰かが入ってきた気配を感じ目が覚めた。
しかし俺は悟られないように『寝息の呼吸』を維持したまま、寝たフリをしていた。
一応断っておくが『鬼滅な呼吸』では無いので悪しからず。
知ってる奴は知ってるが、起きてる奴と寝てる奴の呼吸というのは全然違う。
寝ている奴は呼吸に勢いがある。起きてる時と全く違う。だから『寝息を立てる』なんて言葉がある訳だ。
——— チョンチョン♪
「んん……」
不意に鼻先を触れられ俺は思わず声を出した。
侵入者は小さく声を漏らす。翠だ。
俺が狸寝入りしているとも知らずに、翠は俺の鼻を触ってきた。サラサラした心地よい感触……知ってるか? 女の子の指先ってサラサラしてて結構気持ちいいんだぜ?
すると、
——— ちゅっ♡
ん? 唇に柔らかく、そして濡れた感触……はうぅ……今、キスした。
明らかにキスした。
翠さーん、人が寝てる時に何してんだよ!
嬉しいんだけど♡
ちょっと動揺して俺は寝返りをうった。
すると ———、
——— ちゅっ♡
ほっぺー!
今度はほっぺー♪
——— タイトル変更!
『イケメンと美少女すぎるイケメンの彼女が可愛すぎてイケメンがキュン死し続ける中、イケメンと美少女すぎるイケメンの彼女が可愛すぎてキュン死し続けてる事を隠しながら学園生活を無難に過ごす物語』
なんか俺のキュン死を隠す物語に変わった気がするが……。
「んん……ん……」
俺はもう少し悪戯されたかったが客人の前だ。これ以上イチャ付くのも気が引け目を開ける。
すると透明感しかない、優しい笑顔の翠が目の前に現れた。
「おはよ。起きた?」
「……ん……おはよ」
最高の朝だ。
目を開けると好きな女の微笑で朝が始まる。こんなに最高の朝は今迄経験が無い。
今度天井に翠のパネルでも作って貼っとくかな……。
俺は当然『今目が覚めました』と言った感じの反応を翠に返す。
——— すると静かに目覚ましが鳴った。
※ ※ ※
——— お兄ちゃんがジョギングに出かけた後、私はお兄ちゃんの部屋に忍び込んでいた。
今、お兄ちゃんの部屋には翔馬しか居ない♡
床の布団に寝る翔馬♡ 私の毛布をしっかり体に掛けている。
——— かわいいー! 何この寝顔♡ 彼氏の寝顔ってこんなに可愛く見えるの?
私の中では翔馬は「彼氏」だ。
っていうか、私と翔馬の関係を知る人は親を含めて全員、最初から『翔馬は奈々菜の彼氏』だと思っている。
実は彼氏と認めていないのは、翔馬本人だけだったりする。外堀は完全に埋めた。後は本人だけだ。
私は翔馬の寝顔を堪能する。
——— カシャ! カシャ!
写真はデフォだ。先ずは写真を撮りまくった。
一緒に布団に入って自撮りでツーショットも撮った。ちょっと事後っぽい。これで翔馬を揺すれないかな?
顔を触りまくったり、布団に潜り込んで翔馬の胸に顔を
兎に角起きてもいいや位に色々悪戯をした。
最後に唇にキスをしようとしたら翔馬は目が覚めた。
「おはよ♡ ダーリン♡」
「……おはよ……ん? なあ、俺が寝てる時何した?」
私の顔は翔馬の鼻先数ミリのところにある。鼻と鼻はちょっと動かせば触れる位置だ。
取り敢えず翔馬の問いに答える。
「え? 顔を触ったり、胸に顔埋めたり埋めさせたり、あと、おっぱい触らせたりしたよ。最後におはようのキス……しようとしたら目が覚めた。ダメだった?」
「ダメじゃ無いけど今はダメ」
「ちぇ……」
「てか、何で一緒の布団に入ってる?」
「そりゃ、翔馬の温もり感じたくて? ダメ?」
私は此処ぞとばかり、上目遣いで翔馬を見上げる。
「お前なぁ、一々可愛い仕草するなよ! 俺を殺す気か」
「翔馬を落とす為なら幾らでもあざとくなる奈々菜ちゃんです♡」
暫くそんなイチャイチャをしてから、私は翔馬と一緒に布団を畳んだ。因みに藍はまだ爆睡中だ。
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