第52話 お盆だから爺ちゃんちに来た④
——— 真壁家の庭に入ったら、宗介さんの発言にちょっと戸惑った。
縁側に座る女の子と男の子に挨拶したが、女の子は私を見て固まっていた。この子のこの反応は私を初めて見る人の通常運転だ。
「お姉ちゃんって天使なの?」
男の子が突然私に話しかけてきた。しかも『天使』だなんて素直でいい子だ。
「天使じゃ無いよ。普通女の子だよ。なんで?」
「そうなの? だって頭に輪っか付いて……あれ? さっき見えたんだけどな……」
男の子はそう言って座ったまま私の頭の天辺を覗き込む仕草をする。こういう仕草をする時って何で鼻の下伸びるんだろ?
「えっと、私の名前は『翠』って言います。こっちは『藍』。お名前教えてくれる?」
すると、奈々菜ちゃんがタオルで髪の毛を乾かしながら奥から現れた。完全に湯上がりって感じだ。
「
「風太です」
そう言ってペコリと頭を下げた。なんか可愛い。そして風太君はこっちに戻って来いと言わんばかりに緋色ちゃんを肘で何度か突っつく。
「え? あ! 痛っ! 痛いって!」
——— バチン!
緋色ちゃんは風太君の頭を叩いた。結構乱暴な子だ。そして自分の名前を教えてくれた。緋色ちゃん、さっき聞いて無かったみたいだから改めて私達もテンポ良く名前を言うが……。
「あ、緋色って言います」
「翠です」
「藍です」
「三波〇夫でございます……」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
春輝おじさんがなんか言った。
少しの時間、辺りに響く虫の泣き声と遠くに聞こえる波の音がこの場を支配する。
お父さんの世代の、更に
※ ※ ※
「……奈々菜です」
お父さんに変な空気にされた中、最後に私が自己紹介した。
「ね、奈々菜ちゃんと藍ちゃんって何年生?」
「中二。緋色ちゃんは?」
「おんなじ。同級生だ♪」
普段、私も藍も人の名前は苗字で呼ぶけど、彼女はこの場限りの子だ。なので名前で呼ぶ。って言うか、苗字教えてもらってない。
「凄い似てるけど双子じゃないんだよね?」
「うん。全然違うよ。誕生日も半年違うし……一応、
「見た感じ
私と藍は、生まれた年も違う。なので干支も一つ違うのだ。
「なんか仲良しだね。学校も同じなの?」
「うん。二人で同時に転校してきたんだけど、うちの家族もだけど、会う人皆混乱して、結構大変だったよ」
お兄ちゃんがシャワーから帰ってきた。お兄ちゃんが来ると翠ちゃんはお兄ちゃんと二人で大人達に混ざって食事を始めた。
翠ちゃんは遠慮なくパクパク食べてる。風太君も一緒になって食べていた。
時間はまだ五時だ。ちょっと早いんじゃない? って思ってたが、時間が過ぎるのはあっという間だ。
緋色ちゃんはさっきから部屋の奥の方をチラチラ見ていたが、何か気になるものでもあるんだろうか? そう思ってたら、緋色ちゃんが気にしていた物の正体が分かった。
「ところで……部活ってテニス?」
「そう。何で分かったの……ってあれか」
私は部屋の片隅に置いてあるラケットに目を向けた。
藍と二人でここでも何か練習できないかな? と思って持ってきていたのだ。大会近いしね。
すると緋色ちゃん。なんか目がギラギラしてるけど……。
「えへへー、私もソフトテニスやってんの」
「そうなんだ? 一応聞いちゃうけど、学校の名前教えてくれる?」
聞いたところで分かる訳が無い……。
「K県の
私と藍は顔を見合わせた。
全国に何校あるか分からない中学校の一つなのにその学校の名前は聞き覚えあると言うよりハッキリとその中学校を知っていたからだ。
『谷坂中学校』……女子ソフトテニスの全国大会常連校だ。毎年出場する程の学校で今年も出場する。
優勝も何回しているか分からない程の強豪校だ。
自分が活動している部について、全国で強い学校なんて普通は知らないものだ。
ただ、自分の在籍している部が全国大会常連校なら話は別だ。
私は知っていた。そして、藍も知ってるようだ。
って事は、藍がいた学校って……。私は初めて藍の元いた中学校を聞いた。そして私も初めて語った。
「藍がいた学校って?」
「I県の森花北中学校。奈々菜は?」
「Y県の川梨第一」
「あちゃー、奈々菜の練習ガチな訳だ」
「そういう藍もでしょ?」
「まぁ……だね」
「へぇ、二人共あそこの中学校だったんだ」
緋色ちゃんの反応でも分かったと思うけど、そういう事だ。
私も藍もソフトテニスでは全国レベルの部に所属していた。藍、上手いわけだよ。
私と藍がいた中学校は、去年も全国大会に出場している。でも私達は顔を合わせていない。当然だ。
私達一年生は大会会場に行ってないからだ。
泊まりだしね。宿泊費なんて無い無い。来るなら希望者が自費で宿泊して応援となる。一応、先生が引率してくれるので保護者は安心である。
「転校して
「双子で美少女は余計だけど、私も運命めいたものはちょっと今思った」
「私はかなり思ってる」
「今の学校ってどうなの?」
「うーん……進学校だからね、ちょっとユルユルかな?」
「だね、練習前のランニングも前の学校じゃ5㎞は走るって言ったら唖然としてたしね」
「で、二人はレギュラーなの?」
「うん……一応……ね」
私は全国出場を隠して話した。
藍も察したのか「ところで緋色ちゃんはレギュラーなの?」と、私達から話を逸らす。
「まぁ……うん。団体戦だけ出てる……」
うん。彼女、今年の全国大会の出場メンバーだ。お盆が明けると来週全国大会だ。私達と顔合わせるね。
藍は更に話を膨らませた。
「あの学校で二年でレギュラーって、凄いじゃん! うわぁー……なんか……うわぁー……」
「凄くないよ。周りが凄いんであって、私なんて一杯ミスするし決めらんないしで、相方の足引っ張ってるもん」
「でも全国優勝するようなチームで二年でレギュラーなんでしょ? そう言えば来週全国大会じゃん。練習しなくていいの?」
…………私達にも言える話だ。
「今更棍詰めても怪我するだけだから体が動きを忘れない程度にね。明日帰ったらすぐ練習だけど」
「明日帰っちゃうんだ? お祭り一緒に行きたかったな」
「私来たの一昨日だし、そろそろ練習しないと……」
「なんか燃えてきた……よし! 奈々菜! 緋色ちゃん! 今から練習しよう!」
「うん! ……って言いたいけど、シャワー浴びたし、今から汗はちょっとね……」
「うん、ちょっと勘弁」
「……だね。はは ———」
私達はメッセージアプリのIDを交換して、色々と情報交換をする仲になった。
この後庭で花火をやった。
線香花火って雰囲気いいよね。
——— 明日はお祭りだ。そこで翠さんはさり気無く発作を発動した。
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