第21話 妹物語
「
私は美少女だ。別にナルシストってわけじゃない。
大体、周りが可愛い可愛い言ってれば嫌でも気付くってもんだ。
朝、学校に着けば、席に着くなり、何人かの女の子が話掛けてくる。私の可愛さに
一つは、『自分達のグループへの取り込み』だ。可愛い子を自分達のグループに取り込めば、グループそのものの
ただ、周りの目は違ったようだ。私に接触してくる子達は私を引き立てていたようだ。
これも周りの声で知った事だ。
「なんか、あの子達奈々菜ちゃん囲うと奈々菜ちゃんの可愛さがよく分かるよね」
との事。
私に寄って来る子達はそんな事になってるとは露程にも思っていない。一つ付け加えるけど、私はいつも皆に囲まれて、
そしてもう一つの肖りは『私可愛いでしょ?』アピールだ。私にアピールする事によって『お洒落な
私はお洒落に無頓着では無いが、そこまで固執していない。ただ、彼女達は私が持つアイテムは全てお洒落だと錯覚しているようなのだ。
何処にでもあるようなシンプルな筆入れも「奈々菜ちゃんの筆入れお洒落だよね」と言って来たり、極普通のありきたりなポーチも「それ可愛い」って言って来たり……彼女達は何を見てそう思ってたんだろ?
なので持っている小物は実際、その辺の子が持っている物より素っ気なかったり、誰もが普通に持ってる物を持っていなかったりしていた。
周りはそんな事とは露知らず、私に話しかけるも、実は興味が無い話に適当な相槌を打って話を聞いていなかったりした。
当然男子も寄ってくる訳で、寄ってくる理由は『俺カッコいいだろ』アピールだ。その先にある想いは語るまでもない。
そして何気に交換しまくった電話番号とメッセージアプリのIDだったが、家に居ると電話が頻繁に掛かって来る為、機内モードにして通話をオフにしていた。メッセージはWi-Fiで通信可能だったが、自分から送信する事は無く、既読スルーで返信する事も稀だった。
こんな酷いと思う事をしてるのに何で皆私に近付こうとするのかが分からなかった。
そして引っ越しが決まり、私はチャンスとばかりにスマートフォンを買い替えた。勿論番号は変えたし以前の土地の者の連絡先も全て消去した。
私が引っ越した事は春休みが明けて初めて公になった筈だ。因みに部活には引っ越す二日前まで何食わぬ顔で顔を出していた。
今頃向こうの学校ではどうなっているかは全く分からない。連絡を取る手段は無いし、そもそも知りたいとは思わない。
そして上辺だけの人付き合いはうんざりしていた所、藍ちゃんに遇った。彼女からは私と同じ匂いがした。この子は私と一緒で人を信用しない子だと感じた。だから信用出来ると思った。
私の学力は以前の学校では成績は上の上。前の学校では首席には成れなかったが、順位は常に一桁台だった。
部活は自己紹介でも話したとおり、ソフトテニス部に所属。新人戦でレギュラーになるくらいには実力があった。新山学園でも宣言どおりソフトテニス部に入部するつもりだ。
※ ※ ※
私は終始一人で話していたが、その話を聞いて藍ちゃんが一言、
「以下同文♪ 私の話、奈々菜ちゃんの話と全くと言っていいほど同じだね」
「って事は藍ちゃんもテニスやってたんだ?」
「うん。私もテニス部入るつもり。奈々菜ちゃんとダブルス組めたら嬉しいな」
「藍ちゃんは前と後ろどっち?」
「ふふーん……前」
「あ、だったら組めるね。私、後ろ」
「やった♪ なんか楽しみだね」
「うん」
今、お互い向かい合って床に座っているけど、髪型こそ少し違えど、鏡を見ている錯覚に陥った。皆似てる似てる言うけど、ホント似てんだ。自分で自分に似てるって思う事、普通ないよ?
すると翠さんが不意に質問して来た。
「ところで奈々菜ちゃんの好きな男の子のタイプは?」
「えー?! それお兄ちゃんの前で聞くぅ?」
それは流石に恥ずかしいよ……。
「だよね。答えられないか」
翠さんも自分で言って呆れた顔をする。
「……私をちゃんと見てくれる人……かな?」
思わず口に出した一言。私の内面を見てくれる人は今迄居なかった。その一言に藍ちゃんが『やっぱそうだよね』と同意する。
私は何だか恥ずかしくなって話題を無理やり変えた。
「そうそう、ケーキが出たんで、お兄ちゃんの秘密を一つ」
「何?」
「お兄ちゃん甘い物大好きなの」
「なんか意外……」
「勉強すると脳が疲れて甘い物欲しくなるだろ? 筋トレしても疲れた体は甘い物欲しくなるだろ? 甘い物最高!」
——— 次回、翠さんのウィッグと
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