プロローグ
第1話 神器選定の儀(1)
〈神器選定の儀〉――というらしい。
その光の中に手を突っ込めば『伝説級の
本来なら『選ばれし勇者』か『国を救った英雄』などが、その権利を得るのだろう。だが、今回は時間が限られていた。
ゆっくりと『勇者の選定』や『英雄の誕生』を待っているワケにはいかない。
今回の〈神器選定の儀〉を受けるための条件はただ一つ。
――強者であること。
理由は分からないが、
もう、彼らの中から勇者が誕生することはない。
例外があるとすれば――異なる世界から来た――俺のような存在だけである。
数少ない
国の周辺は見渡す限り、荒野が続ていた。
もしくは、砂漠が広がる死の大地だ。
しかし現状、弱体化した
弱者は荒れた土地に住むしかない。
まだ国は存在していたが、そこに住む民でさえ、追い詰められている状況だ。
その原因の一つに【
太古に神々が造ったという【
伝承によれば、それが世界を守ってくれていたのだという。
だが、ある日突然【
壁の向こうから【
逃げ
今日まで、この国の民が頑張ってこられたのも『【神器】の存在があったから』なのだろう。
まだ戦うことを
そして、その全員が俺へと注目している。
(はっきり言って、もう帰りたい!)
場違いにも程があった。この前までの俺は、日本の片田舎で
いや、高齢化の進んだあの土地では、俺みたいな人間でも十分、若者の部類に入っていた。
とはいえ、いいように使われていただけのような気もする。
会社では肉体と精神が壊れるまで
実家のある田舎に帰っても、老人たちによって便利に使われる。
そして、異世界に来ても――
(
という状況のようだ。
どうやら俺は、そういう星の
歴史を感じる
うだるような暑さの外とは違い、中の空気はヒンヤリとしていた。
老若男女、誰もが神に
そんな信徒たちに混ざって、
一番目立っているのは筋肉質の大男だろう。また、素早い動きを得意とする、鋼のような肉体を持った目付きの鋭い男性もいる。
剣士の女性はスタイルも良く、動きも軽やかだったため印象的だ。
そんな連中から距離を置くように、壁際には青年が立っていた。
彼は弓の使い手で
誰しもが
しかし、その誰しもが俺より弱かった。
本来なら、この大聖堂も別の使われ方をしていたのだろう。
俺は少女の姿をした女神『エーテリア』へと視線を向ける。
この異世界へ俺を
残念な事に――俺以外の人間の目には――その姿が見えないらしい。
彼女の声は俺にだけに聞こえるようだ。
同時に触れることが出来るのも俺だけだった。
幽霊のような存在だと思った方がいいのかもしれない。
そんな彼女は俺へと知識をくれる。それは大昔――国が出来た当時――アレナリース王国で生まれた者は、十五歳になると神より
重要な事は【
つまりは『成人の儀』だ。
本来ならば、この儀式は誰もが受ける権利を持っていたのだろう。
それがいつしか、お金を持っている貴族だけとなり、やがて勇者や英雄に限定される。光の玉が出現する間隔が十年、二十年と空いたためだ。
次はいつ出現するのかも分からない。使えるのも一回限りだろう。
とうとう俺のようなオッサン――いや、今は少年か――で最後となってしまった。
(この国も、いよいよ終わりのようだ……)
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