第8話(3)面談
「……それではお名前の方をお願いします……」
リュートが促す。
「レプと申します」
「ひっく……ど~も~ルパで~す」
「お、おい、これは……」
小太りの勇者がリュートの方を見る。
「見ての通り、エルフの双子だ」
「おほ~!」
「!」
「な、なんだあ……?」
小太りの勇者が発した奇声にレプとルパがビクッとなる。
「美人のエルフ! 世の冒険者男子にとっての憧れ! それが双子⁉ 収穫祭と年越しの祭りが同時に来たような気分だ~!」
小太りの勇者が椅子からぴょんぴょんと跳ねる。腹の肉がたぷんたぷんと揺れる。
「……」
「うっ……」
そんな小太りの勇者を見て、レプが目を細め、ルパが口元を抑える。リュートが口を開く。
「こちらのレプさんがお姉さんで、パワータイプだ。水晶玉を用いて戦う」
「水晶玉?」
「占いなどもやっておりますので……」
「しょ、商売道具じゃないのかい?」
「別に……その辺の古物商で取り扱っている水晶玉を適当に見繕っているだけですから」
「あ、そう……」
「それでこちらのルパさんが妹さん。酒を飲むほど強くなる不思議な拳法を使う」
「ほう……」
「エルフだと魔法の使った支援や、弓矢での攻撃が主な中、異色な二名だが……」
「異色結構! 色っぽいのが何よりだよ~ ぐへっへっへっ!」
「……それではどうかな?」
「もちろん合格!」
勇者が下卑た笑顔を浮かべて告げる。
「……お名前の方をよろしくお願いします……」
リュートが自己紹介を促す。
「初めまして、クイナと申します」
「お、おい、今度は……」
小太りの勇者がリュートの方を見る。
「見ての通り、ドワーフの娘さんだ」
「ドワーフ!」
「‼」
小太りの勇者が大声を上げた為、クイナが驚く。
「ドワーフとは良いねえ! しかも美しいときた!」
「あ、ありがとうございます……」
クイナが軽く頭を下げる。
「礼儀正しいのも良い! ドワーフっていうのは、職人肌でなにかと気難しい種族と聞いたことがあるけれども……どうやらそうではないようだ!」
「い、いえ、意外と頑固なところもあるかと思いますよ……」
クイナが鼻の頭をこすりながら呟く。
「いや~許しちゃう!」
「え?」
「そういう一面がまたギャップを生むんだよ!」
「は、はあ……」
クイナがはっきりと困惑する。リュートが紹介する。
「鍛冶屋としての腕も確かだが、見ての通り、小柄ではあるけれども筋骨隆々だ……戦士としても戦力になると見込んでスカウトさせてもらった」
「おおっ! 万能だね~これは色々と期待出来そうだ……げへっへっへっ!」
小太りの勇者が不気味な笑い声を上げる。
「……ではどうかな?」
「当然合格!」
小太りの勇者が下品な笑顔を浮かべて告げる。
「……それじゃあお名前の方をよろしく……」
リュートが優しく促す。
「オッカ……」
「うん?」
小太りの勇者が首を傾げる。リュートが尋ねる。
「どうかしたか?」
「お、おい、ただの娘じゃないか?」
小太りの勇者が身を乗り出してリュートに小声で問う。
「ただの娘には興味はないか?」
「い、いや、大いにある!」
「それなら良いだろう」
「と、とは言ってもだな!」
「なんだ?」
「俺はままごとをするつもりはないぞ? 冒険をするんだ!」
「冒険には最適だ」
「あんまり馬鹿にするなよ、雑用係なら間に合っているんだ」
「雑用係ね……オッカちゃん、ちょっとお願い出来るかな?」
「う~ん……そういう気分じゃない」
「ちょっとだけで良いからさ。ご馳走も出るよ」
「それなら……!」
「うおっ⁉」
小太りの勇者が驚く。オッカがドラゴンの姿になったからだ。オッカはすぐに元に戻る。
「……これで良い?」
「ああ、ありがとう。さて、見ての通り、貴重な竜人族の生き残りだ。成長も早い。ポテンシャルは十分……雑用係にはもったいないと思うが?」
リュートが首を傾げる。
「お、おお……! これは期待出来そうだ……ぶへっへっへっ!」
「……それではどうかな?」
「言うまでもなく合格だ!」
小太りの勇者が下劣な笑顔を浮かべて告げる。
「顔合わせも済んだわけだが……全員合格で良いのか?」
オッカが部屋から出て行ったのを見届けた後、リュートが小太りの勇者に尋ねる。
「ああ、文句ない!」
小太りの勇者が満足気に頷く。
「給金だが……それぞれの実績や経験などを考慮すれば、これくらいの額になる」
リュートが金額の記された紙を差し出す。
「ふむ、ふむ……」
その紙を見て、小太りの勇者が頷く。
「十人ともなれば結構な額だ。これに冒険の旅の諸経費がかかる……払えるか?」
「まったく問題ない!」
「それなら良い。では俺の分の報酬をもらおうか……」
「そ、それなんだが……少し割り引きにならないか?」
「……構わないが、条件がある」
「そうか! ……条件?」
「ああ、もうしばらくお前らパーティーに帯同させてもらう。アフターケアも大事な仕事だからな。それで良いな?」
「お、お前がついてくるのかよ……ま、まあ、仕方ない。わ、分かった、条件を呑もう」
小太りの勇者が不承不承ながら頷く。リュートが笑みを浮かべる。
「結構だ……それではちょっと彼女たちの様子を見てくる」
リュートは席を立ち、別室へと向かう。
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