16階以降の楽しみ方?
これだけ竹と白と黒の世界の和な雰囲気が溢れる世界ならやはりと言うか
「民家がある……」
「朽ちてどれだけだ?」
「人がいた、という事か?」
初めて目の当たりする伴さん達とは別に
「今回は木造か」
三輪さんの言葉に
「屋根がないから茅葺屋根かな?」
朽ちた家だけどその残骸を見て俺が言えば
「ヨーロッパの方にもあるわよね?」
フレンチをやっているだけあって花梨も知っていたようだ。
「なんかこう言うのもいいな。土壁に木造に茅葺屋根。童話の世界だ」
意外な事に林さんがメルヘンな事を言い出したけど
「童話に魔物は出ないだろう。
出ても狼だな」
そこは工藤。
そう言った事に一切縁がなかったという様に剣を構えて雪と一緒に走り出し……
「狼だ」
「マロのバージョンアップの奴か」
のんびりした千賀さんと林さんの感想はただそれだけ。
10階のマロとは違う巨大さにアワアワする伴さん達お三方。
この対比がひどいと思いつつもしばらくもしないうちに10匹ほどの群れだったマロ達を仕留めて運ばされる工藤。
慣れてるなぁ。なんて感想は無視をして
「ぅにゃ!ぅにゃ!」
「うんうん。みんなのお土産に持って帰ろうな」
「にゃっ!」
最高にかわいい雪の喜ぶ顔。そして仕留めたマロの血で汚れる酷い姿の工藤。
だけどそれも慣れているという様にいつの間にか覚えた水魔法でざっと汚れを洗い落とす。
「魔法、説明は受けていたが……
君も使えるのか?」
今更な伴さんの質問に
「そりゃ便利だから覚えるに限ります。特にこの世界の水、何があるかわからないから安心して飲める水何てアレしかないと思った方がいいくらいだから。
足の生えた魚が生まれるような世界の水何て飲みたくないっすから」
あまりにもな正論に何も言えなかった。
そしてさりげなくあの水についても言ったけど
「まあ、二度と手に入らない水ならもう関係ないけどな」
いかにあの水が奇跡の水だったか匂わせ、さりげなくお前たちでは手に入れられないだろうとディスるのも忘れない。
もちろん工藤はいつの間にか雪ファーストだから戦闘が終わった後すぐにでも周囲の警戒へと旅立っていく。
って言うか哨戒してたのかよと感心するけどとりあえず二人の負担が減るように毒霧は撒いておく。
林さんの目が冷たいけど気分は単にキ〇チョールを撒いているノリ。元ネタはバ〇サンだけどそこは今更突っ込まない。
「相沢君、少しいいかな?」
「なにが?」
気になる事でもあったかという様に質問してきた伴さんへと振り向けば
「ひょっとして家がある問う事は人もいるとか?」
「え?普通にいますよ。骨ですけど」
「え?」
「は?」
そこまでは情報共有をしてないのかよと思いながらも千賀さんへと視線を向ければ首を横に振る。
「我々がそこまで情報の公開する権利はない」
ごもっともで。
「じゃあ、結城さんは……」
俺が聞けば
「上が判断したら何も言えない立場ですよ」
林さんの言葉に言われて納得。
まあね、と思ったのはン年ぶりに親父と再会した時にいたいかにも偉そうな人達。実際偉いのだろうけどそこは俺の知らない世界という事で知らないままでいる事に決めている人たちがまだわんさかといる伏魔殿に結城さんには中間管理職ご苦労様ですと思うしかない。
「ちなみに16階以降は田舎の村から都会に向かってお城に向かうという行程になります。
ここから先骸骨様が出てくるので……
運よくマロを引き連れていくとあいつら骨大好物だからすごいのが見れますよ」
「すごいってなんだよ!!!」
聞いていた加藤さんの絶叫。
いや、犬と言えば骨に齧り付くそんな絵面……
あ、と思いついて指をパチンと鳴らす。
「うちにイチゴチョコ大福って言うワンコが三匹いるんですが、たまに猟友会の人から猪とか鹿の骨をもらうんですよ。うっすらと肉がついていてそれが大好物なんです」
なんて視覚的にはお骨を大切に抱えてカジカジするわんこのかわいらしい姿を想像させてみたけど先ほど見た見上げるようなワンコではなく狼がご機嫌で骨をカジカジする姿。
せっかく俺が表現できる中でかわいく言ったつもりなのに恐怖で顔を青ざめるなんて……
「エリートのくせに温室育ちだと使えんな」
人の耳には聞こえなくても俺には聞こえるデビルイヤーが林さんの毒を聞き取ったけど聞こえないふりをしておいた。
「とりあえずですが、ここから先は文化圏の残る世界です。
ですが人と出会った事は今のところないので遠慮なくいきましょう」
元人だったかもと思うもすでにその面影はない姿。
服も理性もなく、そして骨が人一人分の骨格を作ることが出来れな何度だって復活する相手をもう人と呼べないのは当然だと俺は思っているから最後は安らかに眠ってもらう事を心掛けている。
絶対イチゴチョコ大福を連れてきて処理……なんてマロにも劣る真似をさせないと心に決めている。
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