ローストチキンは諦めてないようです

 下半身問題を無視して戦闘能力だけを見れば工藤ってかっこいいよな、ムカつくけど。

 なんて評価。

 花梨にしたことは絶対許さないけどこの戦闘本能は褒め称える価値はある、ムカつくけど。

 ムカつきながらも褒め称えてしまうけど花梨にしたことは絶対許さないけどね。

 大切な事だから二度だって三度だって潰れてすりおろされてもずーっと言い続けるけど。

 格闘技でも学んだのかちゃんと着地して構えなおす姿が様になっててムカつくけどそこは割愛。

 工藤に蹴られた12枚様の背後から雪が襲う。

 だけどそれに対応する12枚様。

 振り向いて剣で雪に襲い掛かるも雪のその神速。さすがにとらえきれずに空振りだった。

 代わりに雪は一枚の翼を中ほどから切り落とす事しかできなかった。

「私の翼がっ!!!」」

「にゃ!」

 たぶん元は天使様なのだろう。

 蝙蝠様の羽ではなく翼の方を半分奪われオコだけど、雪は根元から切り落とすつもりだったのか不発でご立腹。

 工藤の格闘技に対応できないセレブ様、そしてやっぱり雪しゃんの最高速度は誰よりも早いという結果。

 勝てるか?

 わずかな希望。

 だけど背後で不安げな顔をする花梨に俺はただ守るだけではいけない事を改めて思い知る。

 

 戦って勝ってみんなで帰る!


 トイレよりも一番大切な願い。

 命あってのトイレ問題だからね。

 何よりも誰一人失うことなく帰還することが俺達の勝利の条件!

 剣を構えながらもぷしゅーっと毒霧。

 効果はいまひとつだけど長時間じわじわ効くのがバ〇サンの良い所。

 化学物質に免疫のない異世界の皆様。天使様にも効果があったから12枚様にも効果があるはずと信じて無詠唱で使えるようになった俺の攻撃を気付かず受けている。

 ただちらちらと林さんの

「それ、ほんと効果あると思ってるのですか?」

 なんて視線での問いかけには

「あると思ってるからやってるんだよ」

 と声を大にして言い返したい。

 分かってるよ。

 マゾあたりから効果はいま一つになっていることを。

 だけど全くないわけじゃないからやる価値あるじゃんと言うのが俺の主張。

 フフフ、考えてみれば俺どっちかって言うと魔術師タイプだから後方からの攻撃がメインなんだよ。

 12枚様を挟むように雪と工藤が対峙して俺の背後ではいつでもお魚を投げつけれるように準備している岳。悪いけど視界の端でちらちらと見えるその姿、こんな時だというのに癒される。

 みんな12枚様を本能的に怖いと思ってもやる気だから俺だって負けられない。

 真っ黒な剣を構えなおしてポコポコと黒い球を作り出す。

「またそんな技を」

「世の中不思議がいっぱいだからね。この程度の芸ぐらいやれるもんだよ」

「芸と言うか!」

 なんて雪や工藤を無視して俺に襲い掛かる12枚様は漆黒の剣を振り上げて俺に襲い掛かって来た。

「やだ怖い!」

 あまり接近戦をしてこなかった俺だけに悲鳴を上げてしまうけどそこはしっかりと俺は剣で受け止める。

「受け止めるか!」

「素直に切られてたまるかっ!!!」

 腹の底から吠える。

 ギリ受け止めれた。いや、案外余裕だったかも?

 真剣でやりあうなんてめったにない事をしたおかげで心臓がバクバク言ってる視界の横から一本のロープが目の前を通過したけど、すぐに12枚様は俺から離れて距離を取った。


「ちっ!素直につかまりなさいよ!」


 女王様の舌打ち。

 ロープの先端に重りをつけて素早く投げて捕まえようとする根性……

「チャーシューでも作るつもりか?」

「ローストチキンもいいけど手羽先も捨てがたいわ!」

 工藤の嫌味に舌なめずりして言う姿が洒落にならない。

 本体が人間タイプでも本当に食材として取り扱うのか?まあ、足のついた魚を食材として使ったあたり花梨のメンタル最強と思ったけど、さすがにこれは夢に見るからやめてほしい。

「なんて野蛮なっ!

 我らを食そうなど悪魔にも等しい行為!」

 それは俺も思うけど女王様の前で下手な事はしゃべりません。

「って言うかさ、そんなばっちい服着てどれだけ体洗ってないか知らないけどくっさいおっさんを食べようってどんな罰ゲームだよw」

 なんて岳がおっしゃってくれました。

 内心は良く言ったと思ったけど時と場合に寄っちゃあそれ言っちゃいかん奴。

 ほら、12枚様顔色をどす黒くして怒ってますよ。

 それが羞恥心かなにかは俺にはわからないけど

「雪しゃん、あんなの咥えたりしたらおなか壊しますからね!お口にしてはいけないでしゅよ!」

 そんな注意を促せば分かってると言わんばかりに「にゃ!」と鳴いてくれた。

 そんな俺達の会話によっぽど恥ずかしかったのだろう。

 星形に輝く光の塊を幾つもポコポコと作り出す。

 きっと蝙蝠様のブラックホールの天使バージョンなのだろう。

 どっちにしても危険と思えばすぐさま岳が魚を投げつけてくれた。


 ボンッ!!!


 ものすごい風圧をまき散らしながら光の塊は爆発をした。

 思わずオールバックになってしまった前髪に何が起きたのか理解が出来ないでいれば

「今度の力比べは私の勝ちのようだな」

 ニヤリと笑うその瞳。

「なるほど。黒い塊がブラックホールだとしたら白い塊はビックバンと言う所でしょうか」

 そんな林さんの分析。

 いやいや、ブラックホールだって意味わかんないのにビックバンとかもう宇宙でも作っちゃう?なあれだよな……

「だけど一対一なら負けるけど複数対一個なら勝てるんじゃね?」

 なんて岳様のゲーム脳での攻略の提案をしてくれれば微かに眉を顰める12枚様。

 俺はすぐさまブラックホールを複数作って未だ自分を守る盾のように周囲に浮かべている光の塊にそれを当てていく。

 一個じゃ相手にならなかったから二個……で勝てるわけがない。三個もいま一つだけど四個で少し手ごたえがあり

「よっしゃ!五個で相殺!」 

「よっしゃじゃねえ!被害を考えろ!」

 なんて工藤がその腕で吹き飛ばされそうな小さな体の雪を守っていたのが意外だったけど……


「あの攻撃はお前に任せてもいいんだよな」

「白と黒のトラップに注意して接近戦に持ち込めよ」


 俺の方が分が悪いかもしれないけどそこは根性でカバーして見せる。

 そんな決意のまま12枚様を見れば信じられないという様に驚くその顔。


「さあ、その綺麗な顔に絶望を教えてあげる」


 女王様の言葉に何かお股にきゅっとクルものがあったけど


「向こうは力と力のぶつかり合いしか知らない原始的な戦法を取ってくるぞ。

 力押しは無駄に体力を使うだけだから賢く行こう」


 林さんが戦闘方針を決めてくれたけど


「賢く行こうってどう行くの?」


 困惑する岳の返事に俺達の方が困惑するのだった。




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すみません。

いきなり私事ですがコロなって、薬が合わずにふらふらで一日の大半寝て過ごしてる状況です。人間よくこんなにも寝てられるなって言うくらい寝てます。

PCどころかスマホにすら向き合うことなく一日中寝てます。

創作活動ができないなんて初めてでびっくりです。

薬を半分にしたらようやく起きていられる時間を半分ほど取り戻して書いてますが……

皆さんもお気を付け下さいませ。

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