第2話 昨日の女の子

 翌日、龍也は支度を済ませ学校に行くために家を出た。

 龍也は通っている英明えいめい高校の教室に到着と早々と自席に着きブックカバーに包まれた昨日購入したラノベを取り出し読み始める。

 十五分ほど読み進めていると教室にはとんどの生徒が到着していた。入学して1か月近くたつと関わる人がある程度決まりグループが形成される。クラスメートたちは各々思い思いにグループごとに会話を弾ませている。

 その中でもひときわ目立っているグループがある。そのグループの三人全員が超が付くほどの美少女で近寄りがたくどこか雲の上のグループでそのグループがこのクラスの中心で彼女らの会話の話題はこのクラスのトレンドになる。

 龍也は人が多くなってきたので読書はあきらめて机に伏せて寝たふりをする。


「おはよう。友恵ともえ千夏ちなつ

「おはようございます。香織さん」「おっはー。かおりん」


 寝たふりをする龍也はいつもは読書に集中しているせいであまり気にならない教室でされている会話に耳を傾けると最近聞いたような気がするような声が美少女グループの方から聞こえる。

 龍也はその声の主が気になり声の聞こえた方を見る。

 龍也の目に入ったのは美少女グループの三人。

 清楚系で大人びた顔立ちで眼鏡が似合う渡邊わたなべ友恵ともえ

 元気な印象を受ける明るい性格で笑顔がよく似合う赤城あかぎ千夏ちなつ

 最初に挨拶をした篠崎しのざき香織かおりが昨日、龍也がナンパから救った女の子に顔も声も激似だったのだ。

 香織は美少女の中でも目立っており特に男子生徒からの人気がすさまじく入学して以来、サッカー部のエースの先輩、野球部の部長、学校一のイケメンと言われている先輩など色々なこの学校のスクールカーストトップに君臨する男子生徒たちに告白されそのことごとくを断り続けている。他の二人もモテているが香織同様その全て断っている。


「ねえ、二人に相談があるんだけどいいかな」

「「全然いいよ」」

「実は、昨日、ナンパされているところを助けてもらって」

「「なにその少女漫画みたいなシチュエーション」」

「いやそのね、昨日服を買いに行ったついでにご飯食べていこって思ってフードコートに行って席に着いたところを男三人に絡めれて」

「「それでそれで」」

「さすがに男の人三人相手だと怖くて何も言えないところを同い年くらいの一人の男の子に助けてもらって」


(あれ、俺この話の内容知っているような?まあ学校一の美少女がナンパに会うのは仕方ないことだしただの偶然だろ)


「かおりんどんな感じで助けてもらったの?」

「えっと、その人はわざわざ見ず知らずの私を助けるためだけに2人分の昼食を買って来て」


(ん?心当たりが...ってか今考えるとマジで恥ずかしいんですけど)


「『何ですか、お兄さんたち』って言って男の人達を追い払ってくれて」


(間違いないあの女の子は篠崎さんだ。というか人の痛いセリフを人前で話さないでくれ羞恥で死ぬ。マジで)

 心の中で羞恥でのたうち回っている龍也は今はまだ気づいていなかった香織の口からさらなる爆弾が投下されることを


「助けてもらった後、私その人に何もできなくて」

「なるほど、香織さんはその男の子に何かお礼がしたいのですね」

「そうなんだけどまた会えるか分からないし」

「その彼の特徴は何か覚えていますか」

「髪は黒でやや長めで、顔はさわやかでかっこよかった」

「珍しいね、かおりんが男の子をかっこいいって言うの」


(聞き間違えか?今俺かっこいいて言われた?いやいや気のせい気のせい、俺なんてどこにでも転がっているモブAなのだから)


「そ、そうかな?あと、どこかで見覚えがあるんだよね」


(ほらねどこにでもあるモブ顔だしね俺)


「どこで見たんですか」

「えっと」


 と香織がしばらく考え込んでから何か手がかりを見つけようと教室を見渡す。

 するとすっかり美少女グループの方を見て聞き入ってしまっていた。龍也のところでその視線が止まり数秒間互いに見つめあい我に返った龍也は机に顔を突っ伏して狸寝入りを決め込んだ。

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