第168話 先制攻撃は札の味?
コインが絶えず動いている。
如何やらシルキーがなにか伝えたいことがあるらしい。
グリムとフェスタの視線が注がれる中、こっくりさんの紙とコインがカタカタコロコロしている。
「シルキー、大丈夫?」
『た・め・て・す』
「ダメ? どうしてかな?」
『そ・れ・い・し・よ・う・い・つ・て・は・た・め・な・ん・て・す』
シルキーがここまで拒絶反応を起こすなんて、よっぽどのことだろう。
グリムはやはりと言うべきか、関係があると読む。
とは言え、どう言った関係なのか。ここまでの反応を見るに、相当嫌な思い出があるのだろう。
「シルキー、さっきのスケルトンって、誰?」
『そ・れ・は・そ・の・……』
「覚えて無いの?」
『そ・れ・は・せ・つ・た・い・に・あ・り・え・ま・せ・ん。わ・た・し・は、わ・た・し・の・か・そ・く・は、あ・の・か・た・と・は・い・ん・ね・ん・の・よ・う・な・も・の・か・あ・り・ま・す・か・ら』
「因縁? なーんか嫌だなー」
因縁と言うものは、かなり根深い。
シルキーとあのスケルトンの間で、なにがあったのかは知らない。
それでもグリム達の中に不穏な気配が立ち込めると、この空気を一変させようとする。
「シルキー、それならどうしたらいいの?」
『そ・れ・は……』
「分からないよね。だったら試せることを試すしかないよね? フェスタとDはどうしたい?」
「ここで私達の意見を訊くのー? うーん、埒も明かないし、行くしかないかな、ってね」
「わ、私も、言った方がいい気がします」
ここはフェスタとDの意見も参考にする。
すると二人共グリムと同意見らしい。
そのせいだろうか、シルキーは劣勢になる。
「だってさ、シルキーはどうしたい?」
『せ・つ・た・い・に・た・め・て・す! い・け・は・み・な・さ・ん・も・お・な・し・め・に・あ・つ・て・し・ま・う・か・も・し・れ・ま・せ・ん』
「ん?」
グリムは引っかかった。
あまりにも具体的な言葉には、シルキーの記憶が関係している。
とは言え、記憶が完全に戻っている訳では無いのだろう。
自分でも反射的な言葉を文字として浮かべただけで、ずっと震えていた。
本気でグリム達を心配しているので、言葉を大事に受け取った。
「ありがとうシルキー。想いは伝わったよ」
『そ・れ・な・ら……』
「だけど、私は行くよ。少なくとも私はね」
『え?』
「ここは逃げられない地下室だよ。となれば、行くしか選択肢は無い。でしょ?」
ここは“行くしかない”。装選択肢なんて残ってない。
相手がどんなモンスターでもNPCの成れの果てでも気にはしない。
グリム達には扉の先に行く権利が残っていた。
「フェスタ、D、全員で行くよ」
「「はーい」はい」
「せーのっ!」
グリム達は力を合わせて扉を引く。
だけどいくら力を加えようが、扉はビクともしない。
完全にくっ付いている。接着剤でも無い、ましてや木の板で閂がされている訳でも無い。
とにかく固く閉ざされていて、グリム達は疲労だけが溜まる。
「はぁー、ダメだね。私達の物理じゃ開けられないのかもね」
「そんなー」
「ううっ、どうしたら……」
グリム達は苦い顔を浮かべる。
フェスタは腕をダラーンとしてお手上げになり、Dも辛そうだ。
そんな表情が濃くなるせいか、シルキーは空気で壁を叩き付けた。
ドン!
「シルキーさん?」
『こ・の・と・ひ・ら・は・わ・た・し・と・に・た・ち・か・ら・か・な・か・れ・て・い・る・み・た・い・て・す・の・て、わ・た・し・な・ら・あ・け・ら・れ・る・は・す・て・す・よ』
「シルキーと似た力? ってことは、やっぱり……」
理解したくは無いが、グリムの思考回路が素早く理解を示した。
つまりさっき見たスケルトンの正体はやっぱりとしか言えない。
相手が悪い中、シルキーなら開けられるのは如何いうことか?
一体なにが働いているのか知らないが、ここは開けてもらうしかない。
「それじゃあシルキー、開けて貰っていいかな?」
ガチャッ!
木の扉が開く音がした。
その瞬間、青い炎が内側から漏れる。
一体何が行われているのかは分からないが、ここから先は別世界だと伝わる。
『あ・き・ま・し・た・よ』
「そうだね、ありがとう、シルキー」
「サンキュー、シルキー」
『ほ・ん・と・う・に・い・か・れ・る・ん・て・す・か?』
「もちろんです。私も本当は怖いですけど、皆さんと一緒なら怖くないです!」
『て・い・さ・ん。き・を・つ・け・て・く・た・さ・い・ね』
「「「うん」」」
シルキーにこれ以上心配を掛けさせるわけにはいかない。
グリム達は扉の向こうへと行く。
一体何が待ち構えているのか分からないが、扉を開いた瞬間、青い炎の形跡は無く、ただの真っ暗闇が広がっていた。
「なにも無い?」
「そう、みたいですね」
「うーん、期待して損しちゃったかなー?」
「フェスタ、不謹慎だよ。警戒は怠ってはいけないから……ねっ」
グリムが警戒しながら一歩前に出た。
すると靴の爪先が何か触れる。
クシャッとなると、床から剥がれ、その瞬間正体を現した。
「お札? うわぁぁぁぁぁ!?」
床に貼り付けられていたのはお札だ。
靴の爪先に剥がされると、突然青く燃えだした。
強力な炎を出し、剥がした相手を襲うように、青い炎が広がると、グリムの体を包み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます