第128話 六日目はバトル三昧2

「おんりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 フェスタは大剣を振り上げて、襲って来た敵を叩く。

 相手は細身の剣を二本構えた少女。

 双剣少女は振り下ろされた大剣を目の当たりにすると、素早くターンした。


「それっ!」

「うわぁ、そう来るの!?」


 双剣少女は剣を一本フェスタに叩き込もうとした。

 脇腹目掛けて打ち込もうとするが、これを喰らえばフェスタは大ダメージ確定だ。

 そんな真似はしたくない。フェスタもくの字に無理やり体を折ると、双剣のことを貫こうとした剣を翻す。


「まだまだ、D!」

「はい! 【光属性魔法(小):ライト】!」


 フェスタはDに指示を出す。

 奇襲が合ったので少し離れた位置で隠れていたDだったが、合図が合ったので顔を出すと、双剣目掛けて攻撃する。

 もちろんダメージは無い。単なる光だけど、上手く視界を奪うことはできた。


「うわぁ、眩しい!」

「隙有り!」


 双剣はあまりの眩しさに目元を覆った。

 視界を完全に奪い取ると、フェスタの大剣が強襲する。

 一撃で叩きのめす。その気満々で振り下ろしていた。


 パシュン!


 何処かからか不穏な音が木霊する。

 空気を切り裂き、耳元を劈くと、フェスタの意識が一瞬持って行かれる。

 目の前には鋭い矢。高速でフェスタのことを狙うと、肩をグサリと貫き、一応ゲーム性の痛みと共にHPを削った。


「痛っぁ!?」


 フェスタは攻撃を中断した。いいや、させられてしまった。

 肩を貫かれ、身を翻してしまうと、双剣は素早くその場を下がる。

 一端の無事を確認すると、双剣は近くの小高い崖に視線を飛ばす。


「遅い、タイミング測りすぎ」

「ごめん。でも、ちゃんと撃ったから」

「うーん、まあそうだけど……かまぼこ。私の援護をして、多分あいつは負けてるから」

「分かった、フェロン。生姜太郎の分まで頑張ろう」


 双剣ことフェロンとボウガン少女ことかまぼこはフェスタとDを目の前にして、全く奥さなかった。加えて攻撃の手を苛烈させると、素早くフェロンが前に出ると、かまぼこは合図に合わせて矢を放つと、邪魔なフェスタを狙った。


 バシュンバシュン!


 鋭い鋼鉄の矢がフェスタのことを襲う。

 大剣を盾のように構えて身を守ると、撃ち落とされた矢が地面に転がる。

 その間でフェロンは距離を詰めると、双剣で×を作りフェスタを狙った。


「【火属性魔法(小):ファイア】!」


 フェロンの双剣から炎が出た。軽く振るだけで熱を帯び、燃え盛る剣で襲い来る。

 このまま切られると火傷ダメージも入る。

 フェスタは恐れを見せながら、攻撃を素早く大剣で防ごうとした。


「待って待って! 私のスキルじゃ攻撃できないんだけどー」

「それは自分自身の育成方針の問題でしょ! 私はちゃんと攻撃スキルで育ててるのっ!」


 フェロンは大剣を踏み台にして飛び上がる。

フェスタのことを一撃切り裂くと、HPを半分削った。


「ぐはっ!?」


 痛みが走り、フェスタは苦汁を舐める。

 攻撃を受けたことで体勢も崩されると、重たい大剣を抱えきれない。

 完全に油断、否、自分の育て方の差で窮地に陥ると、もう一本の余った剣が襲い掛かりそうになる。


「やっば……これ、負けるよねー?」

「負けを認めた時点で、貴方は負けているのよ! それっ!」


 剣が振り下ろされた。脇腹から引き裂かれ、ダメージ必死で負ける未来が見えた。

 フェスタは最後の瞬間まで抗おうとするも、一手遅い。

 先に攻撃の手が迫り、フェスタは負けを確信した。その時だった。


「《運命の腕輪》、モード:防御!」


 Dを中心に、周囲全体を光が覆った。

 巨大なバリアが展開すると、フェスタのことを包み込む。

 すると失われ掛けていたフェスタのHPが削れることはなく、代わりに一手遅かったはずのフェスタの大剣がフェロンの首筋を狙って捌かれた。


「嘘っ!? そんなスキル、聞いてない!」


 フェロンは双剣で防ごうとする。しかし大剣の重みに腕が持って行かれると、簡単に弾かれてしまった。

 逃げられる間合いでもない。完全に内側へと閉じ込められると、フェロンの首に大剣が触れた。


「フェロン!」


 かまぼこはボウガンの矢を撃つと、フェロンのことを助けようとする。

 しかし巨大な光のバリアに阻まれると、攻撃が全く通らない。

 矢だけが地面にポロポロ力無く落とされると、奥歯を噛みながら悔しい思いをした。


「私達のスキルの方が強いんだよねー。ごめんね」

「スキルの差で負けるなんて……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ……」


 フェロンの首に大剣が触れた。こと切れた人形のようにパタリとなる。

 全身が光の粒子に変化すると、ポツポツと消えて行く。


 まずは一人を倒した。もう一人は小高い崖の上。

 このまま二人して迫れば、ボウガンなんて怖くない。

 遠距離攻撃を防げばいいと思いつつ、かまぼこのことを視線無く睨もうとした。


「それじゃあ倒しに行こっか……」

「あ、あの……フェスタさん、かまぼこさんでしたっけ? もういませんよ」

「はっ!?」


 フェスタが小高い崖に視線を預けると、かまぼこの姿は無くなっていた。

 忽然と姿を消している。音も気配も存在せず、フェロンがやられた時点で身に染みて逃げたらしい。正しい選択。フェスタもDも深追いをしないかまぼこに賛同する。


「逃げられちゃったなー」

「そうですね。ですが私は戦わなくてホッとしています」

「だねー。私もさ、弱い者いじめとか負けが確定した相手を倒すのは気が引けるもんねー。とは言いつつ、私の方がピンチだったけど……」

「そ、そうですね。で、でも勝ちましたよ!」

「Dのおかげだよ、ありがとう。イェイ!」

「は、はい!」


 フェスタはDとハイタッチをしたかった。

 言葉と仕草で合図を出すと、Dも戸惑いながらハイタッチをする。

 とりあえず二人して無事に勝つことができた。けれどあくまでも運とスキルに助けられただけだと、フェスタもDも痛感した。

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