第32話 一撃粉砕でスライム退治
グリムとフェスタは早速最初の街フォンスを出た。
向かったのは一番近くにある初心者向けエリア。
そこは森で、グリムもかなりお世話になっていた。
「うわぁ、結構人多いねー」
「ここは定番の狩場だからね。だけどもう少し奥まで行けば、プレイヤーも減るはずだよ」
「そりゃそうだろうけど……って、嘘!?」
グリムは周りのプレイヤーには目もくれず、ドカドカと森の奥を目指した。
そんなグリムの腕を掴むと、フェスタは困惑した。
「ちょっと何処行こうとしてんの?」
「何処って、森の奥だけど?」
「それは見てれば分かるって。そうじゃなくて、如何して森の奥に行くのかって話。こう言うゲームだと、定番的に奥に行けば行く程モンスターのレベルも上がって危険度が増すものなんだけど?」
それは知っている。だけどここで他のプレイヤーに混じってレベル上げをするのはあまりにも効率が悪すぎる。
狩場の独占はプレイヤー間同士で暗黙の了解として禁止されているが、集まり過ぎると次にリポップするまで時間も掛かってしまう。
だからこそ、危険を冒してでも森の奥に行く価値はある。
むしろフェスタなら乗って来ると思ったのだが、グリムは不思議に思った。
「あっ、もしかしてフェスタ怖いとか?」
ちょっとだけグリムは茶化してみた。
するとフェスタは腰に手を当てて溜息を吐く。
「はぁー、そうじゃなくてだねーグリム君」
「グリム、君?」
「レベル1の私に倒せるのかって話。流石にレベル差はモンスターとの戦闘だと決定的だよ?」
フェスタはちゃんとした理由を持っていた。
たしかにモンスターとの戦闘はプレイヤーとは大きく異なり、ちゃんとレベル差が響くこともある。だけどグリムは上手く行ったので行けると思った。
それに何よりフェスタなら行ける確証もある。
「もしかして弱音?」
「そんな訳ないっての! それじゃあ行くぞー!」
「いつものフェスタらしくなって良かったよ」
あえて挑発的な言葉を選んだ。
するとフェスタの魂に灯が灯り、一緒に森の奥まで向かう。
その様子に他のプレイヤー達は目もくれなかったが、フェスタの馬鹿デカい声だけが響いていた。
森の奥までやって来ると、他のプレイヤー達の声は聴こえなくなった。
それもそのはず、周囲にはグリムとフェスタ意外に誰も居ない。
完全に孤立してしまうと、周囲の草木が揺れる音だけが不気味に笑った。
「うおっ、ゾクゾクして来たね」
「そうだね。それにしてもフェスタやけに楽しんでる?」
「うん。こう、何が出て来るか分からないドキドキ感が溜まんないっての!」
「気楽だね。だけどここは森の奥、油断したら一瞬で街まで逆戻りだよ?」
「死んだらログアウトだもんねー。気を付けるよ」
そうは言いつつフェスタは楽しそうに足踏みをする。
すると近くの草むらがガサガサと揺れ始めた。
グリムは立ち止まり視線を飛ばす。フェスタも緊張感が漂う中、武器を取り出した。
「さぁ、来るなら来い! いつでもいいよ」
フェスタが大剣を装備して待ち構えていると、青いプルプルしたモンスターが飛び出してきた。見た目が完全にゼリー、定番もど定番スライムだった。
あまりにも王道過ぎるモンスターに興醒めしたのかなと思ったグリムだが、フェスタはニヤニヤして笑みを浮かべる。
「マジ!? 最初スライムじゃんかー」
「行けるフェスタ? 手を貸そうか?」
「いいよいいよ。これくらい倒せなくて如何すんのさ」
フェスタはスライムが近付いて来ると大剣を振り下ろした。
振る動作だけで判った。絶対に重たい。
重量感がある動作にグリムは目を丸くしたが、スライムは簡単に避けてしまった。
「プギュゥ!」
「ありゃぁ?」
フェスタはスライムに躱されるなんて思わなかったらしい。
拍子抜けしたフェスタだが、頬を一旦ポリポリ掻くと、再び大剣をヒョイっと持ち上げると構えた。
腰を落とし、膝も曲げる。スライム目掛けて大剣を振り下ろすもまたしても避けられた。
「ありゃりゃ?」
「フェスタ、大剣を振るだけじゃモンスターは倒せないよ。ここはゲームはゲームでも、VRなんだから」
「あっ、そっか。忘れてたよ」
フェスタに良い感じのアドバイスをしたグリム。
これで少しはマシになるかもと思い何をするのか見てみると、ヒョイと大剣を持ち上げて再び構え直した。
それからスライムを見つめると、大剣をズドン! と振り下ろした。今度は大剣の重みを利用した攻撃だ。さっきよりも格段に斬撃速度は速くて上手くヒットした。
「プギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
スライムは大絶叫を上げて散り散りに飛び散ってしまった。
傍から見ているとあまりにもグロい光景。
グリムは自分がやっていたことを目の当たりにしてしまうが、考えないことにした。
(倒さないとレベル上がらないもんね。とは言えスライムは悪くないけど……ごめん)
消滅したスライムに謝った。
しかし倒した張本人は満足しているようで、ニパッと良い笑みを浮かべた。
「やった、倒したよ!」
「おめでとう。良い感じに武器を自分のものにしてたね」
「ありがと。よーし、この調子で頑張るぞ!」
フェスタは腕を天高く突き上げた。
よっぽど高揚感に浸っているようで、アドレナリンどっぱどぱだ。
「フェスタ、ちゃんと休憩しないとね。それから周りもちゃんと見るよ」
「分かっているって。それに私、攻撃をまともに喰らう気ないんだよー」
「それはなんとなくあのステータスを見たらね」
フェスタは次のモンスターを探しに向かう。
付き添うグリムも適宜参戦して連携を確かめ合いながら、楽しいパーティー活動を噛み締めた。
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【あとがき】
フェスタはパワータイプなので、大剣をガンガン振り回します。豪快でカッコいいと思ってもらえれば嬉しいです。
今日からのカクヨムコン頑張ります。
とりあえず一月末までは毎日投稿頑張ります。
★や感想・ブックマークして待っていてくれると嬉しいです。
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