第19話 対人戦イベント開始(ソロ)
さて、いよいよ今日だ。
グリムは初めての対人戦イベントにワクワクしていた。
早速イベントに参加しようと思いメニューを開く。
その中で一際目立つイベントの欄が爛々と点滅していた。
「おっ、参加できそう」
グリムはタッチした。するとイベントバーが開き、大きめの画面で表示される。
そこには〔第三回対人戦イベント開催!〕と書かれている。
剣が二本交差してぶつかり合うイラストが使われていて、バトルすることを物語っていた。
「結構しっかりとしたマーク。しかも説明や規約も長っ!」
下の方には今回のイベントの説明や規約、更にはルールなどが原則として記載されている。
グリムはそれらをしっかりと確認した。
とりあえずルール自体はかなりシンプルで、イベントに参加しているプレイヤー同士で行う対人戦イベント。期間は三日間。その間にイベントに参加しているプレイヤー同士で指定されたエリア内を駆け回り、戦い合うとのことだった。
チームを組むのも良し、乱戦、割り込みも自由。とにかく敵プレイヤーを討伐した本人にポイントが入り、最終的に一番多くのプレイヤーを倒しポイント合計を稼いだ人の優勝とのことだった。かなりシンプルで分かりやすく、プレイヤー同士での勝負とのことなので、レベル差がある程度あったとしても何とかなりそうな所が初心者にもまだ優しかった。
「よし、参加っと」
確認を終えたグリムは参加を表明した。
参加にタッチすると、グリムの頭上にピンが立つ。
それを見ていた他のプレイヤー達の視線が一斉に集まった。
小声だったが、あまりよろしくない言葉が聴こえる。
「おっ、アイツイベントに参加するのか」
「格好のカモだな」
「初心者狩りはダメだが……まあ、いいか」
「ポイント稼ぎのためだ。早速イベントが開始したらやるぞ」
男性プレイヤー達の声が耳障りだった。
グリムは心の奥底で、負けられないなと思った。
流石にやる気のメソッドが上がり、グリムは拳を握った。
「まあいいや。イベントに参加しているんだったら、何処かで当たるでしょ。その時は……その時」
白い髪と赤い目のせいで若干怖さに磨きがかかった。
不敵な笑みを浮かべると、イベント開始時刻、リアルタイムの昼の十二時を待つ。
刻一刻と時を刻んでいくこの心地よさがたまらない。心臓の鼓動が馳せる中、イベントは開始されるのだった。
気が付くとイベントが始まっていた。
如何やらイベントに参加しているプレイヤー達は、イベント開始時刻になるとエリア内にランダムに転移させられるらしい。
それもそうだ。その場で始まったらすぐに戦闘になってしまい、関係のない他のプレイヤー達にも被害が出る。
ちなみにイベント開催中は本来存在するマップの中に特別に用意されたエリアが出現する。その中でのみ、イベントにおけるポイントの有無が発生する仕組みだ。つまりイベントに参加しているプレイヤー達はエリア内が基本的に活動の範囲になる。
エリア外に出ている場合はイベントに参加している判定にはならず、仮に外から間違って入ってきてしまった他のプレイヤーを倒した場合はポイントマイナスになってしまう。
けれど意図的な妨害行為の場合はイベント参加中の場合強制リタイア、そうでない場合にはペナルティが発生するようになっていた。
更にエリア外で戦闘を行い倒した場合はポイントが発生しないなどの縛りもある。
そのため最初のエリア決めはかなり重要なのだ。ここがエリアのどの部分にあたるのかによって、戦略や駆け引きに非常に影響する。
なのでここは何処かと周囲を見回したグリムが居た場所はかなりの悪条件だった。
「ここは……森かな」
正直森はハズレの部類に入ってしまう。
自分が何処に居るのか相手に悟られないのは良いのだが、その分相手に不意打ちをされると対処が難しい。
隠れるのには適しているが、イベントはまだ始まったばかり。
他のプレイヤーと接敵したいのに、これだと探すのが困難になってしまいかなーり面倒だった。
「まあいっか。考えても始まらないよね」
グリムは状況確認も済んだ所で、森の中を散策する。
幸いなことにグリムがイベントに参加していることは、ある程度のプレイヤーにバレてしまった。このチャンスを逃す手は無いと思い、ほぼ無防備な状態で歩いていた。
すると案の定、草むらの影からガサゴソと音が聴こえた。
振り返ってみると、そこから槍が飛び出した。
「そこだ!」
早速仕掛けてきた。グリムは間一髪の所で後ろに飛んで槍の直撃を回避する。
それに苦汁を舐めたのか、草むらの中から聴こえた男性の声が「外したか」と舌打ちをする。
「危ない危ない。でももう見えた」
男性は草むらの中に消え姿を現さない。
如何やら初撃を躱されたので観念して逃げ出したらしい。
けれどグリムに逃がす気は無かった。スキル【観察眼】を発動し、草むらの中をひっそりと移動する槍使いの男性を見つける。
「見ぃつけた」
グリムは素早く移動して、草むらの中に飛び込む。
〈死神の外套〉の内側に隠してあった〈死神の大鎌〉を取り出すと、無慈悲に草むらの中に振り下ろした。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
男性の断末魔が響いた。
グリムは何も言わず大鎌を押し込み、引き抜いて回収した。
何かに触れる感触はしない。しかし粒子が飛び散り、男性は跡形もなく消滅した。
代わりにカウントが一つ進む。如何やらポイントが入ったらしい。
「まずは一人。この調子でドンドン行こう」
グリムは大鎌を回収し、再び外套の中に隠す。
それから何事もなかったかのように、次のプレイヤーを探して歩き始めるのだった。
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