第23話
休憩をとった後、彼らは最初の十字路は直進し、2つ目の十字路を左に曲がって進み出した。そして5時間後彼らは最初と同じ様に右側から戻ってきた。十字路に立つと左手の先に降りてきた階段が見えている。
「振り出しに戻ってきたな」
ある程度予想はできていたので全員に落胆の色はない。
45層で10時間以上いたこともありこの日の攻略はこれで終了とした。薄暗い変化のない洞窟を歩きながら魔獣を倒して進んでいく。魔獣の討伐自体は難易度は高くないが変わらない景色、先が見えないというのは精神的にダメージを与えられる。
一旦地上に戻ると宿の食堂で4人で打ち合わせをする。ドロシーらの姿は見えない。ダンジョンで野営をしている可能性がある。彼らもトップクラスの冒険者達だ、滅多なことにはならないだろうとここにいる全員が思っている。食事を終えて食器が引かれたテーブルにはローリーが作成した地図が広げられていた。
「今日歩いたルートはこうなってる」
その地図を見る限り1回目に歩いたルートと2回目に歩いたルートは全く重なっていない。
「最初歩いた時に途中で右に直角に曲がっていたよな。それは2回目歩いたルートと繋がっていないのか?」
地図を見ていたマーカスが言った。そうなんだよとローリー。彼は3人の顔を見ながら言葉を続ける。
「いいか。もし1回目の時の右に曲がった直角のルートと2回目が重なっていたとしたらそこは当然十字路になっているはずだ。2回目の俺たちはその十字路を左に曲がってから直角に曲がってあることになる、これは1回目のルートとは反対の壁を歩いている。つまり1回目に出発したときと逆行して歩いているから階段は右手に見えるはずなんだ。だが見えたのは左側だっただろう?」
3人は頭の中でローリーの言葉を整理し理解するとなるほどと声を上げた。
「最初の十字路と2回目の十字路はダミー、ギミックの可能性が高いな」
「ランディの言うとりだ。少なくとも階段から降りた先にあるこの2つの十字路は曲がらずに直進する必要があるということになる」
左に向かって歩いていると右から戻ってきた。地獄のダンジョンの45層だ、常識じゃ考えられないギミックが散りばめられているであろうと全員が理解している。
「皆で何か違和感、ヒントを探そう。45層がノーヒントはあり得ないからな」
「移動している間に何度か敵を倒しただろう?あの倒し方におかしな点は無かったのかい?残念ながら俺は気づいていないんだけど」
ジュースを飲んでいたランディが言ってハンクとマーカスにどうだと聞くが彼らも特に何も感じなかったという。ランクSの敵は皆同じ種類で同じ種族だった。外見も全て同じ。ローリーも戦闘の場所や倒した敵を思い出すが違和感を感じることはできなかった。自分も違和感を感じられてないと言ったローリーが続けて言った。
「いずれにしてもだ、このダンジョンもボス層は50層だろう。ここ45層からは最深部中の最深部となる。何があってもおかしくないし、何も無いはずがない。45層は今の所的のレベルはSランクだがSSランクが出てきてもおかしくないフロアだ。ヒントを探すのと同時に戦闘も今まで以上に気合を入れていこう」
明日は休養日としてその翌日の攻略では今度はひたすら真っ直ぐに進んでみようということになった。進んで行った先が突き当たりならその時に左か右かあるいは戻るか、その場で判断することになる。
休養日明け、今回は階段を降りた通路を真っすぐに進みだした。ループ状になっている最初と次の十字路を真っすぐに進んでいくと薄暗い通路の先に再び十字路が現れてきた。と同時に敵も出現してくる。ランクは相変わらずSランクで2体程が狭い通路に固まっている。今までの敵と同じだ。十字路の中央にいた2体を倒して奥に進むと再び十字路と魔獣が現れた。ランクS2体をさっくりと倒した4人はさらに真っすぐ進むと暫くすると通路の突き当りにぶつかる。
そこはT字になっている突き当りなのだが実際は左右に伸びている通路とは別に奥にも3メートル程通路が伸びていてその先は土の壁で行き止まりになっていた。そしてその3メートルの奥に伸びている通路の床には床の広さ一杯の流砂渦が渦を巻いているのが
見えた。
「ここに流砂渦があるってことはこの場所で休憩をさせない嫌がらせだろうな」
渦を巻いている流砂を見てランディが言う。渦は結構な勢いがあり万が一はまると抜け出せないのは明らかだ。
「そうだろう。嫌らしい造りだよな」
ランディの言葉に同意する様にハンクが言った。ローリーは黙って渦を巻いている流砂を見ている。
「左に真っすぐ進むが構わないかい?」
ランディの言葉で顔を上げたローリー。それで行こうと言うと4人が突き当りを左に曲がって進み始めた。薄暗い洞窟を進み敵を倒していると十字路にぶつかるがそれをひたすら直進する4人。相変わらず景色が全く変わらない何の変哲もない洞窟の中を進んでいくのは精神的に堪える。その間にランクSの複数体との戦闘をこなして真っすぐに進むこと5時間程で彼らはT字状になって奥に流砂の渦がある場所に着いた。
「ここでも戻ってきてしまった。一体どうなってるんだ」
左に進むと右から戻ってきた。ここもシームレス、ループ状になっているんだなとランディが言った。ハンクとマーカスも言葉には出さないがここも同じだったかと言った表情をしている。
「いや、ここはさっきの場所とは違うぞ」
突き当りにある渦を見ていたローリーが顔を上げて言った。
「「何だって!」」
3人が同時に声を出す。ローリーはここは違う場所だともう一度言ってから奥の流砂の渦に顔を向けると言った。
「さっきはこの渦は右回りだったんだ。今は左回りの渦だ。渦の周り方がさっきの場所とは違っている」
その言葉に全員が流砂渦を見る。
「本当かよ。渦がどっち方向に周っているなんて全く気にしてなかったぞ」
周っている流砂を見たままマーカスが言うとハンクとランディも俺もだと言う。
「俺は注意して見ていたから間違いない。正解かどうかはまだ分からないが振り出しに戻ってきていない事ははっきりと言える」
そして十字路のそれぞれの通路を見て敵影が無いのを確認するとこの場で休憩しようと提案した。
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