第5話 <リゼ>
「アン、ドロシーらのパーティがギルドに来たら会議室に連れてきてくれ、彼女らに話がある」
わかりましたと秘書のアンがギルマスの執務室から出ていくとリゼのギルドマスターのダニエルは執務机の上に置かれている手紙を手に取ると読み始めた。と言ってももうすでに何度も読んだ手紙だ。
「…本当に存在したのか…」
1人で呟き、一旦手紙を机の端に置いて他の書類に目を通していくダニエル。そうやって仕事をしているとアンが開いている扉をノックして顔を出した。
「ドロシーさんらが戻ってきたので会議室にお通ししました」
「わかった。すぐにいく。アンも来てくれ」
ダニエルはアンを従えてギルドの中にある会議室に入るとそこには外からリゼの街に戻ってきたばかりのドロシーをはじめとする5人の女性達が座っていた。
「疲れているところを悪いな」
大丈夫よというドロシーの言葉を聞いたダニエルはいきなり核心の話をする。
「ネフドにいるローリーから手紙がきた。ランディが生き返ったらしい」
「!!!」
ギルマスの言葉にその場にいた全員の目が見開いた。
「……やっぱりあの小瓶は蘇生アイテムだったんだね」
しばらくの沈黙の後でドロシーが言った。その通りだとダニエル。
「ローリーからの手紙によるとネフドの鑑定士を尋ねてあの小瓶を見せたら間違いなく蘇生アイテムだと言われたと書いてある。蘇生条件は死んでから1時間以内にあの小瓶の液体を全て体に注ぐことだそうだ。1時間を超えていると効果は無いらしい。又あの小瓶の量では2人は同時に蘇生できず小瓶で1人分だそうだ。それでローリーは龍峰のダンジョンのボスを倒した時に2つと無い盾が出た事からまずはあのパーティのリーダーであったランディを蘇生させたと書いてある。ランディは死ぬ前と全く変わっていなそうだ。当人によると長く寝ていた感覚だと言っているらしい」
「よかった」
ギルマスの話を聞いていた僧侶のルイーズが涙を流しながら言った。他のメンバーも同じ様に涙を流して良かったねと言い合っている。収納魔法を会得しているローリーだから仲間を蘇生させることができた。
「手紙はそれだけで終わっていない」
そう言うと全員の目が再びギルマスに向いた。
「ローリーとランディの2人はその後ネフドから船で対岸のクイーバの大森林に出向いてそこでエルフと出会い、エルフの手助けをしたらしい」
その言葉で再び彼女らが驚愕した表情になる。
「本当にいたのね、エルフが」
その言葉にその様だというダニエル。2人がエルフの森に言ってそこの長老にあった時に頼まれごとをされて手助けをしたと言う話を始めると全員がダニエルの持っている手紙に注目する。
「この手紙によるとエルフの村の近くに高ランクの魔獣が居着いてエルフでも討伐できなかったらしい。ローリーとランディが出向いてそいつを倒すとその近くにできたばかりのダンジョンがあった。そして2人はそのダンジョンに潜ってボスを倒してダンジョンの核を破壊している」
驚きで声がでない彼女らを見ながら話を続けるギルマス。
「ボスを倒した時に金貨や魔石、片手剣が出てそれ以外に何かの実が2つ出たらしい。それをエルフの村に持って帰るとそこの長老がこれはスキルアップの実だと言ったので実をそのまま長老に渡すとそれを飲んだ長老の鑑定スキルが2段階上がったそうだ」
「スキルアップの実も幻のアイテムと言われている一つよ」
ケイトが言うとその通りだ。これも噂だけで存在しないと言われていたアイテムだが実際にそれが出たらしいんだよと答えるギルマス。
「それでだ。そのスキルアップしたエルフの長老によると村にある世界樹の一部の葉から
落ちる水滴に蘇生する成分があることがわかったそうだ。一度にわずか数滴しか取れないがエルフはそれをコップ1杯分、つまり1人を蘇生する分量にするまで責任を持って集めると2人に約束したらしいぞ」
最初から聞いているドロシーは驚きを通り越して感動していた。噂でしかなかったアイテムを確認するために1人で砂漠を超えてネフドの街にいったかと思えば鑑定士を見つけてランディを生き返らせ、そして次はエルフだ。誰も見た事も会ったこともないと言われているエルフに会うどころか彼らの村まで出向いて魔獣を倒したかと思えば蘇生アイテムをもらう約束まで取り付けてくる。
ローリーはなんと言う男なんだろうと感動するドロシー。
「水滴を少しずつ集めるので半年か1年かわからないがそれでも構わないとエルフにお願いして森からネフドに戻ってきた2人はそのネフドの街でツバル島嶼国所属のランクAの忍2名と知り合い、これからツバルに出向いて火のダンジョンに挑戦してくると書いてある。手紙の内容はここまでだ」
そう言ってローリーの手紙をドロシーらの前に置いた。ドロシーが初めに読みその後全員がローリーの手紙を読んだ。手紙の最後にはリゼで世話になっているドロシーらのパーティメンバーにはギルマスからきちんと状況を説明しておいてくれと書いてある。
「普通ならダンジョンの核を破壊することはあり得ない。ただエルフらにはダンジョンは無用の長物。村の近くに発生したダンジョンを破壊してくれて感謝されたと書いてあるわね」
涙を流しながら手紙を読んでいたカリンが言った。
「適切な判断をしたからエルフもローリーとランディに協力したんでしょう」
「ドロシーの言う通りだ。エルフの森なんて誰も行ったことがないし、まずどこにあるのかも誰も知らない。彼らのエリアのことに関してまで我々のルールを押し付ける気はない。しかもエルフから感謝されている。そのダンジョンの核の破壊は全く問題がないな」
ギルマスのダニエルが言った。
「そして次はツバル島嶼国か」
「その忍とどうやって知り合ったかまでは書いてないがあの2人はランクSだ。向こうから声をかけてきた可能性もあるな」
「いずれにしてもツバルにある火のダンジョンに挑戦するってことね」
ドロシーの言葉に頷くギルマス。
「暫くはリゼに戻ってこないだろう。ランディは蘇生して今は2人で一緒に動いている。ギルドとしてはランディのパーティについては周囲には一才何も言っていない。元々あいつらは1年とかそれ以上の間普通に街を不在にしていたからな。お前さん達だけには言っておく。他言無用で頼むぞ」
その言葉に当然よ。と頷くドロシーら5人。
礼を言ってギルドを出た5人は市内のレストランの個室に入った。
「ローリーの執念が身を結んでいるわね」
食事を頼んだ後でケイトが言うとカリンが続けて言った。
「本当ね。彼はあの個性の強いメンバーが集まっているパーティのまとめ役だったし何より仲間想いよ」
「火のダンジョンでもボスを倒して蘇生アイテムが出るといいわね」
2人に続けてシモーヌが言った言葉に頷く他の4人。
「ローリーならやると思ってたしこれからもやるでしょう。私達にはすぐにできることはないけどもし彼らが一旦帰ってきたら話をしましょう。何か間接的にでも手伝えることがあるかも知れないから。彼らは大事な仲間だしね」
ドロシーが言うとそうしようと皆で頷き合った。
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