ある主婦の不安

進藤 進

第1話 週末の不安

「トゥルゥ・・トゥルゥ・・・」

アニメでの効果音のように電話が鳴った。


つ●ぎの細い喉が微かに上下する。


「トゥルゥ・・トゥルゥ・・・」

直ぐには切れない音が、せかすように続いていく。


「トゥルゥ・・トゥルゥ・・・」

尚も音は鳴り続ける。


いい加減に出ろよ、お前。

・・・と、電話に言われているようで。


つ●ぎは、恐る恐る受話器に手を伸ばした。


※※※※※※※※※※※※※※※


それは、無理もない事だった。

今日は何年かぶりの仕事始めの日だった。


正確に記すれば。

彼女は毎日、農作業と家族の食事の支度、家事をこなしていた。


忙しい合間をぬって、カク●ムにも投稿して。

マルチな「スーパー主婦」だったの、だった。


そんな普段でも忙しい彼女が。

普段、通っている内科の先生に頼まれて。


電話番の仕事を引き受けたのだ。


どうする、家康?

・・・では、なくて。


どうする、つ●ぎ?

・・・と、自問自答するほどのプレッシャーを感じていた。


果たして、自分に仕事が務まるのだろうか?

仕事を辞めて「完全主婦」になって二年以上にもなる。


標準語は?

ちゃんと使えるのだろうか。


今日は金曜日。

来週の月曜日には。


「はい、●●医院でございまぁす・・・」

などと、アニメの「ざぁます奥様」のように気取った声をださなければならない。


いやいやいや。

今時、ないって・・・。


と、いう。

読者のツッコミも聞こえないほどに。


つ●ぎは不安に肩を震わせているのだ。


果たして。

つ●ぎの初仕事は無事に終わるのだろうか。


何か、良からぬ予感がする。


今夜の献立はやはり、ゴーヤにすべきではなかったと。

少し、後悔していた。


どうする、つ●ぎ?

今からでも遅くない。


義母の大好きな「茄子のスッパ煮」に変えるべきではないか。


夕食の支度をしながら。

悩む、つ●ぎであったの、だったの、だった。

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