恋は嘘のはじまり

@kamekichi58

第1話 告白ゲーム

「はい、罰ゲームダッシュ10本!よーいスタート…………ほらほら全力でやんないと、もう10本追加するぞ!」


 他のチームメイトが綺麗な人工芝で練習している中、4人は鬼コーチの下で外周ランニングコースをひたすら全力疾走している。


「よーし!終わったら水分補給してこいー!なるべく水は飲みすぎるな!おなかにたまって気持ち悪くなるからな。口に含むくらいにしろ!」


「「「「はい!」」」」


 走っていたランニングコースから離れ、鬼コーチから声が聞こえない距離になると疲れ切った4人の内1人りがようやく口を開いた。


「あのコーチまだ俺達を走らせるきかよー!」


 文句を言っているのは、俺ら四人の中で一番身長が高い尼崎である。


「でもしょうがないだろう、ここのサッカー部県大会上位常連校なんだから俺達みたいな初心者がいきなり普通の練習に一緒にできるわけないだろ」


 尼崎に続いたのが、九重である。九重自身は元々陸上部だったらしくて、この走る練習も余裕にこなしている。さっきの練習も余裕にこなしていた。


「そんなこといってる場合かよ!俺は二年の時にはここのエースになっているからなぁみてろよお前ら!」

 次に口を開いた自信に満ち溢れているイケメンは、僕をサッカーの道に無理やり引きこんだ張本人であり、僕が教室の隅で一人悲しくいるところを声かけてくれた親友の梅田 省吾うめだ しょうごである。こいつは成績優秀、容姿端麗、運動神経抜群、どこを切り取っても完璧な男であり、若干性格は強引、傲慢、な部分があるがそれらを差し引いたとしてもこいつの周りからの評価は変わらない。


「優は、ここ1カ月くらいほぼ毎日同じメニューだけど、相変わらずびりだなぁ」


「しょ、しょうがないだろ…運動は、中学の時してなかったのに…省吾が、無理やり体験入部させたんじゃん…」


 今の練習で体力をほぼ使い切り息切れしているあまりまともに話すことができない男子学生こそが四人組最後のさえない少年である僕黒川 優くろかわ ゆうだ。平凡な高校生であるが、友達作りが苦手で教室で独りぼっちなところを省吾が話しかけてくれてボッチだけは回避することが出来た。でもまぁ、こいつの友達になったばかりにこんな強豪校のサッカー部に入部させられたんだけど


「おい!お前ら早く水飲んで戻ってこい!次はラダーやるからだれかもってこいなあ!」


 まだ、疲れてゆっくり水を飲んでいる僕たちをせかす声がランニングコースから響きわたる。


「やべ、優近くにいるからもってこいな」


「えー……疲れてるのに…………」


 ラダーの持ち方は工夫が必要であり、それに加え地味に重い。しかし、他3人は完全に僕に任せて先に走っていってしまい、仕方なくラダーを少し地面に垂らしながら練習場所に向かった。


 それから、数時間経過して中心で練習していたメンバーはとっくに練習が終わりかえってしまっていた。それに対して僕たちはようやくランメニューが終わり、ラダーやらコーンやらを片付けているところである。片付けが終わりようやく今日の練習が終わった。さすが学校で最も成績を上げている部活だけあって、部室は大きい。スポーツ推薦組は、僕たちのことを待つこともせずさっさと帰ってしまっていた。


 さすがに走りすぎで全員が疲れきっており広々とした部室は静寂に包まれていた。その沈黙を破ったのが、省吾であった。


「なぁ、お前ら最近気になっている子いる?」


 省吾は疲れているのもあって深刻そうな顔でみんなに質問してきたが内容は小学生レベルであった。


「えっいきなりどうしたの省吾」


「いやさすがに入学してから1カ月くらいたったんだから一人くらいはいるだろう」


 省吾は完璧超人であるが、今まで付き合った人はいないらしい


「俺はいるぜ、クラスのさーちゃんだよ」


 最初に好きな人を告白したのは尼崎であった。


「さーちゃんて誰?」


「さーちゃんって言えば、彩花ちゃんでしょー」


「彩花ちゃん…………?あー、森さんね、たしかにかわいいよね」


 森彩花という子は、ショートカットのスポーツ少女でとてつもないくらい明るい子である。尼崎は元気な子が好きらしい。


「俺は、山本さんだなぁ、あの子かわいいよね」


 九重は顔で決めているらしい、まぁ最近の高校生はそんなもんである。


「じゃあ、そういう省吾はどうなんだよ」


「俺か、それはもう入学式の時から決まってるよ、佐々木さんだよ」


 省吾から以外な解答が出た。佐々木さんはクラスの女子の中で一番静かなグループに所属している本が好きなおしとやかな女子である。


「省吾は人気者なんだからクラス一番人気の鴻巣こうのすさんかと思ってたよ。結構クラスでも話してない?二人で」


「たしかに一番かわいいかもしれないけど、俺は見た目だけじゃなくて中身の方が大切なんだよ。絶対佐々木さん癒しでしょ。部活で疲れ切った今の体は、癒しが必要なんだよ」


 省吾は以外にも恋愛にいやしを求めているらしい


「そういう、優はどうなんだよ誰かいないのか」


「えっ僕、いないよー」


「いや、絶対にいるだろう高校生にもなって気になる子いないわけがないじゃん」


「えー、ほんといないんだよー」


「じゃあ、つきあうなら誰がいいんだよ」


「誰だろう?」


 僕は、今まで好きになった人が一人もいない。これは、恥かしがっていっているわけではなく本当にいないのだ。僕の家族は6人いる。母、父、僕、それに加え僕よりも年上の姉3人。この姉たちのせいで小さいころから女の人が怖い。しかし、ここで答えなければ空気が読めないやつ扱いされてしまう。それだけは、避けたい。小中とボッチだった僕にとっての初めての状況である。とりあえずクラス一番人気の


「じゃあ鴻巣さん」


 クラスの中で無難な女子の名前を挙げた。


「おっやっぱ、いるじゃん」


「じゃあさ、今思いついたんだけど、ゲームしない?」


 尼崎が笑いながら提案してきた。


「ゲーム?っどんなの?」


「告白ゲーム」


「なにそれ」


 尼崎がにやにやしながら


「ルールは簡単、1週間準備期間があるから、その間に今言った女の子にアピールをして準備期間が終わり次第告白するだけ、簡単でしょ」


 尼崎は、余裕でしょうみたいな顔で僕たち四人に提案してきた。


「いやいやいや!確かにルールは簡単だけど今までボッチだった人にとってはハードル高すぎるんだけど、これは、やばいでしょね、省吾、九重」


 僕が全力で否定すると、九重は


「まぁ確かに」


 九重は、僕の意見に賛成してくれたが省吾は


「俺はいいと思うよ」


 省吾も余裕の笑みで尼崎のゲームに賛成的であった。


「えっ省吾本当にいってる?」


「いや、俺もどうせいつか告白しようと思ってたからこういう機会があった方がやりやすいし」


 すると省吾が肯定的な意見を上げるとさっきまで否定していた九重も


「梅田がやるんだったら、俺もやろうかなぁ」


 このゲームに否定的な人は僕だけになってしまった。


「いいじゃん、後は優だけだぞ」


「わかったやるよ」


 僕は空気をよんで「やる」といってしまった。


「よし優もやると決めたことだし、明日から開始な!期間は一週間来週の月曜日に告白なぁ。対面で出来なければまぁしょうがない電話は許そう」


 そして告白ゲームが始まってしまった。


恋愛初心者である黒川優は、告白ゲームという名の地獄のゲームに参加しなければならなくなった。このゲームが、交わることがなかった4人の高校生の運命を複雑なものにしてしまった。

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