第4話幼馴染と二人、薄暗い場所で...



 (ウッウうう.....体が痛い....あれ...どうしてたんだっけ?、確かリサと庭で魔法の練習をして....そうだ魔法に吸い込まれたんだ)


顔を上げる。


視界には、薄暗い、端の見えない空間の中に一本の倒れた大きな木と一人の倒れた女の子がいる、

リサだ。


「リサ!リサ!大丈夫!?」


呼びかけてもリサは微動だにしない。まさか!、と思い、体を起こし、リサの元へ駆け寄るシャル。


リサの鼻のらへんに手を当てる。


(よかったあぁ、息してる)


少し経つと、シャルの気配に気づいたのか、リサが目を覚ます。


「あれ?ここは...庭じゃない!?なにこの薄暗い場所?!、確か庭でシャル君と.....そう...確かシャル君の風玉(ウィンドボール)に吸い込まれたはず,,,」



「気がついた?」


「あ、うんシャル君、無事だったんだね。良かったぁ」


リサはホッとしたのだろう胸を撫で下ろしている。


立ち上がり、再度ぐるりと周りを見渡す二人。


「ここ本当に何も無いのね」


暗闇が見える限りに、広がっている。


「そうだね」


(本当に何も無い、ここは一体、何処なんだ?)


「どうやったらここから出られるんだろう?」


リサはそう言いながら、辺りをポツポツと歩いている。


(まず状況を整理しよう、僕が風玉を放ち、それが周りのものを吸い込んだ。その証拠に庭に生えていた木がここにもある。ということは.....どういうことだ?)


この後、俺は体感20分間、ひたすら、どうやればここから出れるか考えた。

そして一つの可能性を思いついた。あの時、放った風玉の反対をすればいいのだ、と。


「リサ〜ここから出れるかもしれない方法を思いついたっ.....て、あれリサ?どこ?」


 その頃リサはというと.....散歩をしていた。


「ここほんと、何も無いなぁ。随分歩いちゃったなぁ」



 オ〜イ



何か聞こえ、音がした方を向くリサ。


「お〜いお〜い、リサ〜」


どうやらシャルがリサに近づいているようだ。


「お〜いシャルく〜ん!こっちこっち!」


「あぁいたいた、リサ、元の場所に戻れるかもしれないよ」


「え、ほんとなの!?」


「あぁ吸い込まれた時と逆の風玉を放てばいいと思うんだ」


「逆?」


キョトンと首を傾げるリサ。可愛い。


「うん、俺はあの時、何もかも吸い込む風をイメージして風玉を放った。だから今度は何もかも吐き出す風をイメージすれば良いと思うんだ」


「ナルホド?わかった!(わかってない)」


キョトンとした顔で頷く彼女。可愛い。


「じゃ、やるよ」


 今度は無詠唱で行けそうだ。感覚が鮮明に残っている。


あの手に伝わった熱さを思い出す。


そしてイメージする。何もかもを吐き出す風を。


(ウィンドボール!!)


心の中で、そう唱えた瞬間、俺たちは何かに引っ張られるかのように、この薄暗い世界から放り出されていた。




「ひゃっ///」


(何か手に柔らかいものが触れている。モミモミ、少しにぎにぎしてみるが、やはり柔らかい)


「ひゃあっ////」


(僕がモミモミするごとにリサの喘ぎ声が強まっている!?まさか....この柔らかいものは....)


時すでに遅し、その柔らかいものがリサの胸だと気づいた時には、フルスイングされたリサの右手が俺の左頬を打ち抜いていた。「ベチーン」と快音を立てながら俺の左頬は躍動していた。


「シャル君のえっちっ!」


「これは、その..不可抗力で....ごめんなさい!」


「もう、、わざとじゃないのはわかってるよ。いいよ許す」


「ごめん、ありがとう」


まだ手に残る柔らかい感触にありがとう。


「何がありがとうよ!!でもいいよ.....シャル君ならボソッ」


「えっ?」


「なんでもないよ、ところで元の場所に..戻った??」


「戻れたね」


(本当に戻れて良かった、でもおかげで、風魔法の感覚が掴めた気がするな)


「じゃあ、シャル君、残りの三属性の魔法も練習しよっか???」


少しニヤニヤしているリサ。


「え、休憩無しっすか?」


「練習ヤ・ル・ヨ・ネ?」


「はいぃ..」


こうして俺はスパルタリサ先生によって魔法の練習をさせられましたとさ。



◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️◻️ 


 魔法の練習後


「シャル君、お疲れ様!今日は頑張ったね!でも...四大属性の魔法、全部黒かったのはなんでだろうね?前は黒くなかったのに...」


(そうだ、見本で見してくれたリサの魔法は全部、なんというか普通の色だった。なのに俺の魔法はなぜか黒かった)


「どうしてだろうね?」


少し、ひょっとんきょうな返事をする。


「じゃあ、今日はありがとう。七年ぶりにシャル君とこうやって話して、触れ合って、魔法を一緒に練習できて、楽しかった!」


「こちらこそ魔法を教えてくれてありがとう」


「いえいえ、じゃあもう帰るね」


「うん」


こうして俺はリサが馬車に乗るところまで見送った、俺はその後、晩御飯を食べ、床についた。



寝床にて


まず今日起きたことを整理したい。


俺は確かに今日死んだはずだ。809から飛び降りたはずなんだ。それなのに俺は生きている。いや厳密に言うと俺では無い、シャル・ノイアーとして生きている。それに、俺が死ぬ瞬間に聞いた声、その声がどうにも今の俺の声、つまりシャル・ノイアーの声に似ている。何か因果があるのだろうか。そして俺の黒い魔法。考え出したらキリがない。


今日は色々なことがあった。もう休むとしよう。









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タヒにたい俺と、生きたいボク 来世は動物園の動物になりたい @nyakonyako893

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