第153話 素材採取依頼

「……お。ようやく見えてきたね」


「アイン〜着いた?」


「あぁ……屋敷が見えてきたよ」


「ようやく着いたの? ここが……?」









 1日前——




『すまない。再びお呼びだてしてしまって』



 ギルドの貴賓室に再び呼び立てられた【清流の涙】の面々——当然、カエ、フィーシアも同席し、4人が副ギルドマスターであるディランと面と向きあっていた。



『いや、依頼を引き受けたんだ。いつでも呼んでもらって構わないよ』

『そう言ってもらうと助かるよ。それで今日呼んだのはだな。依頼内容について話させてもらおうと思ってだな……』



 代表してディランと対応するのはアインだ。一応、彼がこのパーティーのリーダーであるための措置である。

 力の関係で言えばカエ、フィーシアの方が強いのだが……彼女達に関しては望んで冒険者パーティーを組んでいるわけではないので、リーダーを努めるなど決してないわけだ。消去法でアインが代表として対応しているのである。



『依頼内容は素材採取。大まかに君たちに集めてもらいたいのは四つだ。「セリスの葉」「オオキュア蝶の鱗粉」「サテラの花」……そして「ユグドラシルの木の葉」だ』

『ふむ……リア、今の材料の名前に聞き覚えはあるかい?』

『えっとね……ユグドラシルはいいとして、私が知るのはオオキュア蝶だけね。回復効果が期待できる鱗粉を出すと言われている大きな蝶のことよ』



 依頼内容は素材採取——ディランから語られた依頼素材に、アインは首を傾げるとすかさずレリアーレに話を振る。リーダーであるにも関わらず、素材の知識についてはほとんど知らないアインはパーティー随一のブレーンである彼女に話を聞くのは必然。当然、カエとフィーシアはまったくと言って良いほど異世界知識に乏しいので知る由もなかった。



『レリアーレ殿が言ったように「オオキュア蝶」についてはその通りだ。そして、「セリスの葉」だが、これは“セリスの大樹”と言う樹木の葉っぱのことだ。シールの街からそう遠くない場所に大きな木があるんだ。これは至って簡単に採取できるから問題ない。後で場所を教えよう』

『そうなのね? オオキュア蝶も大人しくって、生息域に到達すれば鱗粉も簡単に採取できるはず。そして、「ユグドラシルの木の葉」はカエちゃんが持ってたから問題はないとして……あとは……』

『レリアーレ殿? 申し訳ないが……「ユグドラシルの木の葉」なんだが……』

『……?』



 素材の詳細について、補足を入れつつ語っていたディランとレリアーレだったが……ここでレリアーレの語りに突然ディランが待ったをかけた。



『大変申し訳ないんだが……「ユグドラシルの木の葉」は2枚では足りないんだ』

『『……え?』』



 唐突なディランのカミングアウト。アインとレリアーレが思わず声をこぼす。



『せめて、5枚——欲しいところなんだ。どうだろう? 再び採取しに行くことは可能だろうか?』

『えっと……それは……。カエちゃん? その……また取ってくることは可能かな?』

『……え?』



 ディランの申し訳なさそうな声をアインは拾うと、視線をカエへと向ける。それを追うようにこの場に居る人物の視線がカエへと集中する。



『う〜〜ん? 場所は隣国だね。エル・ダルートの街から、少し離れた森の中?』


『ふむ。それだと、かなり時間がかかるか? リアどう思う?』

『シールの街に来るまで数ヶ月……取りに行くってなると相当時間がかかりそうね』



 この時のカエの発言に、アインとレリアーレは頭を抱えた。エル・ダルートの街から国境を越え、フラーダの町を経由してここシールを訪れた。この間、移動には数ヶ月の月日を費やしている。これを取りに戻るとならと往復でどれほどの時間を使うのか——それを想像すると頭の痛い話だったのだ。


 しかし……



『フィーシア。どう思う?』



 ここで、カエはフィーシアに聞く。



『私に能力を使う許可をいただけるのでしたら……1日あれば取って戻って来れると思いますよ』

『だよね〜〜』


『『『……え?』』』


『マスターが残してくれたデータもありますし、大樹の場所も把握しています』



 フィーシアは主人の質問に、あっけらかんと答えた。アイン、レリアーレ、ディランの声が同時に跳ねた。



『ユグドラシルに関しては任せてよ。フィーに取ってきてもらうし!』


『もう、なんて言っていいかわからんな……』

『本当ね。アイン。もう、カエちゃん達だからあまり驚かないわよ』



 どうやれば数ヶ月かかる旅路を、たった1日で往復できるのか? 想像はつかないが、この少女達になら可能なのだろう——根拠はないが謎の可能性だけが見え隠れしアインとレリアーレは当然のようにありえない発言を飲み込んでしまった。



『ディランさん? どうやら問題ないようです』

『そうなのか? アイン殿? 流石はあなたが見込んだ新メンバーだ。素晴らしいよ』

『……あっはは……はぁ……』



 ディランの歓喜にアインは乾いた愛想笑いを返すことしかできなかった。



『それで……最後の「サテラの花」ってのは?』

『——ッ!? あぁ……そのことなんだが……』


『『『『……?』』』』



 そして、最後に残された素材……「サテラの花」にカエが触れた。次の瞬間——ディランの顔色が変わり一同はその変化を訝しむ。



『その花の在処ありかだが……ユーレイン伯爵の屋敷に向かってもらいたいのだ』


『『『『ユーレイン伯爵の屋敷?』』』』



 皆の声が重なった。











 

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