第136話 歌って世界を股にかける吟遊詩人は英雄に飢えている
世界を股にかけるは〜〜英雄を求める〜〜歌い手〜〜♪
弦の響きは〜〜収集せし〜〜我が軌跡〜〜♪
幾千の音色を〜〜届ける〜〜ために〜〜♪
今日も〜〜我は〜〜物語を〜〜求める〜〜♪
ラララ〜〜
と——私は今日も今日とて物語に飢えている!!
いやいや、いきなり歌い出して悪かったね。
私の名前は【ハーメルン】しがない吟遊詩人さ!
え? ハーメルンは笛吹きだって?
まぁ〜〜そんな硬いことはいいじゃないか——名前なんて気にする事ないさ。
別に子供を攫ったりしないし安心するよろし!
でだでだ——しがない吟遊詩人の私だが、世界を股にかけ英雄譚を人々に届けることを生業としている。そして、世界を巡る中で各地の文化、言い伝え、噂や、活躍する冒険者の話を聞いて新たな物語を認める。
歌い、伝え、そして心踊る物語を求めてまた世界を巡る。
私は旅する吟遊詩人——こうして歌う事の素晴らしさ。物語の奥深さを銘記してもらう活動家——それが私【ハーメルン】なのさ。
だが、ここ最近——イマイチ『ギュバーン』な物語と出会えていないのだよ。
ちょっと前に、半年でA級冒険者となった【清竜の涙】——シーフと聖女のラブロマンスにちなんだ歌を書いたが、私のインスピレーションはそれ以来『ギュバーン』していない。嘆かわしい事だ。
う〜〜ん。何処かに英雄が転がっていないだろうか。僕の心を『ギュバーン』してくれる輝かしい英雄が!?
だが、負けるな私、めげるな私——なんのために世界を巡っている! それは英雄を探すためだろうが! 英雄は待ってはくれないんだ!
それいけ! 吟遊詩人!!
今日も今日とて、私は私を鼓舞して歌うためにただ突き進むのだ!
だが……
最近ムリして国を跨いでばかりいるせいか頭が回らないんだ。もしかしたら、知らず知らずのうちに身体に負担をかけていたのかもしれませんね。
いい物語を認められないのも、きっとムリが祟って……
そこでです——
私が訪れたのは観光地として有名な花の町【フラーダ】。
七色に輝く花畑に癒される休養も兼ねた旅です。
当然、休養だと言っても、この間も英雄探しは続けますよ。英雄だってね、傷ついた心、身体を癒すために花を愛でるかもしれませんし、私にとって悪くはない旅の目的地ではないでしょうか?
さてさて、水路が張り巡る街中は花の町らしい光景ですね。レンガ作りの街並みはとても温かみがありますよ。しばらく、町中を巡ってみましょうか? 何かインスピレーションが湧きそうですよ。
おっと……あれは……
「——ッもう! ヴェールちゃん遅刻だよ!!」
「ごめんアカネ。睡魔に勝てなかった。無念」
「あはは〜〜まぁまぁ、いつものことでしょう? 許してあげればアカネちゃん!」
「シーちゃん! そうやってすぐヴェールちゃんを甘やかして!」
「アカネ……シーもこう言っている。許してあげなよ。まったく!」
「えへへ〜〜あれ? これ私が悪者みたいな言い方じゃない? ヴェールちゃん?」
4人組の少女達の姿がありますね。元気にキャッキャしている姿は、心が洗われるようで、つい“ほのぼの”してしまいます。
それと、あの子達の服装は……冒険者? いや、小さな子達ですから冒険者見習いですかね。可愛らしいリトル冒険者さんだ。これは、いい物語が思いつきそうな予感です。
「ヴェールちゃんは、どうしてそんなに偉そうなのよ! ラピスちゃん。あなたも言ってあげてよ!」
「——ッ!? わ、わ、私、で、ですか!? い、いきなり振られても……こ、困ります!」
「ラピス……ラピスも私をいじめるの? シクシク」
「そ、そ、そんなこと……し、しません! ヴェールちゃん」
「そう? ……と、言うことです。シーとラピスは私の味方だ! どうだ! まいったか! アカネ!!」
「「「…………」」」
もしかすれば、彼女達も未来では英雄になっているかもしれませんからね。それと……何か『ギュバーン』な予感がヒシヒシと伝わってくるのですよ。
「君たち……ちょっといいですか?」
「「「「——ッ!?」」」」
ちょっと、彼女達とお話ししてみましょうか?
「なに? おじさん……誰?」
「ちょ、ちょ、ちょっとヴェールちゃん」
「あはは……ヴェールちゃん。怖いモノ知らずだ!」
「はわわわ……!」
あらら……緑の子が前に出たかと思えば、後の3人が引っ張っていってしまった。警戒されてしまったかな?
「いいヴェールちゃん! 知らない人と無闇に話しちゃいけないんだよ! あのおじさん怪しいでしょう!」
「そ、そ、そうです! アカネちゃんの言う通りです! ママも言ってました! 知らないおじさんに着いていっちゃダメって! 食べられちゃいます!」
「——っぷ! あはは〜〜食べられる? ラピスちゃんのママ、街中にモンスターでもいると思ってるのかな? 面白い♪ 普通のおじさんにしか見えないけど……」
「違うよシー……ラピスママは、人は所詮ケダモノってことを伝えたかったとみた。ふむ、奥が深い。おじさん恐るべし!」
警戒されているんだろうか? ただ、好き勝手言われてるだけではないよな?
「あのぉ〜君たち?」
「「「「——ッ!!??」」」」
あらら……怯える無垢な
だが、私は英雄求めて世界を股にかける【ハーメルン】! こんなことではめげませんよ!
吟遊詩人になる夢を家族に馬鹿にされ、友人に軽蔑され、それでも故郷を飛び出た私です。
これごときではめげませんよ!
ただ……もう一度いいます。子供を攫ったりしませんからね?
「な、なに……お、おじさん?!」
赤い髪の子が、仲間を守るように前に出て返答してくれましたね。この光景はいいですね。この子も立派な英雄候補ってことですかね〜すごくいい!!
ですが……アレ? これ、私が悪者ですか?
「いやいや、お嬢さん方。そんなに怯えないでください。私の名前はハーメルン。しがない吟遊詩人です」
「……ぎ、吟遊詩人?」
「あと、私はおじさんではないですよ。まだ21です。おにいさんと呼んでください」
まずは自己紹介です。
あと、この子達は勘違いしてますからね。
ここは訂正させてもらいますよ。
「どう思うみんな?」
「うぅ〜〜怪しいです」
「うん。怪しい」
「だよね。ははは……」
背を向けてコショコショ話しですか。うん。まだ怪しまれてますね。
「そう、警戒しないでください。私はただ、君たちに英雄について聞きたいだけなんです」
「「「「英雄?」」」」
「そう、私は各地の伝承とか噂とかを元に、詩を認めて歌うのです。そうやって世界を旅しています」
「「「「ふぅ〜〜ん」」」」
そもそも彼女たちに声をかけたのは、英雄についてのヒントを聞くためです。子供というのは時に侮れない着眼点で物語を想像してくれますからね。例えそれがフィクションとあっても、私は人々が楽しめる物語を歌えればそれで十分。まぁ、真実をそのまま歌ってもいいんですけどね。ほとんどは、似たような伝承などを合わせて、物語にインパクトを追求したりしています。【清竜の涙】も、その良い例です。
はてさて、この子たちはどんな物語を持っているのか? 楽しみです。
「なら、やっぱり私たちでしょう!」
おっと、赤い髪の子が胸を張って自信に語ってくれますね。
「魔剣よ燃えろ、我の一刀は焦がす一撃——炎刀の【アカネ】!」
「凍てつく魔杖、全てを氷土で包み込む——氷魔の【ラピス】!」
「風々疾走、流るるように風が切り裂く——疾風の【ヴェール】!」
「大地を操り、堅牢にして岩が守りぬく——守護者【シトロン】!」
少女達は、高々と口上を叫ぶ。
そして……
「「「「4人合わせて美少女冒険者パーティー【フラワーズ】!!!!」」」」
「おお〜〜良いですね♪ カッコいい口上と決めポーズ! 素晴らしい!!」
どうやら私は、この子達に声をかけて正解だったようです。
「小さな子の英雄に憧れるこの姿勢! ここから新たな英雄が生まれるんです。あぁ〜〜実に良いですね! 良いモノを見せてもらいました。リトルレディ」
「ふふん♪ おじさん、いい目してるじゃない! 褒めてあげる!」
「ありがとうございます。でも、おじさんじゃないですよ? おにいさんって呼んでください。赤い君」
「アカネだよ! 吟遊詩人のおにいさん!!」
「失敬……ではアカネさん。改めて、良いモノを披露してくださり、ありがとうございました」
私はフラーダに来てよかった。インスピレーションがすごく刺激される。
さてと、タイトルは、そ〜ですね〜〜『花の町に咲き誇る
「あぁ〜良い! 実に良い!! 早く歌いたくてウズウズします。が……君たちの物語はお預けですかね」
「え!? なんで、おにいさん!」
「君たちの物語はこれから……活躍するその時までは、この歌は歌うわけにはいきません。でしょう?」
「——ッ!? うん! そうだね。待ってておにいさん。いつか絶対歌わせてあげるから期待しててね!」
「はい……当然です。その時は盛大に世界に轟くことをお約束しますよ」
この子たちには、冒険者となって早く活躍してもらいたいモノです。
「君たちの物語も良いのですが……何か他に良い物語はありませんか? 別に、なんでもいいんです。気づいたことでも有名な冒険者さんでも構いませんよ」
ですが、私はまだ何も得ていません。1つでも、今すぐ歌いたい気分なんです。何か、他の——別の何か……英雄のヒントをこの子達は持ってないでしょうか? 追求してみましょう。
「ねぇ〜みんな〜?」
「う、うん。アカネちゃん」
「やはり。アレしか勝たん」
「だよね。だよね♪ ははは」
「まさか、英雄に心あたりがあるんですか?」
おや? 自分でも無理を言ってることは重々承知でしたが、少女達の反応がいい傾向ですね?
「うん! それはね。おにいさん! みんな? せ〜の……」
アカネさんは、指揮者のように仲間に合図を送ります。すると…
「「「「カエお姉様よ!!」」」」
「カエお姉様?」
と、1人の『お姉様?』なる人物が浮上しました。
ふ〜〜む…………なんだ。それは?
「やっぱり、カエお姉様しかないわよね! お姫様抱っこしてくれた時の抱擁力なんて……ッキャ〜〜! たまんない!!」
「う、うん。わ、私達を助けてくれた時なんて……あの巨剣を切り裂いた青い一刀……す、すごく綺麗でした」
「それでいて抜け目がない。お姉様の作戦立案は完璧。勝負においても、私達は手も足も出なかった」
「それにそれに! カエ姉様を支えるフィーシア姉様も素敵だよね! 全身が白くて不思議な雰囲気なんだけど……そこがミステリアスで美しいっていうのかな? そこがとても魅力的だよね〜あはは」
「「「うん! わかる〜!!」」」
「なんですか!? そのインスピレーションを刺激する超人は!! その話しを詳しく!!」
「「「「えっとね〜〜♪」」」」
おやおや〜〜話に聞いてみると、実に痛快な英雄が現れた。
もう……これは歌うしかないではありません!!
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