二つの世界を繋げる魔法
『数日前に報告した本のことだが、噛み砕いて理解することができたので報告しようと思う』
遂に来た。レオンは気にしなくていいと言ってくれたけれど、任せっきりになってしまっていたのが申し訳ない。
『勇者召喚の儀式の方法は、どうやらどの世界にも数ヶ所ある魔法の扉をこの世界とどこかの世界で同時に開き、そこから人を引き寄せて召喚する、という方法らしい』
世界に数ヶ所しかないのなら、探し出すのはとても難しいだろう。さて、どうしたものか。
『そして、その扉にはある魔法陣が描かれている。……今描いたのがその魔法陣だ。木造の豪華な扉にこの魔法陣が描かれていたら十中八九それだと思っていいだろう。ここまではいいか?』
『うん。問題はその扉がどこにあるかだけど……』
『それについては魔法の扉がある可能性が高い場所をピックアップした。まず、勇者かもしれない天花の兄が当時通っていた学校とその周辺。そして当時天花の兄がよく行っていた場所、そして二人の家周辺だ。そのどれかに無かった場合、創作範囲を拡大しよう』
なかなかの肉体労働。しかし、今までレオンに任せっきりになっていた分が返ってきたということだろう。
『なるほど、ありがとう。当時の兄の学校は今の私の高校、よく行っていた可能性のある場所は駅前一択。大体は理解できた、私頑張るよ』
『俺もこちらの世界にある魔法の扉を探す。大変だとは思うがお互いに頑張ろう』
『すぐに見つかるといいな』
『それには大きく同意するが、そう簡単には行かないだろうな』
それでも、レオンともう少しで会えるかもしれないと考えると胸が踊る。初めての友人だからだろうか。この日記帳をくれた兄には感謝をしなければならないだろうな。
そういえば、最近兄はめっきり帰ってこなくなった。問い詰められることを恐れているのだろうか。静かな夜の家にはもうとっくに慣れてしまったが、それでもやはり寂しいものは寂しいのだ。
――早く帰ってきてくれないだろうか。ふいに、そんなことを考えた。兄に伝わるはずもないのに。
そんな思考を頭から振り払い、また新たに文字を書き込む。
『多分目立つ場所にはないよね。人目が多い場所にあったらすぐ騒ぎになるだろうし』
『ああ。特にネットという監視カメラがそこかしこにある今の時代なら、そんな扉があったらすぐに話題になっているだろうしな』
先程レオンが挙げた場所にある人があまり行かない、または行こうとしない場所。とりあえずまずはそこを重点的に探すことにしよう。そう決意して日記帳から顔を上げると、先程まで窓際でだらりと眠っていた茶トラ猫が目を覚ましてこちらをじっと見つめていた。
そんなことを考えたのは昨日のこと。放課後、まず学校で考えた通りの場所を探そうとしたのだけれど。
「まあ待てよ。アンタの探し物、俺にも一枚噛ませてくれないか?」
どうしてただの教室の隣人である鋼条 閃也に絡まれているのだろうか。
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