第49話 ルイスとアリス
本日5/31『妃教育から逃げたい私』文庫版1~3巻発売です!
特典盛りだくさんなので、ぜひ活動報告でチェックしてください!
アニメ化について続報も出ましたのでそちらも活動報告に載せています。
楽しんでいただけますように。
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「そういえば、最近できたジャポーネのレストラン、フィオナ様がやってると聞いたんですが本当ですか?」
ああ、と私はルイスとやっている和食レストランを思い出した。この世界では日本に近い国のことをジャポーネと呼ぶらしいから、レストランの名前もわかりやすいように『ジャポーネ』と名付けたのよね。
「フィオナと俺の共同経営だ」
正確には私はアドバイザーという立場で、ルイスが経営責任者だ。
「そうなのですね。ということは……」
アリスが何か言いかけた。
「どうしたの?」
「えっと……いえ! また今度にします!」
少し何か言いたそうにもじもじしていたが、倒れたばかりのこちらを気遣ってか、ニコリと笑って手を振った。
「フィオナ様、無理せず元気になってくださいね」
「うん。ありがとう」
私も手を振り返すと、アリスはぺこりと頭を下げて出ていった。
――仲良くなれた!
私はアリスと楽しく会話できたことにほっとしていた。
ゲームのフィオナと違ってアリスに嫌味も言わなかったし、相手の反応もよかったんじゃないだろうか。
もしかして、これで悪役令嬢フラグ折れたのでは!?
いや、さすがにそれは楽観視しすぎか。
何はともあれ、アリスとはこれからも良好な関係を築けたらいいな。
話してみたら、思った以上にいい子だったし。
そうだ。ルイスはアリスについてどう思っただろう。
「ねえ、ルイス」
「なんだ?」
「アリスのことどう思う?」
ゲームのように、彼女に惹かれているのだろうか。ゲームでは一目惚れのようなものだったから、すでに惚れてしまったという可能性もあるけど……。
なんと返ってくるだろうか。もし……もしルイスがアリスを好ましいと思っていたら、私はどうしたらいいだろう。
私は胸を押さえながらルイスの返事を待った。
「――うさぎっぽいなと思ったな」
ルイスの返事は想定外だった。
「う、うさぎ?」
まさかの動物?
で、でもうさぎって可愛いから、よく惚れた相手に例えることもあるわよね。「可愛い俺の子うさぎ」とか言ってるヒーローの話読んだことあるもの!
「なんと言うか……反応とか、リアクションとかがうさぎっぽかった」
「そ、そう?」
言われると確かにうさぎっぽい気もしてきた。テンションとか似てるかな?
「可愛いってこと?」
「いや? 別に」
あれ? 違うの?
ゲームのルイスはアリスの容姿もとても褒めてて、気に入ってたはずなんだけど。
それがなくても、アリスは一般的に可愛いと思う。だって女の私も可愛いと思ったもの。
疑問が顔に出たのか、ルイスが私の目を見て言った。
「フィオナがいるのに他の女を可愛いと思うわけないだろ」
ルイスが私の頬に触れた。
「フィオナが一番可愛いのに」
ルイスの言葉に、顔が一気に熱を持つのがわかった。
可愛い? 私が? か、可愛い!?
「わ、私は綺麗系だもん!!」
違う! そういうことじゃない! 恥ずかしさで変なことを言ってしまった。
「そうだな。フィオナは美人だよ」
違う違う! 肯定しないで! 余計恥ずかしくなるから!
「そ、そういうのは簡単に口にしちゃいけないの!」
「なんで?」
「勘違いするから!」
「勘違いって?」
「だ、だから……」
私はゴニョゴニョと声を小さくして言った。
「ルイスが私を好きなのかな、とか……」
ルイスが私の言葉ににんまり笑う。
「勘違いしていいのに」
私の顔はきっとゆでダコのようになっている。
「もう! からかわないで! ほら、寝るからもう帰って!」
私は手でシッシッとルイスを追い出す仕草をすると、ルイスは笑いながら部屋の扉に手をかけた。
そして私を振り返る。
「おやすみ、フィオナ」
ただ挨拶されただけなのに、ルイスがまるで愛おしい人を見るようにこちらを見るから、私の心臓は跳ね上がった。
「お、おやすみ」
私の返事にルイスは満足そうに頷くと、今度こそ部屋を出ていった。
私はただベッドに座っていただけなのにヘロヘロになって、そのまま後ろにパタリと倒れた。後ろに倒れても軋まない良いベッドだ。
「なんなのもう……」
また熱が上がりそうだ。
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