知識だけはあるんだ

編端みどり

彼女とキスしたい

「……ここで、キスか……」


俺は高校2年生だ。

学校では、秀才で通っている。テストはいつも10位以内に入っているし、生徒会もしている。


本が好きで、勉強も好きで、努力して今の俺がある。知識は現代の武器だからな。知識を得るにはコツコツと努力するしかない。『魔法』のような方法はないのだ。


だから俺は、本や新聞をたくさん読む。


しかし……どれだけ知識を求めても分からない事がある。


「なんなんだよこれ。壁ドン?! 馬鹿じゃね?! リアルでやったら暴行罪か脅迫罪だぞ!」


図書室の隅でブツブツ呟いても今日は大丈夫だ。なぜなら今日は図書室は立ち入り禁止で、今は俺しかいない。


変人扱いされる恐れはない。早く、早く! あと30分でカッコいいキスを調べなくてはならないんだ!


だが、読む本は全て現実離れしたストーリーばかり。こんなの俺がやったら犯罪者だよ。クラスの女子が言ってた、ただしイケメンに限るってやつだ。


イケメンなら、なんでも許されるのか?! くっそ、どうせ俺はフツメンだよ!


いや、フツメンでもないのか?


だいたい、イケメンとかフツメンとかわけわかんねえよ! 


はー、はー、いかん。こんな事に時間を取られてる場合じゃないんだ!


大丈夫だ。俺は今、彼女が出来たのだから!


イケメンでもフツメンでもなんでもいい。俺は、世界一幸せな男なんだー!


だからその、可愛い彼女とキスをしてみたいんだよ! はぁ? 高校生でキスもした事ないのかって?!


そう思ったやつ、そこになおれ。


いいか、そもそも恋愛ってのは……!


「お待たせ! さ、さっさとやっちゃお! 帰りにクレープ食べたいなー」


きたぁ!

世界一かわいい彼女が来てしまったじゃないかぁ!


「ん? なにこれ? あー! 懐かしい! これ小学校の時読んでた!」


なんだと?!

こここ、こんな過激な内容を……小学校で……!


「そ、その。ごめん、忘れて……」


「ねぇ、開いてるページ全部キスシーンだよね? もしかして、あたしとキス、したかった?」


心臓の音がうるさい。

可愛い彼女が、どんどん近寄ってくる。


「ねぇ? 教えて、あたしとキス、したい?」


「……したい」


「早く言ってくれたらいいのに。実はね、あたしもずーっと、したかったの」

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知識だけはあるんだ 編端みどり @Midori-novel

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