第2話 品野

品野というところは窯元が多く、良い土とも相まって一時はかなり 栄えていた。今でもその頃の名残が窯町あたりに残っている。時代が変わり焼き物があまり売れなくなって 小規模な窯元は潰れていくしかなかった。斜面の土を掘り掘りかけた窯を作り上げるだけの資金もなく、窯元はどんどん潰れていった。窯町の山奥には 作りかけたまま放置されている窯跡がいっぱいあった。

品野というところは風光明媚な名古屋の奥座敷として賑わっていた面もあった。特に 岩谷堂の方には 桜も多く植えられていて春には花見が盛んに催された。秋には多くのもみじがあったので 紅葉狩りで賑わった。そして夏には清らかで冷たい水が喜ばれて川をせき止めたプールで賑わった。川魚を調理する店や宿 もだんだん増えていったが、しっかりと定着する前にブームが去ってまたどんどん潰れていった。品野というところは町の大きさに反して川魚を調理する店が多く存在していた。もとこが住んでいる家のすぐ近くにも小さな沢が流れていて道から大きく下ったところに大きな川魚料理店ができていた。正直言って 品野の奥のこんなところに、この店がいっぱいになるほどの客が来るとはな思えなかった。

一言で言うと 品野は運のない場所と言えた。風光明媚で酒屋ができるほどに水も良く観光業にも向いているように思えるのだが なかなかうまくいかない。

古からの 祟りなのだろうか、もう一歩のところが越えられない。近くを通った高速道路も隣町の瀬戸市と多治見市にはインターチェンジができたが 、品野には何もできなかった。

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