レモンケーキ
あおやま。
第1話 レモンケーキ
彼女はレモンケーキを頬張った。また一口頬張った。
この柑橘というにはあまりに甘いレモンが彼女の好物らしい。
戦前の原爆ドーム、その時はまだ広島県物産陳列館というべきだろうか、その頃期間限定で販売されたバームクーヘンとレモンケーキは大人気であったという。
濃厚なバターの香りが口を包み込んだと思えば、爽やかな甘さのレモンが軽快に走り去る。
確かにこれは美味しい。クセになりそうだ。
彼女はレモンケーキを少しちぎって紅茶につけると、嬉しそうに食べた。
「せっかくのコーティングが台無しじゃないか」
「坊やのうちは甘いケーキしかお口に合わないのよ」
彼女はニヤリとしながらそう僕に返すと、ティーカップを仰いだ。
午後11時、太陽は沈み、彼女の部屋は街の明かりに照らされる。
どこか行くには遅い時間だが、なにもしないには早い時間だ。
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