コンパに来た悪の占い師と悪役令嬢~異世界合コン3~
かたりべダンロー
第1話 プロローグ
こいつは悪党だ。インチキ占い師だ。
俺は目の前の金髪長髪の占い師を睨み付ける。
「サークさん、こいつコールドリーディングを使ってますよ」
今日知り合ったばかりのオカッパメガネが俺に耳打ちする。他の人にはその声は聞こえていない。
言葉の意味はサッパリ分からなかったが、何となく理解したつもりで、俺は占い師を指差す。
「お前、コールドリーディングを使っているだろう。このインチキ占い師め、許さねぇぞ!」
俺は勢いだけで占い師を指摘する。
なぜって?
ここは合コンの場だ。女の子の前でカッコをつけないでどうするのだ。俺はモテたいのだ。彼女が欲しいのだ。よってオカッパメガネの知識を遠慮なく使わせて貰う。
「ほぅ、コールドリーディングを知っているんですか? 思ったよりも博学ですね。それで、私に勝ったつもりなのですか?」
黒いローブを纏った占い師は余裕の笑みを浮かべている。俺は感情的になり、自分の愛剣を取り出す。
「いいんですか? 暴力行為は合コン規約違反。そんな事をしたら貴方は永久に合コンに参加出来なくなりますよ」
占い師は嘲笑いながら俺を見ている。
くっ、さすが占い師だ。俺の心を読んでやがる。悔しいが、痛い所をついてくる。合コンに参加出来なくなるのは死んでも避けたい。俺は無言になり、再び奴を睨む。
そうなのだ。
俺は武力、つまり戦いでは誰にも負けない自信がある。なぜなら、世界を滅亡寸前まで追い込んだ大魔王をたった一人で倒したのだ。
この場では武力は今回使えない。使えば合コン永久追放処分。つまり、合コンで彼女を作って、ラブラブするという俺の夢が消えてしまうのだ。
俺はチラリと同席している美女達を見る。
彼女達はこの占い師に洗脳されそうになっている。武力での解決は合コン追放になるばかりか、彼女達の洗脳を解く事が出来なくなるかもしれない。そうなれば、合コン追放の上に、美女に嫌われると言うダブルパンチを食らう事になる。
俺はもう一度占い師に視線を戻す。こいつに勝つんだ。女の子達を助けて彼女にするんだ。
今夜の合コンは占い師と心理戦だ。
呼吸を整え、俺は集中力を上げた。
* * *
一時間前……。
今夜も合コンの為に酒場"スイケン"へと俺は向かう。男四名、女四名の合コンの予定だ。
緊張感はない。最近、合コンばかりしている為にどうやら慣れて来たみたいだ。
今度こそ必ず女の子と仲良くなり、彼女を作る。俺は意気込んで店のドアを開く。
開けた瞬間、店の異変に気付く。いつもと何かが違う。店内がなぜか静か過ぎるのだ。
いつもならガヤガヤとした声がドアを開けた瞬間から聞こえて来るはずなのに、今夜は冒険者や街の人達で賑わっている光景が見られない。
店はホントに営業しているのか、俺は心配になり、この店のマスターに訊ねる。
「マスター、どうしたんだ? 全然、客がいないじゃないか? 何かあったのか?」
「あ、サークさん。来て頂いてありがとうございます。もしかして今夜も合コンですか?」
俺はコクリと頷く。
「今日はその合コンで貸し切りなんですよ」
マスターが応える。
貸し切りだと、俺は聞いてないぞ。俺は考えを整理する。
今までここへは腐るほど来たが、そんな事は初めてだ。何かいつもと違う事が起きている。特別な夜なのか。俺はまたマスターに質問する。
「どういう事なんだ? 今までそんな事なかったのに」
「今日のお客さん達は特別だからですよ」
マスターは上機嫌に応える。貸し切りの為の多額の報酬を受け取っているとみえる。俺は一体その特別なお客さんとは誰なんだと考え始める。
すると店のドアが開き、男達がぞろぞろと店内へと入って来る。
入って来たのは三人。俺は男達を注意深く観察する。こいつら恐らく今夜の合コンメンバーだ。俺はそう推測する。
先頭の男から確認していく。先頭の男は黒髪のオカッパ頭でメガネを掛けている。一見すると魔法使いの様だ。白のローブを着ている。
俺の第一印象は垢抜けていない弱そうな男だ。
次の男は金髪の長髪の男だ。こいつも魔法使いの様な格好をしている。こいつは黒のローブに首飾りを付けている。
オカッパメガネとは違い、かなりモテそうな雰囲気を持っている。ライバルとなると厄介だなと俺は警戒心を抱く。
三番目の男は、かなり派手な高価な装飾品の付いた服を着ている。貴金属も首や手足に身に付けている。
金銭をかなり持っているのは容易に想像がつくが、センスがない。こいつは大したことないなと俺は分析する。
今回の合コンの席は店の中央に位置している八人掛けのテーブル席の様だ。マスターに案内され、男メンバーは次々に席へと着く。
俺は男性側の中央の席を陣取る。真ん中の席は会話に入りやすい。今回も積極的に美女を狙って行く。
俺の右隣はオカッパメガネ、左隣は金髪長髪の奴が座る。センス無し男が一番離れた席に着く。
男達はみな無言だ。殺気が渦巻いている。こいつら、みんな本気だ。男同士で仲良くしようだなんて微塵も思っていない。
そんな雰囲気の中、俺達は女性メンバーが来るのをしばし待った……。
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