人が夢を見ると書いて儚いと読む4


職場の事を色々聞き出した渡良瀬は

サツキと別れた後、ある場所へ向かっていた


都内某所


「おーい婆さん居るかー?」


「なんだい、うるさいねー勝手に入ってきな!」


「お、居た居た、おじゃましまーす」


都内には似つかわしくない日本家屋

まさしく大豪邸な門を勝手に入って

玄関へやってきた渡良瀬は

家主であろう声を聴き室内へ入って行くのであった


「連絡くらいしてから来な!」


「どうせ婆さんいっつも居るだろ?」


「いつになったら常識を身に着けるんだろねぇ」


文句を言いつつも嬉しそうにお茶とお菓子を

テーブルへと持ってくる婆さんと呼ばれる女性


ズズズとお茶を飲み

ある程度世間話をしたのちに

渡良瀬はこう切り出す


「婆さん、富士コーポレーションって広告代理店で

知り合い居ない?」


お茶を飲みながら記憶を辿っている婆さんは

渡良瀬に出した和菓子に手を付けながら

思い出したかのように、こうつぶやいた


「土地を貸してるとこにそんな名前のとこがあったかねぇ」


「お!ってことはトップに話持ってけるな。

こりゃいくつか工程すっとばせるな」


「その会社がどうしたんだい」


「ん-まあ、いつものお仕事ってやつで」


「まだそんな遊びしてるのかい・・・

早く息子になればいいものを・・」


「婆さんからしたら息子ってか孫だろ・・

まあ今は考えてねーよ」


「まったく・・生い先短いんだから

早くするんさね」


「婆さんには長生きしてもらわなきゃダメだってば」


「まったくこの子は・・」と、はぁーっとため息付きながら


「いつ行くんだい?連絡しといてやるから

日時をいいな」


「今から行って打合せするから連絡しといて。

んじゃごちそうさん」


そう言って持ってきた紙袋を置いて玄関を出ていく渡良瀬であった

残された紙袋の中身は、着ると暖かそうな

どてらと呼ばれる防寒着と、寒くなってくるから

風邪ひくなよとメモがあった


「まったく、あの子は・・・・」と、先ほどと同じような言葉だが

先程よりも嬉しそうにそうつぶやく婆さんは

最大限の融通を聞くようにお願いしなきゃと思うのであった





ーーー


数日後

都内某所富士コーポレーションビル5F



営業部長へのあいさつの後

クライアントから仕事を取ってくる為の実行部隊である

営業1課にやってきた渡良瀬

社長と言うには若い女性自らの紹介に

社員一同も緊張気味だ


「先日の社内メールで周知されてると思うけど

我が社のさらなる業績アップの為

本日からコンサルタントとして来てもらいました渡良瀬さんです。

まずは我が社の営業の要である1課を

数日見てもらうことになっております」


「初めまして、渡良瀬です。コンサルトと聞いて緊張するでしょうが

リラックスして、いつも通りの仕事をお願いします。

色々と見たり聞いたりすると思いますが、そこから業績アップの為の

改善提案だったりをさせて頂きますので、よろしくお願いします」


社員一同の中に

今日から復帰してくれと頼まれたのは、これだったのかと

驚きを隠せないサツキが居た


挨拶を済ませた渡良瀬は社長と別れ

営業1課の仕事を見て回るのであった










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