おまけ その3 レーヴァテインの呪い

 スルトが学園に出発するよりも前。

 村の広場でスルトとメアが語り合っている間にいつのまにか日が暮れていた。


「スルト、晩御飯だって」

「あぁ、今行く」


 いつものように鍛錬を終えて家に向かう。

 しかしスルトはうっかりして広場に魔剣レーヴァテインを置きっぱなしにしてしまった。

 そしてそこにはスルトの持ち物を狙うコソドロがいた。


「ひっひっひ……いただき!」


 コソドロはレーヴァテインを拾い上げると凄まじい速度で走り出した。

 そしてコソドロはレーヴァテインを舐めるように眺める。


「あそこの辺境貴族のぼっちゃんが持ってる剣、前から狙ってたんだ。こいつは高く売れるぞ」


 森の奥にある武器屋に急いで向かうコソドロ。

 しかし運悪く、目的地へ向かう道中、森に住む非合法な人間たちに囲まれてしまう。


「ぎゃあ盗賊だぁ!!」

「有り金全部寄越しな」


 盗賊たちはコソドロを囲うと金品を要求した。


「だ、旦那……おれはなんも持ってなんか……」


 しかしその手の中には立派な剣が抱えられていた。


「なんだ、いい剣持ってんじゃねぇか。寄越せよ」

「あ、そ、それは……」

「なんだ?なんか文句あんのか?」

「ひ、い、いえ……」


 盗賊たちはコソドロからレーヴァテインを奪い取る。

 そして盗賊たちはレーヴァテインを舐めるように眺める。


「こいつは高く売れそうだな。行くぞお前ら」


 盗賊たちはその場を後にして森の隠れ家へと向かう。

 しかし運の悪いことに目的地へと向かう道中、別の森の別の住人達と遭遇してしまう。


「ぎゃあ魔物だぁ!!」

「ひ、怯むな!応戦しろ!」


 盗賊を襲撃したのはゴブリンたちだった。

 必死にゴブリンたちを応戦するも、盗賊たちは奇襲されたこともあり追い込まれてしまう。

 そしていつの間にか後ろに回り込んでいたゴブリンがレーヴァテインを拾い上げる。


「あ、てめぇ、その剣は……ぐわぁっ!?」


 瞬く間に盗賊はゴブリンたちにより倒されていく。

 そしてゴブリンたちはレーヴァテインを舐めるように眺める。


『この剣、かなりいいやつだな。こいつを使って人間たちを殺そう』


 ゴブリンたちは楽しそうにレーヴァテインを抱え上げながら住処へと帰っていく。

 しかし、今度はどこからか大きな鳥が飛んでくる。


『あぁ、鳥にとられた!』


 またしても運の悪いことに森を飛ぶ巨大な鳥にレーヴァテインを奪われてしまった。

 しばらくの間飛行していた鳥はやがてレーヴァテインを落としてしまう。

 落ちていったレーヴァテインは商人の馬車の上の荷台の上に乗っかる。


 馬車がしばらく移動したのち、揺れで荷台から落っこちてしまい道端に転がってしまう。


 そこに落とし物を拾うのが好きな散歩中の犬が近づいてくる。


「ヘッヘッ」


 その犬はレーヴァテインを口に咥え、いいものを拾ったと思いそのまま家に戻っていく。


 そして家の近くに戻ると自分の隠れ家に隠そうと、穴を掘り始める犬。


 その犬の近くを偶然通りがかった辺境貴族のスルトの父。


「ん?これはスルトが持っていた剣か。

 こんなところに落とすとは。持って行ってやろう」


 スルトの父はレーヴァテインを拾い上げると、そのまま屋敷に戻っていく。


「スルトは出かけているみたいだな。仕方ない、ここに置いておくか」


 スルトの父は家の部屋の扉にレーヴァテインを立てかけてた。


 そしてしばらくするとスルトが自分の部屋に戻ってくる。

 失くしたはずのレーヴァテインを見て歓喜する。


「我が相棒、レーヴァテイン!一体どこへ行っていたのだ!」


 スルトはそのままレーヴァテインを持ち、部屋の中に大事に飾ったのだった。


****


 時は流れ現在。

 スルトはメアとカゲヌイに自分の持つ魔剣レーヴァテインがいかに素晴らしい剣であるかを語っていた。


「––––と、いうわけで。俺の持つ魔剣は何度か失くしたことがあったが幾度となく俺の元に帰ってくるのだ。俺様が偉大なる魔王であるが故のことだろう」

「それ、本当の話か?」


 カゲヌイは半信半疑でスルトの話を聞いていた。

 一方メアはレーヴァテインを手に持つと目を細めてまじまじとレーヴァテインを観察していた。


「どうしたメアよ、そんなに我が相棒を見つめて。羨ましくなったか」

「いや、どこかに足でも生えてるのかなって」


 どうやらメアはレーヴァテインに足が生えているが故に自動的に戻ってくるのだと思い込んでいるようだった。


「いや生えてたら気持ち悪いだろ」


 カゲヌイが心底おぞましそうに突っ込みを入れる。


「それにしてもその剣、どこかで見たことあるような気がするんだよな……」


 カゲヌイは心当たりがあるようで、腕を組みながらうんうん唸りながら必死に思い出そうとしている。


「いや、確か先代の魔王様が……

 うーん?あれ、全然思い出せない……なんでだ?」

「おいおい、その年で痴呆症とは。獣人は脳筋なだけじゃなく記憶力も弱いのか?」

「そこまで言うことないだろ!というか、獣人差別かお前!」


 カゲヌイはスルトの発言に怒り始めわちゃわちゃとして、ちょっとした喧嘩を始める。

 メアはそれを気にせず別のことをしていたり、喧嘩がヒートアップしだしたらたまになだめたりしている。


 スルトが自分の計画や武勇伝を語る、メアが称賛する、カゲヌイが突っ込みを入れる。

 たまにカゲヌイとスルトが喧嘩を始める、メアがなだめる。

 これが魔王とその側近二人の日常風景である。

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