純情乙女のあやかし探し

仲町鹿乃子

第1話

 目が覚めたら、隣に見知らぬ男性が眠っていた。

 なーんてこと。

 あるわけないと、木乃香このかは思っていた。

 だが、しかし。

 現在、木乃香の目の前には、眠る男性のどアップがある。

 しかも、男性は木乃香を抱き枕のように、腕の中で囲っているのだ。


 まぁ、なんてロマンチック……。んな、ばかな!!


 木乃香は男の長い腕をぶんと振りのけ、勢いよく起き上がり、自分の目を疑った。

 男性はなんと、裸だっ! 

 真っ裸っ!

 うっ、わ~~~!!!!

 焦って自分の体を見る。

「あぁ……大丈夫だぁ」

 状況としては全然大丈夫ではないけれど、とりあえず木乃香は服を着ている。

 なんならパンツだって……、ちゃんと穿いている!

「よかった…」

 いや、よくないけど。

「あ、花奈かなちゃんは?」

 木乃香が、昨夜一緒に眠った四歳の姪を振り返ると

「~~~~~~!!!」

 姪の花奈は、案の定、狸に姿を変えていた。

 あぁ、どうしよう。

 早くここから逃げないと。

 木乃香が、眠ったままの狸の花奈を抱えたそのとき。

 ベッドがずしりと沈み、木乃香の横に振りほどいたはずの腕がずんと置かれた。

 男性と木乃香の目が合う。

 あ、青い瞳……。

「誰かと思ったら、昨夜のお客さん?」

「……ご飯屋さん?」

「そっ。で、お客さんの腕にいる狸は?」

 その声に目を覚ました、狸の花奈がとろんとした目を開けながら

「あ、レイモンド王子がいる~」

 そう嬉しそうに、男性を指差した。

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