宿命の力者
セイカりゅう
第一部 一章 開花編
プロローグ
東京都中央区にある小さな町の中に不自然なビルが一つ建っている。
敷地も大して広くはなく、
しかし、その中は沢山の人々が場所を行き交っている。
まるで、現実世界とは別世界が広がっているようだった。
そんな多くの部屋の中でも、ビルの
格闘訓練、筋トレ、そして[
そして、その中でも激しい模擬戦をしている二人がいた。
片や黒髪短髪の高身長、赤いパーカーを着た少年で、その手にはとても長い特殊警棒を握りしめている。
片や茶色に染めた髪を持ち、ワイシャツと黒ズボンを身にまとっている男が何も持たずにただ突っ立っている。
二人は睨み合っていたが、先に動き出したのは警棒を持った少年だ。
一瞬で姿を消し、相手の目の前で警棒を振り下ろすが、まるで見えない何かに受け流されるように攻撃が標的から
「……ッ!!」
攻撃を受け流された
その衝撃で空間一面に地響きが起きるが、その反動で少年の腕に激痛が走る。
驚きつつも痛みに
「
「大丈夫。まだやれる……」
少年の様子を見守りながら相手をしている茶髪の男が声をかけた。
龍助と呼ばれた少年はまだ継続する意志を示しながら立ち直り、手合わせを継続する。
能力を全く使えない自分が戦えるようになるのか本当に不安になっていく龍助。
(一人で戦えるようにならないと……!)
強い不安を抑え、そんな気持ちに駆られながら構え直し、力を体中に流すイメージをしたその時、すぐに異常事態が起こった。
彼の体から、とてつもなく大きい力が湧き出ている。
足元の地面に亀裂が入り、そのヒビが広がっていっている。
二人の手合わせを見ている者たちはそれを見るのも恐ろしく感じてしまった。
(な、なんだよこれ? ︎︎力が、制御出来ない!)
自分の意思とは関係なしに溢れ出る大きな力をまとった龍助はどうにか抑えようとするも、全く止めることが出来ない。
周りから見た龍助の様子はというと、体からおびただしい力が溢れており、目から血が流れていた。
もはや見ているのも辛いくらいだ。
(痛いし苦しい……。でも、これなら、一人でも戦える!)
この力さえあれば、たとえ一人で戦うことになっても大丈夫。
そんな思いが龍助の頭の中を徐々に侵食していく。
見えない何かに頭を支配された龍助は一瞬で姿を消し、男の背後に回る。
手にしている警棒を力一杯に振るが、先程と同じように、標的が男から地面へと逸れてしまう。
警棒が触れた地面は辺り一面抉ってしまった。
(くそっ! ︎︎どうすれば当たるんだよ! ︎︎もっと力を高めれば……!)
ずっと龍助の頭を支配しているものがとうとう彼の意思にまで侵食してきた。
ずっと相手をしていた男は、流石の異常事態にすぐ対処するために攻撃を繰り出そうとした龍助を自身の瞳に映し、両目を青く光らせた。
すると映った人物が膝から崩れ落ち、倒れてしまう。
それを確認すると男はすぐにスマホを取り出してどこかに電話をかける。
「悪いけど、一時的に能力を無しにしたよ」
声をかけてきた男に対し、龍助は充血した上に光を帯びている目で睨んでいる。
(くそ……。くそ……。力を使いこなせないと、俺は、戦えるようにならないと……。じゃないと)
まもなく途切れる意識の中、目を瞑りながら龍助は一つの思いを抱いた。
守れない、と。
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