元精霊騎士の復讐者と灰色の魔女の旅々
柊オレオン
第1章 精霊騎士が復讐者になった日
第1話 元精霊騎士の復讐者ウルと灰色の魔女シル
馬車での移動中、俺達は悪魔の王を探す旅をしていた。
「ねぇ、ウル~~~退屈だよ~~~」
吞気に俺の名前を呼ぶのは、七厄災に数えられる灰色の魔女シル。
「頭の中で数でも数えていればいいだろ」
「私は刺激が欲しいのっ!」
「刺激って例えばなんだよ」
「う~~ん、死闘?」
「今から殺し合いをしろと?ばからしいな」
「冗談だよ、怒らないで…………ね?」
「かわいくないぞ」
「ひど~~~いっ!」
いちゃもんをつけては肩をたたきじゃれあってくる。
本当に灰色の魔女なのか、疑ってしまう。
だが、彼女の隠された恐ろしい一面を見ればきっと、理解してしまうだろう。
彼女が間違いなく正真正銘、灰色の魔女だということを。
「それにしても、ウルくんの魂はいつもきれいだよね」
「急にどうした?」
「だってぇ…………私たちの旅が始まって一か月が経ったけど、全く変わってないんだもん。私が惚れ込んだ、その真っ黒な心がっ!きゃぁ!!」
「…………気持ち悪いぞ」
「ちょっと、引かないでよ。私、ウルくんに嫌われたら、…………殺しちゃそう」
冗談なのか、本当なのか俺から見て全く分からない。
ただ、シルがその気になれば誰にも知られくことなく多くの馬車が通るこの場所を消し炭にすることぐらいはできるだろう。
「嫌いになるわけないだろ。俺にはシル、お前が必要だ」
「きゃぁぁぁ!!俺にはシル、お前が必要だって言われちゃったっ!そういうところ、私は好きだよ、ウル」
微笑みを浮かべるシルの言葉に噓偽りはない。
だって、彼女はその時その瞬間を本当に楽しんでいるからだ。
そう、俺をまるで鑑賞物のように…………。
「俺の復讐が邪道だと言われようと、俺は立ち止まることはない。やり遂げるまではついてきてもらうからな」
「わかってるよ。私はウルが目的を遂げるその時まで一緒にいるよ。一緒に復讐をやり遂げようね」
俺は視線を外に向けた。
なんだか、少し顔が熱いような気がする。
「あっ、今ちょっと照れたでしょっ!」
「照れてない」
「照れたってっ!絶対、照れた!ウルもかわいいところあるな~~」
「う、うるさいっ!!」
「顔真っ赤だよ」
「…………しばらく、話しかけてくるなっ!!」
「え、ええ!!それは困るよっ!!」
「…………」
「ねぇ、私の話を聞いて、聞いてってばっ!!」
肩を大きく揺らしてくるシルだが、俺は無視した。
本当にシルは俺を怒らせるのが得意のようだ。
しかし、今にして思えばこの旅に至るまでいろいろあった。
昔の俺を見たら、きっとこんなことになるなんて思わなかっただろう。
「…………必ず、サタンを殺す。誰にも邪魔はさせない」
どうして、サタンを追っているのか、どうして灰色の魔女シルと一緒に旅をしているのか。それを説明するには、約1か月前までさかのぼる。
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