Step into yourself
第27話 Step into yourself - A
今回ターゲットのエレクティオプテラは、体長約5mの蜻蛉のような虫だ。薄い半透明の翅と関節が青白く発光している。このエーテルノイドは基本的に2匹で行動をしていて、地下に巣を作る傾向があるそうだ。
エレクティオプテラの特徴として、レーザー砲をその口から発射する点がある。つまり、空飛ぶレーザー砲だ。レーザー砲はカメラでは見えるが、肉眼では見えない以上、人が何人も焼き切られて、殺される被害が何件も報告されている。
そのレーザー砲の電力はエーテルノイドの森から遠距離で送られているそうだ。この技術については、現代科学の遠距離充電の進化バージョンらしいが、詳細についてはこの世界で用いられている超科学と呼ばれる学問体系で語られるので、よくわからない。
ノックスという名前の海沿いの小さな寂れた町で、最近封鎖したはずの潜水艦の廃工場から異音がすると話が始まりだったそうだ。エーテルノイド調査部隊が廃工場を調査したところエレクティオプテラが発見された。そして、私たちが派遣されたというのが、ここまでの流れだ。
エレクティオプテラを討伐するに回されたのは、テクストライクス第3部隊所属の4機のGHM。正直、エレクティオプテラはレーザー砲一撃で倒せる程度の装甲しか持たないエーテルノイドだ。故に、GHM4機は過剰戦力すぎるが、まだ実戦経験の浅いということで軍上層部の指示によりこのような判断となったらしい。
CELESTIAL NEXUSでは、エレクティオプテラ戦は第3話の内容で、如何に柳が煌に片思いをするかが描かれている。戦闘前は、いつものようにフィラースと柳が喧嘩をしていて、戦闘が始まると、お約束の如くフィラースが勝手に戦闘を開始した。すると、作戦開始地点で柳がエレクティオプテラと遭遇して大破し、そこを煌が助けて、何故か爆発する工場から脱出するのだ。そして、そこで柳は煌に思いを抱き始める。
今の所、第3話で直接的に私が死ぬようなことは無い。しかし、問題はそこではないのだ。私はこの作戦で廃工場崩壊前に設計図のデータを手に入れる必要がある。これが無ければ、第5話のアクアロイドとの戦闘を機に、死亡フラグまっしぐらだからだ。
何が何でも設計図を入手しようと意気込んでいたはずだったのだが。
「そこに、アクアロイドと関係するとかいう設計図があるんでしょ?」
「ええ、まあ……」
「流石、蓮ちゃんね。あの人が言ってた通りだわ」
どうしてこうなったんだ。心の中でため息をつく。
現在、通信を切った状態で、作戦開始地点のノックスの地下工場の潜水艦組み立てラインに向かっていた。工場内は組み立て用GHMの移動が多く行われていた関係で、スカウターの人型形態でも普通に通れる通路が多い。そのお陰で、エレクティオプテラ戦はあまり苦戦しない模様だ。
無機質な白い壁で囲まれた廊下をスカウターで進みつつ、すぐ後に居る女性に目を遣る。この妖艶なマリリンモンローを彷彿とさせるような金髪美女は、テクストライクスの医療班の班長であり、同時に有名なエーテルノイド研究者のアリソンだ。
アニメではミステリアスな女医で、結局、最後まで正体不明の人だった。第8話でテクストライクスの基地にアクシス・ソブリン軍が押しかけてきて、その時に爆発に巻き込まれて死んだとされている。
しかし、明確な死亡描写が無かったため、ファンの間では、生きている説が流れ、実は隣国のスパイだったとか、政府軍と反政府軍の戦いを引き起こした黒幕だとか、色々噂が流れた人だ。
作中の活躍は少ないものの、その魅力的なビジュアルとボイスと数少ない大人女性枠ということから、女子キャラ人気投票では、なんと蓮や柳を抑えて1位に君臨している。あれは組織票に違いない。
「蓮ちゃん、どうかしたかしら?」
「いえ、別に」
ずっとアリソンを見ていたら不審なので、直ぐにモニターを見つめ直す。
私個人としては、圧倒的に柳派なので、あの投票で1位になった記念の水着衣装は、柳のバージョンを見たかった。誰が悲しくて好きでもない大人女性の水着を見なくてはならないのか。でもまあ、この前に風呂で柳の素肌を見れたし、あの時の事は水に流すことにする。
それはそれとして、何故彼女が今、スカウターに乗っているかというと、周に頼まれたからだ。
時は遡ること、スカウターの仕様書を渡された後のことになる。
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