第5話 贖罪
❖ ❖ ❖ ❖
それからどれくらいの時間が過ぎたのだろうか。どうやら私は数日は眠っていた。
目が覚めた時、目の前に周が居てビックリしたのを覚えている。
私の部屋で──彼は宿題なのか、勉強をしていた。
「周? あれ、私って……」
状況が把握できないでいる。起き上がろうとしたけれど、体の各所が痛くて断念し深呼吸する。
慌てて駆け寄ってきた周は、私を覗き込み「筝羽? 目が覚めたか? 気分はどう?」と少し焦り口調で尋ねた。
なんでそんなに不安そうなんだろう、と私は考え思考は時を遡る。
そして、暗い部屋の中、組み伏せられる腕、頚に掛か圧力──。
私は恐怖で言葉が出ない。呼吸が浅く早くなるのを感じ、口をパクパクと動かす。周の顔色が一気に変化し、強張った。
「筝羽!! 大丈夫だ! 深呼吸しろっ! 大丈夫だからっ!!」
その言葉と共に、私は全身で周の体温を感じていた。
周が私を抱きしめている──!?
その事実に気付いた瞬間、私は全身から火が出るかのように発火したような感覚に襲われた。顔は真っ赤だったと思う。
周に抱きしめられるなんて幼稚園以来なのかもしれない。
もうそんなことはないと思っていた事象が自分に起こり、恐ろしかった過去は一気に吹っ飛んでしまっていた。
「あ……あの!! 周!? 私その……!?」
もうどうしていいのか分からない。
周に離れて、と言うのも意識しているのがバレてしまう感覚がして、心臓がバクバクしながら距離を置こうと足掻く。
最初ビックリしている様子だった周のカラダの力が抜けるのを感じた。
「よかった──」
その言葉は呟きだったのか、私宛だったのか分からない。それでも、周が私を心配してくれている事実はしっかりと伝わっていた。
不謹慎だと分かってる。分かっているんだけど嬉しくて──こんな事の後なのに涙が出そうになっている自分がいた。
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