21話 カガヤキノセカイ1

・ガイウスの体内


 芳醇な香りに誘われセナは歩を進める。最早、自分が何処にいるのかさえも分かっていない。ただただ魔石を喰らいたいという欲求にセナは動かされているのだ。


 だんだんと香りが強くなっていくのを感じ取り遂にはガイウスの魔石へとセナは辿り着いた。


 これがガイウスの魔石か、とても綺麗だ。


 セナの目の前には真っ金色に光り輝く菱形の魔石が浮いていた。その輝きには歴史を感じさせそれでいて神聖な雰囲気を醸し出している。


 セナは咥えていた宝剣を放し、魔石へと近づく。


 食って良いんだよな?なんかいけないことを今からするみたいで罪悪感がすごい。聖獣の魔石をを喰らうなんて罰当たりにも程がある。やっぱりやめよう。







 バクッ!

 モグモグ、カリカリ。

 うめー!聖獣の魔石うめー!

 旨すぎてIQ3になったわ。てか、今思った。俺一度聖獣殺しとるやん。


 罰当たり以上のことをしているセナだが突如体が黄金色に発光し始めた。


 うぅ、体がだるい。あぁ、虹石を食べた時と同じだ。

 

 だんだん眠くなってきた。

 

 ナビゲーターさん、あとは頼んだよ……


 セナは深い眠りについた。




 ◇◇◇◇◇



「何か毛玉のようなものを飲み込んでしまった気がするが気のせいか?」


 ガイウスは、先程のブレスでセナを倒したと思い込んでいた。しかし、口内で毛玉らしきものが舌にあたり不快感を感じている。


「まさか、あれほど小さき生物だとは思わなかったな」


 ガイウスは意外にも小動物好きであり(見守るもの)と言われるだけあって弱きを守る、聖獣の中でも聖獣らしい聖獣と言われていた。


「しかし、やつは紛れもない強者であった。それでも、俺を滅ぼせなかったが」


 ガイウスは憂鬱な気分で地面を見下ろす。


「気が狂いそうだ。オレはいつまで生きねばならない……セシリア」


 哀愁にふけるガイウスだが突如体の内側から焼けるような痛みが全身に走った。


「グァーーーー!!!」


 その瞬間ガイウスの口内から黄金に輝く球体が排出されその球体は空にかかる雲の中へと姿を消したのであった。


 ◇◇◇◇◇



 膨大な聖なるエネルギーに抱かれて自信の体がより上位の存在へと作り変わっていく。


 そして、黄金色の球体は時間が経つごとに一回り二回りも大きくなり全長約100メートルに達するとその球体にヒビが入り殻が割れた。


 ピコンッ!〈奇跡【蘇りの輝石】を取得しました〉


『主人様、進化終わりましたよ』


 むにゃむにゃ……ん?


『主人様、起きてください!』


 ……むにゃむにゃ


『あ、10円ハゲ』


 え?マジで?何処何処?!


『冗談ですよ。それよりも進化終わりましたよ』


 なんだ、冗談か。最近抜け毛が多かったからとうとう禿げちゃったのかと思ったよ。


『単なる換毛期だと思いますよ』


 そうかな?

 ん?なんか視線がやたらと高い気がする。


 セナはアクアマリンの能力で水鏡を生み出し自身を映し出す。


 こ、これは!


 水鏡に映し出されたのは金毛のホラアナライオンだった。さらに一対の金色の翼が生えている。例えるならインド神話に登場する神獣シャルベーシャのようだ。


『ご立派になられましたね。体長100メートルぐらいはあるのではないでしょうか。特に顔とかキリッとしましたよね』


 そうだな。それに、ちゃんとカーバンクルのアイデンティティである虹石が額についててよかったよ。


『そこ気にします?』


 意外に気に入ってたんだよね。ファッション的な意味で。


 あ、そうだ。


『どうかなされました?』


「あーあーあー。お?獣姿でも喋れるみたいだ」


 ふっふっふ。一度やって見たかったんだよね。


「黙れ小僧!」


 あ、あれ犬か。やっぱり動物が喋るのって良いよね。


『急にどうしたんですか?』


 お気になさらず。そんなことよりも今は、ガイウスのことだ。もしかすると……


『はい、今の主人様なら深淵スキル(深層)を会得することができるでしょう』


 よしやってみるか。


 セナはより深く魂の深淵へと手を伸ばしセナ本来の輝きを認識した。


 ピコンッ!〈深淵スキル、【カガヤキノセカイ】(深層)を取得しました〉


 その瞬間、セナから黄金色に輝く魂輝が溢れ出す。

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