19話 最終階層 永久聖竜の憩いの場3
俺はいつも考えてしまう。
死ぬ間際に、彼女にかけたあの言葉。あの言葉は本当に適切であったのかと。
あの言葉が彼女の呪いとなり苦しませているのではないかと今世でも気にしてしまう。
「惜しかったな!」
時間が止まった世界で絶体絶命の状況下でもなお気にしてしまうのだ。俺はかなりメンヘラ気質な男のようだ。
「しかし、お前はオレを屠れなかった。それが真実。どうやら、お前は奴が言っていた人物ではなかったらしい」
奴ってアドミニストレータのことだよな?よくわからないが俺でなくて悪かったな。それにしても……
「その若さで深淵スキルを使わずよくやった方だ」
お前は何故、終始泣いている?
竜が戦闘中に泣くかい?プライドの高い竜が何故泣く?
「さらばだ!挑戦者よ」
聞いてみたい。
お前は何のために生きている?
その瞬間、セナは魂の表層に触れた。
◇◇◇◇◇
これは、深淵スキルか。
フロアを埋め尽くすほどのセナの魂輝にガイウスはこれをセナの覚醒と解釈した。
「素晴らしい。停止した時の中で覚醒とはな。まだまだ楽しめそうだ」
セナの圧倒的な魂輝量に、切れかかっていた 《
そんな中、ガイウスは不適な笑みを浮かべセナを凝視する。
「ガイウス、一つ聞いて良いか?」
「何だ?」
「お前は何のために今まで生きてきた?」
「もちろん、俺を滅ぼせるほどの真なる強者に出会うため今まで生きてきた!」
しかし、セナはその答えに首を振る。
「違うな」
「何!?」
ガイウスは幾数万年生きた竜だ。経験豊富な竜が他者に答えを真っ向から否定されればどんなに温厚な竜でも憤慨する。若造に何が分かると竜として、長命種のプライドが許さない。
「お前は生きなければならないから生きてきたのだろう?生きなければならないから強くなった。そして不老不死となり聖獣となり完全無欠の存在となった。しかし、お前はいつからか生きることに絶望してしまった。故に死ぬ理由を探しているんだ」
ガイウスはこちらを睨みながら沈黙する。
「強者に殺されたのだから仕方がないと自分自身を正当化する。俺は自殺願望者と戦う趣味はないしそんな弱い竜に負ける趣味もない」
次の瞬間、ガイウスからとてつもない威圧を貰う。
「オレが……弱いと?」
しかし、セナはその威圧をもろともせず言葉を発する。
「あぁ、弱いよ。死にたくて生きてる奴は皆弱い。強い奴は皆必死に今を生きようとする!」
「良いだろう。なら、それを証明してみせろ!」
この時、二人の本当の最終決戦の火蓋が切られたのであった。
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