03話 スキル統合とエデンの香り

 獄炎の世界に転移してから約五ヶ月程が経過した。今俺がいる場所はというと第五階層の誘惑の森にある転移陣前だ。

 

 そう、俺は第二階層獄炎の世界、第三階層極氷の世界、第四階層暴風と灰雷を無事攻略に成功したのである。


『次は、第六階層煌めきの洞窟ですね。上位個体エルダーゴーレムが生息しています』


「ゴーレムかぁ、食えるかな?」


『稀に珍しい鉱石を内包している個体が存在しますので積極的に狩るのが良いでしょう』


「次はゴーレム狩りだな」


 ちなみに今の俺の姿は獣人と言われる人の姿に変わっている。容姿は3歳児ほどの子供姿で金髪紫眼。猫の姿と同様の長耳と二つの尻尾、そして額には淡いオレンジ色の宝石を付けている。それ以外は完全に人間の姿だ。

服装に関してはシェイプシフターの子供が来ていた服を拝借した。服装はベージュの半袖短パン。

 何故俺が人間……いや獣人になれたかと言えば誘惑の森に生息する魔獣シェイプシフターの魔石を食いまくっていたからだ。


 シェイプシフターは多種多様な生き物に姿を変えられるスキルを所持している。故に、もしかするとという淡い期待を胸に秘めシェイプシフター狩りをしていたらなんと【獣人化】というスキルを取得してしまったのだ!

 

 しかし、このダンジョンで生き残るには断然3歳児の体より猫型の方が適しているため休憩時にしか人にはならない。


「それじゃあ、次の階層行こっか?」


 俺は猫の姿に戻り、転移陣内に入った。

 


 ◇◇◇◇◇



 そこは正しく坑道だった。土の匂いが鼻腔を突き抜け所々に苔が生えている。そして……


 エデンの香りがする。


『エデン?』


 奥からかな?すごい良い匂いがするんだ。ぶどう?いや、みかんかな?とにかく色々なフルーツの匂いがする。とにかく早く行こう!


 俺は猛ダッシュで先を急ごうとしたがナビゲーターさんからストップをかけられた。


『少々お待ちください!まず、スキル統合を終わらせましょう。此処から先は階層の折り返し地点。今までの階層にいた魔獣よりかなり強くなっています』


 なるほど、ナビゲーターさんが言うのだから今の俺のステータスじゃ厳しそうなのか。まぁ、そろそろ整理したいと思ってたからこの機会にスキル欄をスッキリさせとくか。


 《Before》


名前: 【セナ】

種族: 【宝石獣カーバンクル

称号: 【異界の転生者】 

魔力階梯:【第一階梯】

闘力色:【黒】

深淵スキル:

ユニークスキル:【ナビゲーター】【鑑定眼】【石喰い】

スキル: 【逃げ足】【投擲】【咆哮】【爪攻撃】【硬化】【穴掘り】【怪力】【威圧】【直感】【微再生】【遊泳】【絶顎】【火種】【陽炎】【熱探知】【発火】【熱操作】【氷獄】【氷塊】【氷衝盾】【硬締雪】【氷雨】【氷床】【氷上滑走】【風刃】【風衝撃】【風盾】

【纏風】【音拾い】【静電気】【電気衝撃】【雷楔】【電纏】【雷留】【避雷針】【感電】【霧創出】【幻惑】【視線誘導】【気配感知】【蝙蝠化】【馬化】【魚人化】【天空人化】【魔人化】【獣人化】

統合スキル:

ギフト:【スキル統合】

魔法適正: 【光】

 


 俺はステータスを開きスマホをいじるように統合したいスキルをタップして選んでいく。


【爪攻撃】+【硬化】+【穴掘り】+【怪力】+【威圧】【直感】+【微再生】+【絶顎】+【熱探知】=【大獣の威厳】



 【氷獄】+【氷塊】+【氷衝盾】+【硬締雪】+【氷雨】+【氷床】+【氷上滑走】=【氷天極鎧】


 【咆哮】+【火種】+【発火】+【熱操作】=【火炎放射】


【逃げ足】+【風刃】+【風衝撃】+【風盾】+【纏風】+【音拾い】=【疾風】


 【霧創出】+【幻惑】=【幻想世界】


 【静電気】+【電気衝撃】+【落雷】+【電纏】+【雷留】+【避雷針】+【感電】=【迅雷】


 【蝙蝠化】+【馬化】+【魚人化】+【天空人化】+【魔人化】+【獣人化】=【千変万化】


 【疾風】+【迅雷】=【疾風迅雷】


 

 


 《After》


名前: 【セナ】

種族: 【宝石獣カーバンクル

称号: 【異界の転生者】 

魔力階梯:【第一階梯】

闘力色:【黒】

深淵スキル:

ユニークスキル: 【ナビゲーター】【鑑定眼】【石喰い】

スキル: 【遊泳】【陽炎】【視線誘導】【気配感知】

統合スキル: 【大獣の威厳】【氷天極鎧】【火炎放射】【幻想世界】【疾風迅雷】【千変万化】

ギフト:【スキル統合】

魔法適正:【光】


 何ということでしょう!

 あれだけ、あったスキル達がこんなにコンパクトに……


『スッキリしましたね。』


 まぁ、見やすくはなったよね。問題は統合したスキルの能力だな。

 

 俺は鑑定眼でスキルの詳細を見ていく。


 【大獣の威厳】

 発動時、自身の身体能力を大幅に上昇させ獣型の魔獣に強烈な威圧を放つ。


 おぉ!わかりやすい。身体能力っていうことは自己治癒能力も大幅に上昇しているってことなのか?


 【氷天極鎧】

 発動時、氷でできた鎧を身に纏い且つ氷の結界を使用することが可能になる。又、防御時に自動で相手の攻撃を防いでくれる氷の盾を召喚し特殊効果として氷属性の攻撃を一度無効化することができる。


 自動で防いでくれるのか。


 【火炎放射】

 炎のブレスを吐くことが可能。範囲が大きければ大きい程威力が減るが、範囲を狭めると熱光線に変わる。


 ビームだと!?等々俺は人外?獣外?になるのか。


 【幻想世界】

相手に幻覚を見せる霧を生み出す。効果範囲は使用者を中心に直径1キロメートル。


 なるほど、幻惑の効果範囲が増えたのか。


 【疾風迅雷】

 風と雷を纏い自身の敏捷性を飛躍的に底上げする能力。風、雷系統の魔法のレジスト及び吸収する。吸収した魔法は魔力へと変換される。


 敏捷性か、最高の逃げ足を手に入れたぜ!


【千変万化】

 五つ以上の変化スキルを習得した者に稀に発現するスキル。様々な種族やものに変化できる。身長や体重は自身の成長速度に合わせて変化する。


 あくまで見た目と身体的構造が変わるだけで種族自体は変わらないと。

 

 獣人の姿が一番しっくりくるんだよな。


 ふぅ、かなり強くなったんじゃない?


『はい。ですが油断は禁物ですよ!』


 それじゃあ、早速エデンに向かいますか。

 ……

 …………

 ………………

 匂いが近い!恐らくここら辺にあると思うんだけど。


 俺は今、坑道のかなり深い場所まで来ている。そして、不思議なことに道中では一度もゴーレムに遭遇していない。


 流石に、一日中飲まず食わずで走り続けていたから意識がだんだん朦朧としてきた。

 


 腹が減ったよ〜。お腹と背中の皮が引っ付きそうだ。


 この体は小さいくせに燃費が悪いんだ。取り敢えずなんか石はないか?ここって坑道のはずなのに何故石っころ一つないんだ?


 俺は石を探しながら道なりを進んでいく。すると前方には二股の分かれ道が現れた。右は薄暗く少し不気味な道だが左からは微かに光が漏れ出ている。それに左の道からはあのエデンの香りがかなり強い。


 俺は、当然左を選択し進み続けていく。匂いがだんだん強まる中少しひらけた場所に出ると、そこには何故か青白く発光している扉?のようなものが存在した。建物は存在しない、目の前にあるのは扉だけだ。


 これだ!この中にエデンがある。


『危険です。これは、何者かが発動しているユニークスキルです』


 すまん、ナビゲーターさん。俺はもう限界なんだ。何よりも俺の本能がこの扉の先にある何かを喰らえと言っているんだ。


 俺は、ナビゲーターさんの忠告を無視し扉の中へ踏み入った。

 

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