カーバンクルさん、異世界を満喫する。〜そのモフ、聖獣につき〜

カネゴンゴン

序章

プロローグ

 銀行強盗をするにあたって、ある程度人数は居た方が良い。ましてや一人で強盗を引き起こす奴はよっぽどの馬鹿か、頭のイカれたやつに違いない。


「おい!このバッグに金を詰めろ!」


 目の前にいる、拳銃を持った男は恐らく後者に分類されるだろう。


 まず瞳孔が開いており、汗を滝のように流している。

そして、かなり息遣いが荒々しい。マスクを着用しているからか、なお分かりやすい。

 

 絶対キメてから来てる人だわこれ。


 そう、俺は今銀行強盗に巻き込まれている。明日、彼女と動物園デートに行くため家の近くにある銀行でお金を下ろしていたのだが運悪く強盗に巻き込まれてしまった。


「お前ら!妙な真似をしたらぶっ放すぞ!」


 薬物乱用者が言うセリフの中で一番怖いわ!

 

 一度のミスで死ぬ。恐らく俺以外の人達も薄々感じている。こいつは異常者なのだと。

 

 俺たちが今出来ることはこの場を何も余計なことはせず耐え凌ぐ事だ。


 数時間後にはこの出来事を家族や友人達へ話、珍しい体験だったと笑い話へと変わっているだろう。

 

 しかし、現実はそう甘くはないのだ。


 静まり返った銀行内で携帯の着信音が俺の隣で鳴り響く。


 〜〜〜♪


 俺と同い年くらいに見えるその女神は慌てて着信音を消すがどうやら相手にはそうは映らなかったらしい。


「てめえ!?なに携帯をいじってやがる!」


「ひっ!」


 まずい!銃口が隣の女神に向いて....


 バンバンッ!っと、俺の背中に焼けるような痛みが走った。


「え?うそ、、」

 

 どうやら、間に合ったらしい。隣といっても少し離れていたから心配だったんだ。


「なんで誠七君が?」

 

「 奇遇だね、もしかして春香もお金を下ろしに来てたの?」

 

 本当に運が悪いな。彼女じゃなかったら絶対庇わなかった。いや、庇ってたかな?どうだろう?てかめちゃくちゃ背中が痛い。


 ちなみに床に押し倒しているこの女性は明日のデート相手の宮本春香さんだ。同じ高校に通っている同級生でもある。


「それよりも救急車呼ばなきゃ!」


 彼女はまた携帯をいじろうとするが俺はそれを止めた。


「あいつは、薬中だからあまり刺激しない方が良い。」


 俺はそのまま彼女を抱きしめる。


「これで君が傷つかなくて済む。」

 

 彼女は泣いているが、俺は「これ名案じゃね?」としか思っていなかった。


 それよりもすごく眠い。

 

 それと体がだんだん重くなって来た。


 彼女から香る柔軟剤の匂いがより一層俺を微睡みの中へ誘おうとしている。

 

 明日は必ず楽しいデートになる。

 

 なぜなら今日彼女にカッコ良いところを見せれたのだから。

 

 そう考えると明日が楽しみでならない。


 ついでに|家族みんなになんかお土産でも買って行くか。

 


 ――――ごめん、流石に無理そうだな。なら最後に一言だけ……

 

 

 その後、強盗犯は銀行から出て行き誠七は病院へ緊急搬送されたが意識を取り戻すことなくそのまま息を引き取るのだった。

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