思春期の少年少女が通称『中二病』と呼ばれる特殊な力を発症するようになった世界。小学生の北原霧子は『中二病』に発症し、「他人が過去に人を殺した人数が見える」という能力を手に入れてしまう。そしてある日偶然すれ違った少年の頭上に『6』という数字を見つけた北原は、その少年こそが巷をにぎわせている連続殺人鬼『指切り』ではないかという疑いを持つ。だが、実はこの少年もある『中二病』の力を発症しており……。
人を殺したことを感知できる少女と特殊な力を持った連続殺人鬼……これだけでも変則ミステリーとして充分面白くなりそうな設定だが、本作はこのまま探偵VS殺人鬼というシンプルな展開とはならない。彼ら以外にも、双子の『中二病』患者、『中二病』患者を隔離する政府に対抗しようとする秘密結社、その秘密結社を裏切った者など、様々な能力者の思惑が混じり合い、物語は混沌とした群像劇の様相を呈していく。
大したことのなさそうな能力が意外な使い方でとんでもない被害をもたらしたり、思わぬところで小説ならではのギミックが仕込まれていたりと、随所に驚きの種を仕込みつつも、もつれあった人間関係がラストに向かって綺麗に収束していく構成は実に見事。特殊ミステリー、そして群像劇が好きな人には自信を持って進められる一作だ。
(「覚醒する力……! 超能力特集!」4選/文=柿崎憲)