第123話 決勝に向けて
花道から通路に戻ると、控え室に続く通路の途中でツツジが待っていた。
「おめでとう。ミナミ。よくあのキックマシーンに勝てたわね」
「ありがとう。これで二人で決勝に行けるわ」
二人は両手でハイタッチ。
「それにしても、よくプロレス技で抑え込んだわね」
「私、打撃は苦手だから無理して対抗せずに自分の土俵で戦えってアドバイスをもらってたのよ」
「最後の技はどうなってるのよ?すごい威力ね。明日、あれは喰らいたくないんだけど……」
「覚悟してもらうわ」
ツツジは苦笑いした後、真顔になる。
「それにしても、なんだかミナミ、迷いがある雰囲気だったから心配したのよ?」
「ごめんね。色々あって……」
「それって、大沢さんとのことでしょ?何かあったの?」
「……もう。ツツジには隠し事はできないわね」
ミナミはツツジに、大沢とアラタが恋人関係かもしれないこと、二人で目指していた理念にも関係があるかもしれないことを説明する。
「ええ?あの大沢さんとアラタさんが?にわかには信じられないわね……」
「状況証拠は真っ黒に見えるのよね。でも、もうそのことは考えないことにしたの」
「え?」
「私は私の夢をしっかり果たす。この大会を盛り上げて、AIシステムを広げる。これがあれば、もうあんなやらせなんて起こらなくなるわ」
二人は一年半前のタッグトーナメントを思い出していた。
やらせ指示により、ツツジはミナミのフォールに屈し、それをきっかけにDIVAへ移籍することになった。
「そして、自分に自信をもって、大沢さんの気持ちを確認しに行くの」
「……そっか。じゃあ、お互いにいい試合しないとね」
「そうよ。しょぼい試合はできないわ。明日はお互い全力で。最高の試合をしましょう」
ミナミは、そっとツツジに抱きつく。
「ありがとう。ツツジ。明日の決勝があなたとの待ち望んだ対戦でよかった。そうじゃなかったら、私は今の状況に耐えられなかったと思う。ツツジとの再戦の楽しみがあるからこそ、立ち直れたわ」
「本当に苦労ばっかりね、ミナミは。大丈夫。私はいつでも、あなたの前で全力で弾き返してあげるわ。デビュー戦の時のようにね。だから張り詰めすぎないでかかってきなさい」
「私だって、成長したんだからね。見せてあげるわ」
「受けて立つわよ」
勝っても負けても盛り上げて、この大会を成功させて夢を実現する。
二人はがっちりと握手した。
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