第81話 AI

「へぇー、ここが女子プロレス団体の練習場なんだ」

「そうよ。あまりじろじろ見ないでね。橋本君が襲われても助けてあげられないからね」


 二人は練習中の選手たちにぺこりと頭を下げて、階段を上り、会議室に入る。


「早速AIを使ってみるか」


 橋本はノートPCを立ち上げる。


「横に来いよ。PC画面見えないだろ?」

「う……うん」


(私、朝練の後、シャワー浴びたわよね?)


 橋本はそんなことはお構いなしに、説明を始めた。


「まずはディープラーニングから行こうか。この絵をAIに分析してもらおう」


 サザンがデビュー戦でリングに上がっている写真を開く。


「ちょっと。なんでこんなものを使うのよ」

「ミナミの反応が面白いから」

「……相変わらず、性格悪いわね」

「まあ、見てなって」


 その写真をアップロード。

 すると瞬時に、解説が出てくる。


『覆面女子プロレスラー。悪役』


「……おお、きちんと理解してるわね。これがAI?」

「そうだ。AIに事前に大量の画像を学習させると、未知の画像が来てもその画像が何かを類推できるようになるんだ」


 難しいことはわからないけど、AI画像認識を初めて目の当たりにして驚くミナミ。


「画像だけじゃない。音声も認識できるぞ」

「おおー、すごい」

「まあな。でも、ここまでは昔からある技術だ」

「え、これで昔なの?」


 AIは奥が深い。

 まだまだ序の口らしい。


「LLMとかGPTとかって聞いたことあるだろ?所謂、生成AIってやつだ」

「聞いたことはあるけど……」

「ディープラーニングの発展版だ。たとえば……」


 橋本が『私はミナミです』と打ち込み、AIと会話を始める。


『こんにちわ。ミナミさん。何かお手伝いできますか?』

『生成AIを教えてください』

『人間のようにデータから新しい情報を生成するための技術です。文章を書いたり、質問に答えたり、画像を生成したりすることが可能です』


「え?すごい……会話してる。AIを教えてくれてる」

「そう。LLMとは事前に言語データをめちゃくちゃたくさん学習して、それをもとに新しいコンテンツを生成できる技術なんだ」


 橋本は、この後も生成AIのデモを続けた。


 小説も書ける。

 絵も描ける。


 そして、橋本は一旦PCを止める。


「何をAIにやらせたいのか。それを把握し考えて作り込むのが、俺たちAIスタートアップの役目だ。で、ミナミは何をやらせたいんだ?」


 ミナミは元気に答えた。


「プロレス試合のリアルタイムスコアリングをしてほしいの」



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