第20話 むなしいしさみしい
自分を――心を一つしか持っていない人など、誰もいないのだと気付きました。
ある人は、奥さんと仕事先と愛人の前でうまくキャラクターを使い分けるでしょうし、インターネット上で幾つもの人格を作り上げ、使い分ける人だっているでしょう。
一つの心で生きている人など、誰もいないのです。
ですが、あたしは違います。どこにいても〈あたし〉です。
いや。でした、というのが正しいのかもしれません。
この施設に入ってから、あたしになにか変化が訪れ始めている気がします。
別の自分が、生まれ始めているのではないでしょうか。
自分に問うてみたい。
あたしは、あたしでしかないのですか?
――そんなことはない。日々は確実に、お前を分断し始めているんだ。そろそろ、昨日のお前や今日のお前……つまり、黄色いものともお別れかな。
……パパ?
そんなはずありません、パパはここにはいないはずですから。
あたしは誰かにこれを奪われないよう、黄色いものを握り、「あたしの世界はまだ黄色いのだ」と確認しました。
あたしは、変化を恐れているのでしょうか?
ですが、何をどう考えようが、結局あたしが宇宙人であろうがなかろうが、精神的にはどこにも属していないことは変わりませんし、そう考えるとむなしくなります。
あたしだってむなしい。
宇宙人だろうがなんだろうが、さみしいのです。
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