近所の恋から遠距離へと

@kimcas

第1話 出会い

始まりは何気ないサークルの飲み会だった。飲み会は夏が終わり新入生同士が仲良くなってきた9月に開催されていた。4月から入ったバドミントンサークル、僕は大学生というものを実感していた。


「ではみなさんグラスを持ってー」

「かんぱーい」


始まりの音頭をとったのは幹事を務めた僕であった。きっとこの後は使い物にならなくなるからだ。お酒が強いわけではないが、飲むことは好きであった。そのため大学生になってから飲み会でついつい飲みすぎてしまうことが多かった。


サークルは結構な大所帯で今日は一年生だけの飲み会で参加者は30人くらいであった。各テーブル8人程度でゲームなどをして盛り上がっていた。


ここからの記憶は曖昧ではあるが飲み会の終盤、仲の良い女子であるさっちゃんが僕の隣に座って話しかけてきた。


「金木って確か私たちの大学の近くに住んでるんだよね?」


僕ことカネキは確かに彼女らの大学の近くに住んでいる。ていうのも僕はごく一般の大学生でこのサークルの女子は全員女子大なのである。たまたま実家が女子大の近くにあるということである。


「そうだよー」

「じゃあきっとこの子と近所じゃん!」


そこには見慣れない顔の子がいたのだ。聞くとつい最近このサークルに入ったばかりだというのだ。新入生のためのイベントを経てだいぶ仲が深まった中に新しく入ってくる子がいるのだなと、少しのけもののように感じた。


「初めまして、もえかです」

「初めましてー、今日から入ってくれたんだよね?ありがとう!」

「もえかは大学の近くに住んでるの?」

「そうなんです、新幹線の近くの新しくできたマンションに一人暮らしです」


僕はずっと実家で地元であるためすぐにそのマンションがどこにあるかがわかった。そしてうちから歩いて3分のところだ。対するもえかは仙台からこっちにきて一人暮らしをしているそうだ。


「じゃあうちからめっちゃ近いわ!」

「本当ですか?まだ全然近くに何があるかわからない、、、」

「なんか困ったらすぐ連絡して、なんでもわかるから」


といっても、僕の最寄りには何か取り柄というものはない。あるとすると愛嬌と人情だけでなんとか経営を保っている町の中華屋と味の割に高い値段を取る蕎麦屋である。


そこからは何を話したかあまり覚えていないが、地元で有名な公園の話やどこのスーパーが近くていいなどの話をしたと思う。結局もえかとずっと地元の地理話で盛り上がった。


そしてサークルの飲み会も終わりみんなそれぞれの帰路に着いたらしい。残念なことに僕は一人で歩けないくらいに酔っていた。サークルのメンバーはいつものことかと思っていたと思うがもえかはすごく心配をしてくれていたみたいでずっと隣にはもえかがいたように感じた。


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