彼女は靴を脱がずに飛び降りた。
あおいそこの
両足のシンデレラ
校舎裏の花壇に花が咲くような状態で、人間の最終形態としては必然極まりない姿で寝っ転がっているクラスメイトがいた。第一発見者ではない。正門を入る時に見える位置に数人の人が集まっていたから。どれも見慣れた顔ぶれで秘密の会合でもしているのか、と覗き見に行くことにしたのだった。
「なにしてんの…え…どうして?」
「あたし、たちが来た時からこう、で…」
「なんで先生にも警察にも言わねぇんだよ!」
「オレらだって混乱しててっ、今呼びに行くよ」
「わっ、私も一緒に行く!」
自分を含めて7人。2人が先生を呼びにこの場を離れた。そして1人が警察に電話をかけようとして男子生徒に止められた。
「なんで?」
「先生がかけた方がいいだろ…なんとなく、だけど」
「そう、そうだね…」
顔面蒼白がまさいピッタリ。そんな表情を抱えたこの場に残る4人。自分の顔色は自分では見えないからあえて抜かせた。
彼女の紹介をしよう。制服に身を包み、ローファーを履き、見上げれば彼女がいた図がはっきりと想像できるほぼ死因は明らか。彼女は靴を履いている。
「なにをしてるんだ!こんなところで。いたずらだったら済まないぞ!」
「先生!いたずらじゃないんです!」
そうだよなぁ~いつもふざけて教師に反抗ばっかりしてたグループだもんなぁ~
「けっ、警察だ!お前たちは、ここにいなさい!見たくないだろうから、あっちのベンチの方で座って待ってなさい!他の先生も呼んでくるから…」
一気に血の気の引いた顔で走ってはいけないはずの廊下に駆け出していく。
数十分後
警察がやって来た。自分たちの学年だけが取り残されてその他の生徒は家に帰らされた。部活動などの細かい友人関係はとりあえず同学年だけを見ることにしたよう。
「最近変わった言動はあったかな?」
「不安などを漏らしてたりはしていた?」
「いじめられている、とか聞いたことはある?」
「家族とはうまくいっているみたいだった?」
全部模範解答の「はい」「いいえ」
変わった言動なんてなかったし、不安を吐いたこともなかった。いじめがないのは嘘でもなく本当にない。あのクラスは仲がいい。部活でも聞いたことがない。家族とは毎月のようにプチ旅行に行くほど仲がいいし、遊びに来る友達も両親の評価がものすごく高い。
死ぬ理由なんて思いつかない。
「何もおかしい子じゃありませんでした」
その評価は正しい。きっと彼女はそれを取り繕っていた。
だって私が彼女を殺したんだもの。私が殺したのは私なんだもの。彼女の中の人は靴を履いていない。ローファーは一側しか持っていないから。
変な言動は努めてしないように。不安を吐くのは真夜中ノートにだけ。いじめだってない。友達もちゃんといた。家族のことだって大好きだ。
全部、模範解答。
私を発見した5人はいつも私と仲良くしてくれた。
7人
死んでいる自分、幽霊の自分、イツメンの5人。
【完】
あおいそこのでした。
From Sokono Aoi.
彼女は靴を脱がずに飛び降りた。 あおいそこの @aoisokono13
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★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 3話
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