第14話 お馬鹿な息子と可愛い嫁(ソフィアローズ視点)
「ただ今戻りました」
どうやらランスが戻ってきたようだ。さぞかしべべちゃんにあいたいだろうが、べべちゃんは王宮に泊まり込んでいていない。
可哀想に思う反面、面白いと思う私は意地悪な母親かしらね。
「母上、べべは?」
「いないわ」
「いない?」
「部屋にあなた宛の手紙があるから読めば」
そういうとランスは血相を変えて自室に走り込んだ。
「ソフィア、楽しそうだな」
夫のヴォルフラムも楽しそうな顔をしながらそんなことを言う。
「あら、ヴォルも楽しそうよ」
「オリヴィアを呼んでおけば良かったな。そしたらもっと面白い」
夫はクククと笑う。意地悪な父親ですこと。
私達はべべちゃんが大好きだ。生まれた時から天使のように可愛かった。隣の領地のラインバック侯爵家の次女。長女のマディちゃんも可愛かったけど、べべちゃんの可愛さはまさに神だったわ。
まずうちの長女のオリヴィアがくいついた。可愛い可愛いと連呼し、べべちゃんのそばから離れない。次女のアンジェラはラインバック侯爵家の長女のマディちゃんと仲が良かったから、べべちゃんに興味はなかったみたいだったけど、ランスは酷かったわね。突然結婚したいと言いだしたからびっくりしたの。
ちゃんとべべちゃんと言わずにあの子と言ったものだから、私も夫もすっかり勘違いし、べべちゃんではなく、マディちゃんのことだと思っちゃったのよね。
ふたりは年も近いし、まさか生まれたてのべべちゃんと結婚したいと言うなんて思わなかったの。
婚約者がべべちゃんじゃなく、マディちゃんだとわかった時のランスの荒れようは尋常じゃなかったわ。父親と大喧嘩をし、全てを投げ出し自室に引き篭もったの。
あの時はオリヴィアがうまく説得してまた、ギルベルト殿下の側近になる為の勉強も騎士になるための鍛錬も再開したのだったわね。
ランスは腹黒策士のくせにべべちゃんの前ではピュアやヘタレを通り越して危ない奴になる。
結婚してべべちゃんが我が家にくるまであそこまで酷いとは思わなかったわ。
あれじゃあべべちゃんが可哀想よ。
私達がべべちゃんに『ランスはあなたが好きすぎて拗らせいるのよ』と言ってもいいのだけれど、きっとべべちゃんは私達が気を使ってそう言っているのだと思うだろうから言わないの。
ランスは自分のことは自分でちゃんとやらないとダメよね。
話はできないくせに閨事だけはがっつくなんて最低ね。我が息子ながら情けなくて腹が立つ。だからちょっと意地悪してみたの。
今、べべちゃんはせっかく楽しい事してるのに、ランスのせいでまた動けなくなったら、王宮でテオ達と仕事ができなくなるものね。きっとランスは1ヶ月半もべべちゃんに会えなかったから、べべちゃん切れでがっつきそうだもの。
ランスには出来上がるまで我慢してもらおうと思ったの。
私の意見に夫もオリヴィアも賛成だったわ。
今頃、ランスはべべちゃんの置き手紙を見て泣いてるんじゃないかしら?
さぁ、私はアンジェラ達がお土産にくれたハーブティーを飲もうかしらね。美味しかったら姉に紹介して我が国でも販売してあげなくちゃ。あの子達も大事な娘。我が国でも胸を張って生きていけるようになる日が来るといいわね。ギルベルト殿下に頑張ってもらわないと。
それより先に、ランスが早くべべちゃんと喋れるようになるといいわね。
私も本当はふたりに仲良くイチャイチャしてほしいのよ。
ランスに危機感を与えて、べべちゃんを逃したくないならきちんと気持ちを話すようにさせよう。
頑張れランス。母はこれでもあなたを応援しているのですからね。
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