第4話 天秤の試練:前編

あ、そういやバトルコングキングからは経験値獲得していないな…


あれぐらいの奴、倒せば確実にレベルアップするはずだしな…チュートリアルだからか?


まぁ、考えても仕方ない。切り替えて依頼を消化するとしよう。


まぁ、どうせ皆も経験値貰って無いだろうし。同じか。



「おい兄ちゃん、東の森に行くのか?」


街の東側の門近くに来ると声をかけられた。


「はい、依頼で。街から出るのに何か必要ですか?」


「あんた、冒険者か!タグだけ見してもらえりゃいいぞ!」


えーと、街から出るのに料金はかかったりしないのか。



「日没には門は閉まるからな!」


これも前作と同じだ。



少し歩くと鬱蒼とした森が見えてきた。これが東の森か。


蛇を見つけるのが面倒くさそうだな。



ピコン!





ん?





ドォォォォォォォォォォォオオオオオン!!!


っ何だ!?




《回廊:天秤が開きました。周辺50m以内に該当プレイヤーを確認。強制的に転移させます》



はぁっ!?強制転移だと!?



そのアナウンスが聞こえた瞬間、俺は不思議な空間にいた。



…これがさっきのアナウンスの…『回廊:天秤』だったか?




《初めて回廊にプレイヤーが訪れました。開拓報酬としてスキル『異空視』を付与します

また、称号『ラッキースター』を入手しました》



はぁ...



称号『ラッキースター』


思わぬ幸運に恵まれた者に与えられる称号


幸運属性親和性+2%




まただよ。なんだ親和性って。



というか、異空視ってなんだ。


まぁ、分からないものは気にしない。それが俺のスタンスだ。


まぁ、称号はいつものことだし、気にしないようにしよう。



「ウボァダァァァアアア!!!」


なんか気持ちの悪い声が聞こえた。今度は何だ?



そこに居たのは、8碗で能面の顔に一つ目の怪物だった。一つの手につき、一つの天秤を持っている。てか、足ほっそ。


そういえば、天秤の回廊とか言っていたな。


でも、一つだけ言わせてくれ、いやお前その見た目でさっきの鳴き声は違くない?

そもそも、どこから声出てんの?


…まぁいい、あいつが敵なのか、味方なのかの方が重要だ。



『複数の色を持つものよ、其方は何を望み、何になることを望むか』


ただでさえ、目の前の化け物の鳴き声がキモいのに今度は合成音声というか、幾つもの声が混じり合ったノイズにしか聞こえない声が聞こえてきた。で、なんだって?何を望むか?


そりゃぁ、まぁ。


「力だろ、せっかくなら強くなりたいしな」



『其方は力を求めた。そして、強者になることを望んだ。これより、其方が天秤の力を得るに相応しいかを確かめよう』


ん?ただの質問じゃなくて、試練の選択だったのか?


その瞬間、キモい化け物がぐちゃぐちゃに溶け体から黒い靄のようなものが出ている。その靄が晴れると、そこからは筋骨隆々になっただけで、さっきと同じ姿のキモい化け物が現れた。


いや、ぐちゃぐちゃになる必要あったか?


そもそも...っ!?


現れたのと同時に踏み込んでとんでもない速度で突っ込んできた。


半ば、勘の様なものだったが咄嗟に避け、すれ違いざまに刀を相手の体に沿わす。


「アガァバダァァァァァアアァァ…」


だからなんだその声。というか、防御弱いな。あんな見た目で、こんなことあるか?


『第1の試練、突破』


「第1の試練…?」


え、まだあんのかよ。


再びぐちゃぐちゃになったキモい化け物は、変わらぬ姿で現れた。


だから、なんで一回それ挟むの?



『第1の試練、攻略報酬』


1:経験値

2:アイテム

3:次の試練


『試練を終えたいならば、1か2を選ぶと良い』


なるほど、どこまであるのかは知らんが、この試練を続けたい。というか、クリアしたいならば、3を選べと。


ふむ、まぁここは3で行こう。


また、ここに来れるとは限らないし何もかもが未知だ。ならば、試練は続けた方が確実に何か良いものが手に入るだろうしな。


「3で」


『第2の試練、開始』


そのアナウンスが聞こえると、一つ目天秤野郎が一対の腕を振り上げたかと思うと、床に打ち下ろした。


ただそれだけで、床は波のように隆起した。


「おいおい、速さの次は力か?」


と言っていると、隆起した床が様々な武器の形をとり、次々と襲いかかってくる。


「おっ…とぉ!?」


危ねぇ。レベル0でこんな攻撃食らったらHPなんか速攻で溶ける。

そう言えば、今作からは0からなんだな…


弓を取り出し、奴目掛けて弦を引き絞る。まぁ、あくまでこれは牽制だ…はぁ?


飛んでいった矢は、天秤の頭に見事に命中した。

いや当たるんかい。


「グロボォオオオグァァアアアァァァ…」


相変わらず、防御は薄いんだね…


『第2の試練、突破』


『第2の試練、攻略報酬』


こいつは、倒されて次の試練に進むたび、何らかのステータスが1つだけ高く、他は壊滅的なようだ。


その後は、器用さ、魔法力、魔法防御力、幸運の高い個体が出て、どれも一撃で倒された。というか、倒した。


こんな簡単で良いのか…?


『第7の試練、開始』


だが、一つだけ懸念がある。それは、防御力の高い試練だ。俺の持つ武器を通さない防御力の個体が出てきたらやばくないか…?





「ギャアァァアアゲボァォォオオオオォ…」



全然そんなことなかった。確かに今までのように、一撃とはいかなかったが、200発くらい当てたら、死んだ。


いや、確かに今までのやつに比べればめっちゃ大変だったが、ただの岩を殴っていたような物だからな…


『第7の試練、突破』


どうせ、3を選ぶのだから、関係はないんだが…

『第7の試練、攻略報酬』


1:蠱惑の宝玉

2:オリハルコン武具一式

3:最後の試練




おぉ…?ってうぇええええええ!!??


ちょ、え、はぁ!?


蠱惑の宝玉に、オリハルコン武具一式…だと!?


しかも。最後の試練…天秤の数と試練の数が同じだな…だが、次は何のステータスが高いんだ…?


悩む…非常に悩むが…


「最後の試練で…」


『第8の試練、開始』



相変わらずの演出をこなして出てきたのは人間と変わらない姿をした…




だった。




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