第12話ヴァンパイア
悪さをするヴァンパイアがいるからと討伐依頼を受けた
理由は私が状態異常無効を持っているからだったらしい
十人程の冒険者達と根城になっている廃城に行って
そこにいた六体のヴァンパイアを聖魔法や聖水で倒して
最後に屋敷内を探索していた時 彼女を見つけた
敵意も無く ぼろ布を身にまとい瘦せこけた姿に同情し
話を聞くと彼女は人を襲った事も無いし平穏に生きていきたいとの事
彼女はヴァンパイアの中でも力が弱く 仲間内でもつまはじきにされていた
らしい
あまりにも痛ましい姿に(私は状態異常無効を持っているから大丈夫じゃないか)
と思い私の血を飲ませてみた
すると彼女の顔に赤みがさし 幾分表情も出てきた
私の方も眷属化する事も無く体にも精神にも変化は無かった
(さて どうしたものか)
彼女を見ながら考え込んでいると
「あの お願いがあります ここから北に行った大陸の端にヴァンパイアの
街があると聞いた事があります そこに連れて行ってもらえないでしょうか?
お礼ならこの城の宝物庫にあるもの全て差し上げます」
縋るように私のコートの裾を握りながら頼んできた
「逃げようと思えば逃げられたんじゃないか?
何故逃げなかった?」
「あいつらと戦うのを見てましたが 逃げても殺されるくらいなら 貴方様のお慈悲にかけようと思いました」
哀れに思い私は手を貸すことにした
「私は トワ セルディオス 君の名前は?」
「失礼いたしました 私はセルーラです」
二人で宝物庫に向かい金貨を袋一杯と破邪の剣を貰った
外で待っていた仲間に囚われていた娘を救出したということにして
セルーラを連れて 一旦街に戻った
彼女は日中活動出来ないので 翌日は部屋を暗くして宿屋に待機させた
私は昼のうちに 旅に必要な買い出しとギルドに暫く不在にする旨を伝えた
旅をするにあたってセルーラに二つの事を約束させた
人に魅了を使わないことと私以外の人の血を吸わないこと
どうしても血を求めるなら私の血を吸えばいい
夜更けに宿屋の主人に急用が出来たといい旅立った
夜のうちにどれぐらい移動出来るか判らないので ある程度目星を付けて旅程を組む
朝になる前に森か岩場に居るのが望ましい
旅に出て数ヶ月が経った 昼は木の洞や岩場の洞窟でセルーラは小さな蝙蝠になって過ごし
私は食料を集めた セルーラは人間の食べ物でも大丈夫っだったが 月に一度くらい血を欲した
道なき道を進み ある岩山に着いた時セルーラが震えながら「誰かが助けをもとめてる」
と縋りついてきた 洞窟の中で何者かが襲われているらしい
洞窟に入ると冒険者らしきのが5人で黒龍を襲っていた どう見ても苦戦しているようには見えない
「助けを求めているのは龍の方よ」セルーラが小声で囁く
「おい この龍は何か人に迷惑をかけたのか?」
「そんな事は知らねえよ ただこいつは財宝をもってるから それを頂きに来たのさ」
なるほど 冒険者崩れの野盗もどきか 龍にも念話を送ってみる
(お前なら こんな奴ら一撃で倒せるだろう なんで我慢してるんだ?)
(こいつらは 儂の卵を持っているんだ それに昔 あるお方に言われて)むやみに人を襲うなと言われているのだ)
(そうか それは良い心掛けだな では助っ人に入ろう)
先ず卵を抱えた男を殴り倒し 卵をセルーラに預けて 後ろに下がっているように言う
龍を攻撃している残り4人を後ろから切り伏せる(どうせ 人に対しても同じ様な事をしているのだろう)
切り捨てても 良心は痛まなかった
(ありがとう 人の子よ 我ら龍は年を重ねると卵を産み その卵に自分の記憶や魔法なんかを引き継がせるのだ 儂も先代からの記憶を引き継ぎ この子も儂の記憶を引き継いでいくのだ)
卵を腹の下に置き龍が光りだす
(せめてもの礼だ 儂が消えた後に残る指輪を貰ってくれ)
龍の消えた後 莫大な魔力を放つ卵の側に指輪が落ちていた
それを拾い洞窟を後にした(我が名はブラド 昔の友人が付けてくれた名だ)卵から念話が届いた
(そうか 私はトワだ また会うことがあったらよろしくな)
未だ夜明けまでには 時間がある もう少し先まで行けば森があるはずなので二人で無言で歩き続けた
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