第10話エルフ


冬になり 日々寒さが増してくる頃 散歩をしていると見慣れない人が居た

耳の長いエルフだった 普通にここにいるという事は害意は無いんだろう

「あの お尋ねしますが こちらにクロノスさんはいらっしゃるのでしょうか?」

エルフがおどおどしながら話しかけてきた

「ああ いるよ 何の用だい?」

「ああ 良かった」エルフは安心したように息を漏らす

「申し訳ないのですが クロノスさんの所に連れて行って貰えませんでしょうか?」

「俺がクロノスだけど どんなご用でしょう?」

「これは失礼致しました 私はリリウスと申します 我らの森で黒龍が暴れて困っていて冒険者ギルドへ

討伐依頼に行った所 黒龍なんてクロノス様でないと対処出来ないと言われ この地へ参ったのでございます」

申し訳なさそうに耳を垂れて言う

「そうなんですか それはお困りでしょう」


何となく 俺はその龍を知っている気がする

「では 急いだほうが良いでしょう 少し待って頂ければ用意をしますので」

家に戻り支度をしてエルフの元に戻る

「場所は遠いのですか?」

「そうですね ここから三日ぐらいの森になります」

「場所をイメージしてもらえばテレポートで行けますので 俺に触って思い浮かべて下さい」

イメージを貰ったことで無事テレポート出来た

目の前には暴れている龍がいた 木々をなぎ倒し エルフを襲っている

「やめろ ブラド 何を暴れているんだ」俺が叫ぶと龍がこちらを睨みつけてくる

「儂の名を知るとは 誰だ?」口から煙を漂わせながら吠える

爺ちゃんから譲ってもらった指輪を見せる

「その指輪は 昔友に贈った儂の鱗から出来たものではないか 

だが お前は誰だ? 我が友ではないな」

「俺の名はクロノス トワ セルディユスの所縁の者だ」

龍は俺をジッと見つめ悲しそうに指輪を爪の先で触る

「トワはどうしたのだ?」

「もう亡くなったよ」

「そうか 人の生とは儚いものだな」龍が少し悲しそうに呟く

「ところで どうしてエルフの村を襲っていたんだ?」敵意が消えたので尋ねると

「儂の眠りを邪魔した上に宝を盗もうとしたエルフが居たので 復讐に来たのだ」

「えっ! そんな馬鹿がいたのですか? 黒龍様にはご迷惑をおかけしました それで その愚か者はどこですか?」リリウスが真っ青になって聞いている

「その愚か者ならすでに我が洞窟で始末した ただ同じ愚行をせぬように少しばかり暴れていたのだ」

「そうだったのですね」諦めた顔でリリウスが溜息をつく


少し暴れたどころじゃないな 木々はほぼなぎ倒され 家々もほとんど倒壊している

俺は 怪我人を集めて纏めて回復魔法で治癒する

「これから冬になるのに どうしたものか」

リリウスが耳を垂れさせて隣で嘆いている

「リリウス ここには何人ぐらいいるですか?」

「そうですね 大体150人ぐらいでしょうか」

150人ぐらいなら何とかなるかな そう思い

「だったら 俺が住んでいる土地に来ませんか? ただ害意を持っている者は入れませんのでそこは了承してもらいますが」

「ええ! いいんですか?」

嬉しそうに顔を上げて言う

「ええ 構いませんよ」俺が笑って言うと

「皆に相談してみます」

村人を集めて話を始めた



「なあ クロノスよ 儂はトワよりもずっと昔にお主と会った気がするんじゃが」

黒龍が顔を近づけてきて聞いてくる

「ああ 俺も爺ちゃんの指輪を抜きにしても お前とは会った気がしていた」

不思議な感じだ 嬉しい再会みたいな気持ちがある


「クロノスさん 移住する事に決まりましたが 本当にいいんでしょうか?」

「もちろん良いですよ 俺は先に帰って準備をしときますんで 皆さんで

気を付けて来て下さい」


「なあ 儂も一緒に行っていいか?」

黒龍が俺の袖を咥えて甘え声で言ってくる

「ああ 来てもいいがその巨体じゃな 皆ビックリするな」

「儂を舐めちゃいかんぞ 人型にぐらいなれるからな」

言うやポンと音がして そこにはロマンスグレーの老執事が立っていた

取り合えず俺とブラドだけ先に孤児院へとテレポートで帰った



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